帰ってきた旅猫・メイの奇跡 その2の2.開いていたファスナー | うちには、天使がいます。

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ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。

 


・登場人物
<メイ>
2001年の5月にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮している、寄り目のみけねこ。
車でやまねこと旅をする「旅猫」に育ち、
2004年には西伊豆での1週間のサバイバルから生還しました。
<やまねこ>
ライブハウスでピアノ弾き語りをする歌い手。
2009年当時、ふたたび一時的に失業中。


・前回までのお話
2009年7月。
失業してしまったやまねこは「気分転換」と称して、メイをつれて車で北海道へ。
ゆっくりゆっくり、海岸線をたどりながら、
知床のキャンプ場を目指しました。

(なお、登場人物の名前は、すべて仮名です)


7月14日、午前中に知床に入りました。。
まずは道が尽きるところまで海沿いをドライブし、
途中の海岸で寄り道したり、波打ち際の露天風呂に浸かったりしながら、
午後も遅い時間にキャンプ場に到着しました。

街の中心から国道を5kmほど山に向かって走り、
国道から50mほど入ったところにそのキャンプ場はあります。
広い駐車場と広いフリーサイトがあり、
近くには温泉もある、なかなか人気のあるキャンプ場でした。

7月も半ばですが、空気はまだ肌寒いくらいでした。
以前(10年以上も前)来たときは、20代から30代くらいの、
キャンプ場の主のようにふるまう集団がいたっけ。
中には「俺たちゃキャンプのプロだからよお」とか滑稽なことを言う人もいて、
入っていきずらい雰囲気を醸し出してたけど、
今はそういう人たちは見当たりませんでした。
キャンパーも若い人よりも年金世代の、テントや車中泊で長逗留している人が多く、
つるむでもなく、かといってよそよそしいでもなく、
ほどよい距離感を保っているように見えました。
やまねこ的には、以前来たときよりも居心地は良さそうです。

受付を済ませ、駐車場に車を停めると、
さっそく隣の車のおじさんに声をかけられました。
「へー、猫連れてるの?」
ちなみにそのおじさんは犬連れでした。
「ジャーキーあげるよ。犬用だけどね」
リードをつけたままメイをだっこして、
ジャーキーに顔を近づけると、ふんふんと匂いを嗅いで食べてくれました。
「何日か滞在する予定なので、よろしくお願いします」

夕暮れのキャンプ場に降り立って、
やまねこはまず、久しぶりにテントを張ろう、と思いました。
週末のおでかけでは、車中泊がほとんどでした。
そのほうが朝目が覚めてすぐ釣りができるし、
ひと晩テントを張ってすぐに撤収するというのは、とても億劫だったのです。
約5年ぶりの遠出で、知床には4泊くらいは滞在したいと思っていたので、
テントで手足を伸ばしてゆっくり寝たいと思ったのです。
たぶんメイもそっちのほうがいいだろう。シュラフに入ってきてくれるかもしれないし。

7月中旬のキャンプ場は、思ったより混雑していましたが、
テントを張るスペースはまだじゅうぶんありました。
ゆるやかな斜面に作られたキャンプ場は、まん中の駐車場と管理棟を挟んで、
上と下のサイトに大きく分けられ、その両方にトイレと炊事棟があります。
やまねこは上のほうのサイトに張ろうと思いました。。
トイレや炊事棟に近いところは便利だけど、だからこそテントがたくさん立っていて、
人通りも多いし、夜中にライトで照らされちゃったりすると落ち着かないしな。
しばらく滞在したいから、静かなほうがいいな。
と思い、広いサイトの真ん中あたり、斜面の中腹にぽつんと張ることにしました。
ほとんど独り占め感覚で、わくわくします。
のんびりテントを張っているうちに、夕闇が迫ってきました。
7月の北海道はとても日が長いので、もう18時を過ぎていたと思います。
テントを建て、車からシュラフなど一式を運び込み、
メイもペットキャリーに入れてテントにお迎えし、
キャリーを開くと、例によって鼻をふんふん鳴らしながら出てきました。

「晩ごはん作ってくるね。メイ、お留守番よろしくね」
メイのごはんと水を用意すると、
少し時間が押していたので、あわてぎみに外へ出ました。
今日の晩ごはんは、きのうの朝根室の漁港で釣ってきた魚を料理することになっていました。
クーラーボックスと調理道具を持って、炊事棟へと急ぎます。
なぜきのうの魚かというと、ゆうべは突然どしゃぶりの雨になってしまい、
外に出て調理するのが面倒になって、コンビニのお弁当を食べて寝てしまったからです。
鮮度の点からいっても、今日中に調理しなくちゃ。

それにしても、ちょっとたくさん釣りすぎちゃったかな。
釣れるとついつい釣れるだけ釣っちゃうんだよな。特に餌が余ってたりすると。
大きめの魚は塩焼きにして、小さいのは味噌汁に、
野菜も食べなきゃだから、たくさん入れてね。
それでも余るのは保存食用に甘露煮にして…
ところが、前回も書いたように、やまねこは手先がとても不器用なのです。
そこそこ頻繁に釣りに行くわりに、魚をおろすのもいつまでたっても上達しないのです。
野菜を切るのさえ、たぶん人並み以上に時間がかかります。毎日自炊してるのに。
なんだか、やってもやっても終わらない。
途中で真っ暗になってしまい、炊事棟にはやまねこひとりしかいなかったのですが、
管理人さんが照明をつけに来てくれました。
あー、こんなに小魚たくさん釣ってくるんじゃなかったな。
とくに旅行中は、引き際をわきまえなくちゃ。
けっきょく全部できあがるまでに、2時間近くかかってしまいました。


「さあ、晩ごはんだ!おさかな食べよう、メイ!」
ファスナーを開けてテントに入ると、ひっそりしています。
「どこかな?」
荷物の陰やシュラフの中、
メイが隠れていそうな場所を見てみましたが、どこにも姿が見えません。
西伊豆でメイが行方不明になったA氏の別荘とは、モノの量が全く違います。
メイがいない、ということはわかりすぎるくらいよくわかりました。

そういえばテントに戻ってきたとき、
ファスナーが(ものの10cmくらいではあるけれど)開いていたような気がする。
気にも留めなかったけれど、その気になれば猫が出て行けるくらいの隙間。

やまねこが出るとききっちり閉めなかった?いや、それはない。しっかり閉めた。

というととはまさか、メイが開けたのか?
自力でファスナーを開けて、それともたまたま開いてしまって、出て行ったのだろうか。

背筋を冷たいものがすうっと降りていくのを感じ、
心臓が激しく動悸を打っているのがわかりました。

やってしまった。
メイはいったいどこにいるのだろう?





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昨日2月11日祖師ヶ谷大蔵ライブカフェエクレルシでの、
「昭和歌謡ライブ(歌声喫茶風)特別編:演歌特集」
も無事終了いたしました。

ちなみにやまねこが歌ったのは、
「石狩挽歌」「世迷い言」「天城越え」「浅草キッド」「まつり」の5曲です。
明日2月13日までアーカイブ視聴もできますので、興味を持たれたかたは、
こちらのページからご覧になってみてください→https://www.ecllive.com/20220211

そして、3月26日(土)
年に一度のワンマンLIVEの詳細も着々と決まっています。

2022.3.26(Sat.)
at 御茶ノ水KAKADO→http://www.kakado.jp/
「2022うたうやまねこワンマンLIVE Walk Again and Again」
OPEN17:30/START18:00/CHARGE\2,000+1D
(OPEN/START時間は緊急事態宣言等により前倒しになる場合もございます)
配信サイト→https://twitcasting.tv/kakado__/shopcart/134720
配信CHARGEは\1,600です。

今年もたくさんのかたに楽しんでいただけるように、
しっかり準備しようと思います。お楽しみに!