このデータベースに含まれる2015〜2023年のデータから、線毛機能不全症候群(請求コード:8849145)およびカルタゲナー症候群(7486001)という登録病名を抜き出して、初めて大規模に解析した疫学研究が発表されました。
Epidemiology and clinical characteristics of primary ciliary dyskinesia in Japan: A nationwide database analysis
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2212534526000912
その結果、合計 1,764人において上記の登録病名が確認されました。2023年の段階で、有病率は人口100万人あたり10.2人という計算になりますが、これはよく世界でいわれる1万人から2万人に1人という推定と比較すると、5から10分の1程度に相当する低い値でした。
期間中、新規診断例は小児よりも成人に偏っており、全体の75%が20歳以上で診断されていました。医療関係者の認識不足や、特に小児期には他疾患と似かよった症状を示すなどの理由で、診断の遅れが生じたものと考えられます。
男女比はほぼ偏りなく、2017年以降、カルタゲナー症候群として登録されていた症例は全体の3分の1程度でした。日本ではDRC1遺伝子欠失によるPCDが多く、その場合、内臓逆位を伴わないという特徴がこの結果に反映されているのかもしれません。2017年以前は「線毛機能不全症候群」という専用病名コードが存在せず、カルタゲナー症候群のコードしかなかったため、内臓逆位を伴わない症例は、別の病名の中に埋もれていた可能性も考えられます。
東京・長崎などでは多くの症例が報告されているのですが、地域差が顕著でした。現在、PCDの遺伝学的検査は全国の医療施設で可能ですが、当時、PCDが疑われても専門診断施設や検査体制が近くにないため診断に至らなかった事例も多く、さらに国の難病支援システムがなかった時代には、根本的治療法がない以上、診断確定によるプラス面が乏しいという考えもあったように思われます。
合併症として非結核性抗酸菌(NTM)感染が8%、在宅酸素療法(LTOT)が10%に認められました。5年生存率は良好ですが、高齢者では低下傾向が見られました。若年者でも一部はLTOTを必要としていました。
このデータベースでは、PCDをどのようにして診断したか、また肺機能、画像検査、遺伝子型などの詳細な臨床情報は含まれていませんので、重症度や加齢による影響については、今後、指定難病のデータなどを用いた前向きの検討が必要です。