DNAI1遺伝子の病的バリアントによる線毛機能不全症候群(PCD)患者を対象とした、吸入型脂質ナノ粒子封入DNAI1 mRNA製剤RCT1100の安全性および粘液線毛クリアランスへの効果:非盲検・反復投与・第1b相試験
背景
線毛機能不全症候群(Primary Ciliary Dyskinesia:PCD)は、粘液線毛クリアランス(mucociliary clearance:MCC)の障害を特徴とする、進行性の肺障害を来す稀な遺伝性疾患である。
ダイニン軸糸中間鎖1(DNAI1)遺伝子の病的バリアントは、外側ダイニン腕(outer dynein arms)の欠損または異常を引き起こし、その結果、線毛運動が障害される。
RCT1100は、新規の選択的臓器指向性脂質ナノ粒子(selective organ targeting lipid nanoparticle:SORT-LNP)に封入した吸入型DNAI1 mRNA製剤であり、気道上皮細胞へDNAI1 mRNAを送達し、DNAI1タンパク質の発現を回復させることで、最終的に粘液線毛クリアランスの改善を目指している。
そこで本試験では、DNAI1病的バリアントによるPCD患者において、RCT1100の安全性および生物学的活性を評価した。
方法
RCT1100-103は、デンマーク、ドイツ、米国の3施設のPCD専門施設で実施された、非盲検・反復投与・第1b相試験である。
DNAI1遺伝子の病的バリアントを有するPCD患者に対し、RCT1100 5 mgをネブライザーにより週3回、12週間投与した。
安全性は、少なくとも一部でも投与を受けた全患者を対象として、有害事象(AE)により評価した。
MCCの変化は、肺放射性エアロゾル検査(pulmonary radio-aerosol study)を用いて、投与前、4週、12週、(任意で)16週に評価した。
さらに探索的評価項目として、DNAI1免疫蛍光染色(IF)、高速度ビデオ顕微鏡(HSVM)による線毛運動、1秒量(FEV1)の変化も評価した。
結果
2024年10月10日から2025年6月30日の間に、14例(男性10例[71.4%]、女性4例[28.6%])が登録された。
年齢中央値は35歳(19〜51歳)、予測FEV1%中央値は71%(54〜113%)であった。
14例中13例が試験を完了した。14例全員で少なくとも1回のMCC評価が行われたが、1例は4週時点のMCC評価後に脱落した。12週時点では、3例(21.4%)で、ベースラインから5%以上の絶対的MCC改善、8例(57.1%)で、2%以上の絶対的MCC改善が認められた。ベースラインからの平均(標準偏差:SD)MCC変化は、4週:2.1%(SD 4.28)、12週:1.8%(SD 4.99)、16週:−1.4%(SD 3.06)であった。
14例全員(100%)で軽度または中等度の有害事象が認められた。重篤な有害事象は認められず、Grade 3以上の治療関連有害事象も認められなかった。
さらに、気管支ブラシ検体において、DNAI1免疫蛍光染色および線毛運動にプラスの変化がもたらされた。
一方、FEV1は12週時点で変化しなかった。
結論
DNAI1病的バリアントを有するPCD患者において、RCT1100は、一部の患者で全肺MCCの改善、ならびに気管支上皮細胞におけるDNAI1免疫蛍光発現および線毛運動にプラスの変化をもたらし、生物学的活性を示唆する予備的な証拠を示した。
これらの結果は、mRNA治療薬がヒト気道に送達され、翻訳された可能性を示唆する最初の臨床的所見と考えられる。
=========
これは以前よりNCT06633757に登録されている、第一相試験の結果に相当するものと思われます。
平均的な粘液線毛クリアランス(MCC)の改善率はわずかと思われますが、安全性をみる第一相試験ですので、第二相試験以降の成り行きが注目されます。