線毛機能不全症候群(PCD)では、多くの場合、年齢を重ねるにつれて、次第に緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa, PA)が検出されるようになり、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae, HI)が検出されにくくなることが知られています(II. International ERN-LUNG PCD Meeting in 2025)。

 


1. 気道構造の変化と損傷
PCDでは年齢とともに気道のリモデリング(構造変化)が進行します。
このような損傷した気道は、粘液がたまりやすく、慢性的な炎症が起こりやすい環境となります。PAはこのような損傷した気道や粘液の多い環境で生き残りやすく、バイオフィルム(剥がれにくい細菌のかたまり)を形成して定着しやすい特徴があります。
2. 微生物間の競争と適応
幼少期にはHIがよく検出されますが、年齢とともに気道環境が変化し、慢性的な炎症や低酸素状態、粘液の増加などが起こると、PAの方が生存・定着しやすくなります。PAはこのような過酷な環境に適応する能力が高く、他の菌(HIなど)を押しのけて優勢になります。
3. 免疫応答と慢性感染
繰り返す感染や炎症により、線毛運動や免疫機能がさらに低下し、一度定着したPAを排除しにくくなります。PAは遺伝的に変化しながらずっと気道にとどまることができ、慢性感染を引き起こします。
4. 抗菌薬の影響
繰り返し抗菌薬治療を受けることで、HIのような感受性の高い菌は減少しやすく、抗菌薬耐性を持つPAが生き残りやすくなります。
5. 臨床的な観察
多くの研究でPAの検出率は年齢とともに上昇し、HIは小児期に多く、成人では少なくなることが報告されています。特に30歳以降、気道損傷が進行した患者でPAの慢性定着が増加します。
まとめ
PCD患者が年齢を重ねると、気道損傷や環境変化、抗菌薬の影響などにより、緑膿菌が優勢となり、インフルエンザ菌は検出されにくくなります。
これは、気道の状態や微生物の適応力、治療歴などが複合的に影響しているためと考えられています。その意味からも将来的な治療戦略として、早期の遺伝子診断と新たな治療薬による早期介入により、このような変化をできるだけ起こさせずに気道を良い状態に保つ医療が求められるように思います。