線毛(繊毛)機能不全症候群
原発性線毛(繊毛)機能不全症
原発性線毛(繊毛)機能不全症候群
原発性線毛(繊毛)運動不全症
運動性繊毛(線毛)病
カルタゲナー(Kartagener)症候群
線毛(繊毛)不動症候群
primary ciliary dyskinesia (PCD)
motile ciliopathies
Kartagener's syndrome
immotile cilia syndrome
おそらく医師は、このうちのどれかの用語を使っておられるかと思います。どれも基本的には、同じものを表していることが多いですが、微妙に違います。
海外では基本的にprimary ciliary dyskinesia (PCD)がメジャーな用語です。この英語のことばに最も近い日本語は「原発性繊毛運動不全症」ではないかと思います。
「原発性 (primary)」という用語は、繊毛の働きが悪いのは生まれつきの問題であることを表しています。実際、さまざまな要因や併存症によって繊毛の動きは悪くなりますので、それらと区別したい場合に使います。
「線毛」か「繊毛」かは、医学界と生物学界での使い分けです。医学界ではわかりやすい言葉を心がけていますが、生物学界では厳密さを重んじています。生物学の領域で、線毛(pili)と繊毛(cilia)はちがうものを表しています。
「不全」という部分は大事で、満足に働かないことを意味しますので、このことばがあることで、何か繊毛の働きがおかしくて病気であることがわかります。
「症候群」は、複数の症状や所見が見られる場合、その組み合わせに注目していることを示していますが、「症」は、そのもとにある病気の成り立ちが、ある程度、わかっている場合に使われることが多い言葉です。
指定難病では小児慢性特定疾病(小慢)で使われている用語に合わせて「線毛機能不全症候群」が採用されています。
「カルタゲナー症候群」は、今ではPCDのうち内臓逆位が見られる場合に使われることが多いようですが、基本は、副鼻腔炎、気管支拡張、内臓逆位の3つの徴候が現れる病気について、100年近く前から使われてきた言葉です。そのことを精力的に報告してきたManes Kartagener先生の名前に因んでいます(その当時は原因がわかりませんでしたが・・・)。
線毛不動症候群の「不動」というのは今ではほとんど見かけない用語です。繊毛が動かないだけではなく、動いていてもその動き自体がおかしいときには同じ病気になることから、この言葉はあまり使われなくなりました。
「運動性繊毛病」は、繊毛の動きが悪い場合だけでなく、繊毛の数が少なくても同じような病気になることから、さらに広い意味でPCDを捉えたい時に使われることがあります。
繊毛には、もともと動く繊毛(鼻や気管支などの細胞に限られる運動性繊毛)と動かない繊毛(多くの細胞が一本ずつ持っている非運動性繊毛)があって、動かない繊毛の方に異常があるとPCDとは別のさまざまな病気になり、それらを総称して繊毛病(ciliopathies)といいます。
また、動く繊毛と動かない繊毛に共通の部分がうまく働かない場合、PCDとそれ以外の病気が同時に起こることがありますので、だんだん境目がはっきりしなくなり、さらに話が複雑になっています。
まだまだわからないことが多いので、指定難病の登録を通じて研究が進み、少しでもその結果が皆様に還元されるように、ここでもなるべくそういった研究成果を紹介できるようにと、思います。