内臓逆位は線毛機能不全症候群に伴って見られる場合があるため、さらに慢性副鼻腔炎、気管支拡張症が見られるとカルタゲナーの三徴候を認めるカルタゲナー症候群と呼ばれてきました。
最近、50以上見つけられている線毛機能不全症候群の原因遺伝子の種類によっては、異常がみられると内臓逆位が約半数に生じる遺伝子群と、内臓逆位が全く生じない遺伝子群があることがわかってきました(2024-10-02)。
一方で、国際的に広く受け入れられているわけではないのですが、特に一部のアジア系の臨床医は、カルタゲナー症候群を「完全型(内臓逆位を伴う)」と「不完全型(内臓逆位を伴わない)」に分類する方法を用いているようです。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11981371/
遺伝学的なアプローチや特殊検査が容易に実施できないリソースの限られた国では、特にその傾向が強いように思われます。
それに対して欧米の研究者は、線毛機能不全症候群の原因遺伝子や病態が明らかになるにつれ、カルタゲナー症候群という用語自体を避ける傾向があるようです。その理由は、生まれつき運動繊毛の機能が十分でないという共通の原因によって生じるさまざまな症状の中の3つの特徴だけを切り取るのでは病気の本質を表していないと考えるからではないかと思われます。
実際、私たちが数年前に欧米の雑誌に線毛機能不全症候群の論文を投稿した時、一人の査読者から、
「論文の背景に関する記述の中でカルタゲナーの三徴候を原発性線毛運動不全症(PCD)の古典的なタイプとして説明している文は削除を検討してもよいでしょう。この用語はやや時代遅れであり、現在ではPCDの表現型の広がりを十分に表していません。」
というようなコメントがありました。
そのような背景のもと、カルタゲナー症候群のことを正面から論じている欧米の論文は、10数年前からほとんどなくなってしまいました。その結果、非専門家がカルタゲナー症候群に関する症例報告をしようとしてまとまった引用文献を探すと、原因遺伝子としてDNAI1とDNAH5のふたつが見つかった2000年代の状況に基づいた論文しか見つからず、いろいろ時代に取り残された記載になってしまうという不都合が生じています。