内臓逆位は線毛機能不全症候群に伴って見られる場合があるため、さらに副鼻腔炎、気管支拡張症が見られるとカルタゲナー症候群と呼ばれてきました。


最近、50以上見つけられている原因遺伝子の種類によっては、異常がみられると内臓逆位が約半数に生じる遺伝子群と、内臓逆位が全く生じない遺伝子群があることがわかってきました。


身体の左右を決めるためには胎生期に現れる特殊な繊毛が回転運動により左向きの水流を起こすことが必須です。その特殊な繊毛の動きを抑えてしまう遺伝子の異常がある場合、左右の決定は偶然に支配され、約半数で内臓逆位を生じることになります。そのような繊毛遺伝子の異常があると、気道の繊毛の働きも抑えてしまい、生まれてから呼吸器系の症状が出てきますと、線毛機能不全症候群と診断されることになります。


一方、胎生期の特殊な繊毛の回転運動は妨げないが、気道に見られる繊毛の波打ち運動を調節するのに必須の遺伝子が最近いくつも知られるようになってきました。そこに異常がある場合、線毛機能不全症候群にはなりますが、内臓逆位は生じません。


まとめますと、
・内臓逆位ありで、線毛機能不全症候群を疑われた場合(=カルタゲナー症候群)には、前者の遺伝子群(DNAH5, DNAH11, CCDC39, CCDC40など)の異常が疑われます。


・内臓逆位なしで、線毛機能不全症候群を疑われた場合は、前者の遺伝子群の異常が原因であるけれど内臓逆位を生じなかった場合と、後者の遺伝子群でもともと内臓逆位を生じない場合(日本ではDRC1の異常によることが多い)の両方の可能性が疑われます。