男の子が個室に入ると、からかわれる。だから我慢する。そんな事例が各地であることを、地方議会の議事録をもとにいくつか紹介してきた。

 ところで、この「からかい」をあえて、タイトルで「いじめ」と表現したのは、理由がある。

 排泄行為を覗くなんて、いじめそのもの、犯罪行為ですらあるのではないか、と思ったことが一つ。

 

 もう一つが、村上八千世さんがウェブで連載していた「便育コラム」を読んだこと。

 

 村上さんは絵本作家で排泄に関する著作があり、子供たちの排泄についての調査、研究もされている。

 非常に丁寧で、かつ温かい筆致で、素敵な文章を書く方だ。

 

 なかでも、この第20回「うんこといじめ」が、印象に残った(※村上さんのコラムは、現時点でまだウェブで公開されている。一読をお勧めする)。

 なぜ、ウンコがいじめの原因になるのか、その背景を解説している。

 要点をいくつか抜き出してみる。

 

 ・「からかい」や「冷やかし」は攻撃行動の一形態であるとされる。からかい合うことによって仲間同士の親密性を強化したり、相手を見下して地位操作を試みたり、相手が嫌がるのを見て楽しむというような多様な機能がある。

 ・「くさい!」「汚い!」という言葉は相手をおとしめるときによく使われ、言われた側は大きなダメージを受けることになる。

 ・排泄ネタを使うことは子どもにとって笑いを引き出すには手っ取り早い手段でもある。

 ・からかう側とからかわれる側の互いの関係性によって、「からかい」が楽しいやりとりで終わることもあれば、いじめに発展して相手に致命的なダメージを与えてしまうこともある。

 

 いじめられた(からかわれた)当事者の私も、ああそうだったのか、と気付かされた。

 当事者だと、恥ずかしい、もやもやする、こんな嫌なことは忘れたい、と考えるからか、なぜ自分がこんな目に遭ったのかを考える余裕がない。

 あれは、地位操作だったのだ。

 勉強のできる優等生を、女の子に人気の男の子を、引きずり下ろすための。

 そのための手っ取り早いツールが、臭い「ウンコ」なのだ。

 一方で「ウンコ」には、笑いの要素もある。「ウンコ」という、品のないワード、ツールを使うのは子供だけ。だから大人からみたら「くだらないからかい」にしかみえない。

 だから「ウンコ」は、地位操作の、そして場合によってはそれに伴ういじめの隠れ蓑になっているともいえる。

 

 村上さんは、優しい。

 このコラムでは、この「からかい」「冷やかし」の影響として最悪の事態を、おそらくあえて書いていない。

 学校で漏らしてしまうこと。これが一番、いじめにつながるし、不登校の原因にもなる。

 当事者がそのことを思い出してしまう、あるいは、漏らした子の名前を思い出してしまう。もう一度、傷つかせてしまうことを避けられたのではないか、と想像している。