小学校の男子トイレの小便器を撤去し、すべて個室にした例が、朝日新聞に取り上げられた(2022年2月8日)。

 

 

 個室化を進めているのは、神奈川県大和市。ただし、全校のすべてのトイレを個室化したわけではなく、市内の小中学校のうち、各校1か所だけ、個室のみの男子トイレを設けたのだ、という。

 この場合だと、「1か所しかない個室のみのトイレに行くこと=ウンコをする(可能性が高い)」とわかってしまうので、効果は限定的だ。本来なら、すべての男子トイレを全個室化しないと意味がない。

 

 しかし、大事なのは、「長年の男子の苦しみを認め、対策に着手したこと」だと思う。

 

 男の子は、個室に入るとからかわれる。

 すべて個室にすれば、からかい、いじめはなくなるかもしれない。

 では、実際にやってみようーー。

 

 トイレの改築だけでも多額の費用がかかる。財政が楽な自治体など、ほとんどない。そのなかであえて、個室化に踏み切った。その勇気を讃えたい。

 大和市でも、反対の声はあったようで、その代表例が「そもそも個室に入るのをバカにするのがおかしい。排泄は大事だと教育するほうが先決だ」といったもの。正論であり、そう思っている人は多いはず。それでもこの妙な風習はなくならない。その間に、苦しむ男子がたくさん生まれてしまう。理想論よりも、今も悩む男子たちを救うために、構造的・物理的に対処する。なかなか、できないことだ。

 

 そして、この「改革」のきっかけは、市議会での一般質問だったという。

 

【2016年3月、市議会の定例会で学校のトイレが一般質問で取り上げられた。議事録によると、市議の一人が「男子は学校で大便をすると『うんこマン』などとからかわれる。このため我慢するが、我慢しきれず漏らすこともある」と訴えた。そのうえで、大便なのか、小用なのか分からなくしていじめを防ぐため、男子トイレの完全個室化を要望した。】

 

 地方議会は、高齢化、人手不足など、様々な課題がある。投票率も低下傾向で、その意義を問われている。

 が、こうして一人の議員が、市民(未成年の男子だって市民なのだ)の苦境を救うべく立ち上がり、提言し、(この時点では一部ではあるが)実現した。地方議会の可能性を示す好例ともいえる。

 声を上げれば、願いはかなう。すぐにでも、完全にでもないけれど、前には進む。そんな希望を抱かせる。

 

 では、実際にどんな一般質問だったのか。

 大和市議会の検索システムを使って調べて見ると、なかなか具体的で、踏み込んだ話をしている。

 次回で紹介する。