昨日は大きなニュースが飛び込んできて、当会にも報道機関からの取材申し込みがありました。(締切の都合で、記事にはなりませんでした)
救う会ニュースと調査会ニュースから、それぞれ声明と見解を紹介します。
■拉致被害者の再調査合意に関する家族会・救う会声明
本日、北朝鮮が拉致被害者等について全面的な調査を行うことで日朝両国が合意したと発表された。膠着状態から動きが出てきたという点で関係者の努力を評価したい。
しかし、調査の開始時点で一部制裁を解除するという取引は厳密な意味での行動対行動原則に反するので無条件で歓迎するわけにはいかない。また、北朝鮮はこれまで3回調査を実施し、1回調査を約束したが、そのどの際にもウソをついてきた。その意味で今回、北朝鮮が(1)認定の有無にかかわらず全被害者を帰還させ、(2)拉致に関する真相を明らかにし、(3)実行犯を引き渡すという日本側の要求にどこまで誠実に答えるのかは慎重に見守る必要がある。
安倍政権は何らかの勝算があってこの合意を受け入れたのだろう。私たちは彼の地で救出を待っているすべての被害者とともに今後の推移をしっかりと見つめていきたい。政府関係者の一層の努力を期待する。
平成26年5月 29日
北朝鮮による拉致被害者家族連絡会代表 飯塚繁雄
北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長 西岡 力
◆同合意に関する特定失踪者問題調査会の見解
「包括的全面調査」の発表について
本日日本政府はストックホルムで行われた日朝協議の結果、北朝鮮が「包括的全面調査」に応じたと発表した。北朝鮮側の「特別調査委員会」の設置にともない日本側は制裁の解除を行うことも発表されている。北朝鮮も朝鮮中央通信が本日、先の日朝局長級協議で日本人拉致問題について「従来の立場はあるが、全面的な調査を進め最終的に日本人に関する全ての問題を解決する」と表明したと報じた。
1、全ては結果による
北朝鮮は第一次小泉訪朝までは拉致をでっち上げと言い続け、拉致を認めても生存している拉致被害者を死亡として、それ以外の拉致被害者は存在しないと言い続けて来た。これまで北朝鮮の発表はその全てが虚偽であり、もちろん今回の「特別調査委員会」も全く信用できるものではない。
今回のことが前進につながるとすれば、それは日朝間で既に帰国させる被害者のリストが確認されており、それを明らかにするため「調査の結果見つかった」という北朝鮮側の口実にすることでしかない。私たちはその意味で、調査委員会の発足や調査などに何の関心も持つものではなく、全ては結果によると認識するものである。認定か未認定かにかかわらず何人か帰ってくるのであれば、それは明らかな進展であり制裁の部分解除は交渉のカードになったと評価できる。
2、「進展」と「解決」は異なる。
このような形の交渉によってでも進展は必要であるが、この方法だけで拉致問題の解決(現在生存している拉致被害者の帰国という、極めて限定した意味ですらも)は不可能である。総理は「全面解決が政権の最重要課題」と言っており、その思いは多とすべきだが、本当にそれが可能なのか、現時点では疑問を感じざるを得ない。かえってこの動きが、「進展」を「解決」にすり替えることになるのではないかという懸念を払拭することができない。
以上2点、つまり「進展」は必要であり、今回の合意を評価するとすれば「調査委員会」の設置ではなく、出た結果についての評価でなければならないこと、そして、これが逆に「解決」にすり替えられることのないよう、私たちとして一層注意し、今後も可能な手段をすべて用いて拉致被害者の救出にあたっていきたいと考える次第である。
平成26年5月29日
特定失踪者問題調査会代表 荒木和博