磯村勇斗という役者さんが、昨夜の日本アカデミー賞で最優秀助演男優賞を受賞した。
個人的に好きだという俳優さんではなかったが、「よし!」と心の中で頷く。
真っ直ぐな心を持つ「さとくん」を彼は演じた。映画の中で彼の真っ直ぐな心が、だんだんと歪んでいく。宮沢りえ演じる洋子の「ダメだよ、さとくんそれは違うよ」という声が私の背中から聞こえるのに、さとくんと一緒に私の心も歪んでいくのがわかって、さとくんの心の中の闇に自分が包まれていくのを感じてゾッとしました。
長い間、映画を見ることがなかった私。
それは映画を見る代金で本を買えば何度も読めるけれども映画は一回で終わりじゃんという経済的なことと、仕事と家事で忙しくて見にいく時間がないという物理的な理由で。
今まで話題になった映画を含めて、何も見ていない。本当に不思議なくらい何も見ていない。
ここ数年は経済的にも時間的にも余裕を持てるようになったおかげで、ふらりと映画館に足を運ぶようになって、映画館でなければ味わえない面白さを知りました。
磯村さんが受賞した作品は、原作を読んでいてもざらっとした気持ち悪さを感じましたが、それは他人事でした。
でも、映画の中のさとくんが変わっていく様を見て、彼の中に自分がいるのを感じ驚き、戸惑いました。
引き込まれるってこういうことなんだな。
いつのまにか、演じている彼と私が重なっていき、実体験のような感覚になる。
映画の帰り、自分の中にいる知らなかった自分に戸惑いながらも映画って面白いなと感じたけれど、それは彼の演技力ってやつだったかもしれない。
一度、彼のお芝居も見てみたいな。
最優秀主演男優賞の役所広司さんも納得でした。