女は年を追うごとに気が重くなっていくような気がするのはなぜだろう。
それは男は立場が上がって行き、女は価値が下がっていくからじゃないか貴子はそう思っていた。
今日も会社の暑気払い。
派遣の向井さんは子供がいるとの理由で欠席。
彼女以外に同年代はいない。
理由があるって素晴らしいと思う。
定年間近の伊藤さんは部の歓送迎会だって来たことがない。
あそこまで開き直れると楽なんだけどな…いくつになったらあの境地に辿り着けるのだろう。
他の女子メンバーは5つ以上年下でとてもかわいい。
貴子さんはまだまだ若いですよーなんて言ってくれる。
本心はわからないが。
彼女たちのことでちょっと違うんじゃないかと思う事があっても、私は注意したりしない。
彼女たちは注意されることに慣れていない。
ちょっと言っただけで落ち込み、恨まれ、「なにこのオバハン」なんて陰口を言われるだろう。
自分でもなめられてるなと思う事はあるが人に嫌われて得なことはないのだ。
とくに若い女性の情報量・口コミ力は影響力があるから気をつけなくてはならない。
自分は淡々と業務をこなし、時には彼女たちのフォローをし、そして時には上司と彼女たちの橋渡しまでするのだ。
キャバクラのヘルプみたいだな・・・と時々がっくりする。
貴子はこんな自分を変えたいと思って業務に関係する資格を取ることにした。
区役所に住民票を取りに行くついでに平日にしかできないことをまとめてやろうと久しぶりに有休を取って街に出た。
区役所・銀行・いつも混んでる美容室に行って、そのあと大学時代の友人宅へ向かった。
早紀は大学を卒業してからたったの2年で出来ちゃった結婚した。
小学生1年と2歳の男の子がいる。
会うのは上の子が産まれたばかりの時だったから6年くらい前だ。
近くに住んでいても平日仕事の貴子と土日は夫が休みな早紀ではなかなか会う機会がなかった。
早紀が毎年家族の笑っている年賀状を出し、貴子は失礼だがメールにて返事をする。
毎年「今年は会いたいね」などと書いてあるのに会わないのはなぜだろう。
きっとお互い忙しいせいだなと納得する。
早紀は早くに結婚した。
大学まで行かせてもらったのに2年しか働かないなんて貴子はなんだかもったいないような気がした。
しかも親から仕送りしてもらっているらしい。
実家は共働きだから裕福なのだと昔から言っていた。
そのかわり毎日おばあちゃん宅で迎えを待っていてとてもさみしかったらしい。
だから自分は働かないで子供の帰りを待ちたいと専業主婦になった。
駅まで自転車で迎えに来てくれた早紀は、大学時代よりかなり太っていた。
年賀状でもちょっと太ったかな?と思っていたが実際会ってみると厚みにビックリした。
親の仕送りを全部洋服につぎ込むくらいのオシャレだった早紀を思うと残念でならなかった。
子供を遊ばせるため公園に移動して、私たちは砂場で当時の思い出や、友達の動向や、近況を話した。
何年たっていてもやっぱり友達だなと思った。
子供が眠いと言い始めたので早紀の家に戻って寝かしつけ、今度は二人でお茶をした。
早紀が「貴子は子供産まないの?産んだほうがいいよ。早く生まないと大変だよ」
としきりに言う。「子供産まないなんて老後どうするの」
最初はそおねぇなんて言っていたがだんだんエスカレートしてきた。
貴子はムッとして
「私は親に仕送りしてもらってまで子供を育てたくない」と言ってしまった。
「早紀は子供がいれば幸せって言うけど子供が大きくなったときに何が残るの?
私は子供が産まれても職場復帰できるような自信が持ててから産みたいの」
早紀は「私今ブログ書いてるの知ってるでしょ。
子供が大きくなったらHPとか作る仕事したいなぁなんて。そしたら家にいれるし」
早紀は勢い任せで言ってしまったが、今は子供のことが精いっぱいなのだ、
正直自分の将来なんて考えられなかった。子供の将来のことならいつも考えているのに。
貴子はなんだかもうわかりあえないと思い「そろそろ帰るね」と言って早紀の家を後にした。
駅に向かうまでは頭に血が上っていたが、電車に乗ると貴子は少し反省していた。
みんな不安なのだ。子供がいても、いなくても、仕事してても、してなくても。
若さを失って代わりに得たものは何だろう。許すこころなのかもしれない。
貴子は早紀に「さっきはごめんね。言いすぎた。また遊ぼうね」
とメールした。
しばらくしても早紀からの返信はなかった。3日経ってもなかった。
そして毎年続いていた年賀状も今年は来なかった。
許すこころは大人になったから育つものではないのかもしれない。
少しだけ働いていてよかったとそのとき思った。