―死んだ後まで心配するなー
遺言という儀式があるが、これをしたためるのは大変なことだ。
遺言書は判断能力が正常ならいつでも書くことが出来、また本人の意思でいつでも内容を変更することも取り消すことが出来る。遺言書の作成は財産が多いほど、遺族のトラブルを避けるために必要になる。そして遺言書に記載されたことは最も尊重され、ほとんど遺言通りの遺産配分が実現する。
遺言書のタイプは三つある。
自筆証書遺言は遺言書の全文が遺言者の自筆で記述(代筆やワープロ打ちは不可)し、日付と氏名の自署押印してあること(実印 である必要はない)。本人の直筆で本文、日付、氏名などを書く様式だが、第三者に偽造されやすい。
公正証書遺言は遺言内容を公証人 に確認してもらってから公正証書 にする方式。証人2名と手数料を用意し、公証役場を訪問する必要はない(公証人 に出向いてもらうことが可能)。遺言書の検認は不要である(1004条二項)が、最も確実な様式だ。
秘密証書遺言は遺言内容を秘密にして公正証書にする方式。証人二名と共に、手数料を用意し、公証役場を訪問する必要がある。代筆やワープロ打ちも可能だが、遺言者の署名と押印は必要であり(970条一項一号)、その押印と同じ印章で証書を封印する(同項二号)。
代筆の場合、証人欠格者以外が代筆する必要がある。遺言者の氏名と住所を申述したのち(同項三号)、公証人が証書提出日及び遺言者の申述内容を封紙に記載し、遺言者及び証人と共に署名押印する(同項四号)。遺言の執行の際、裁判所の検認手続きが必要になる。
以上の三タイプの遺言を作成する前に、公開遺言作成という行為が考えられる。公開遺言作成は遺言書の作成を文字通り「公開」で行う方法だ。
「遺言の作成」というよりは「遺産分割協議」を被相続人を含めて生前にやってしまおうという形に近い。相続人たちを前にして、被相続人が最終意思を文書に書かれた文字ではなく肉声で表明するので説得力が全然違う。
また相続人のほうも、被相続人の目の前で意見を述べ合うわけですから、自分勝手な主張をしにくくなる。
そして、被相続人と相続人それぞれが意見交えてできあがった最終的な合意を、「遺言書」という法的実現力のある書類に仕上げていくやり方が「公開遺言作成」という方法になる。この方法は、遺族(被相続人)の理解が必要になる。
「生きているのに相続の話なんて、俺の財産を狙っているのか?そんなに俺に早く死んで欲しいのか」というある種見当違いの感情を持つ人は多いと思うが、「自分が死んだ後は、残ったもの同士で好きなようにしろ、後は野となれ山となれ」というのは、ちょっと無責任のような気がする。
遺産相続トラブルというのは、いつでも、誰にでも起こりうるし、自分の家族だけは例外というのは、誰にも言い切れない。そしてそれに対する備えをしておくというのは、家族に対する一つの責任である。
公開遺言作成は被相続人を含めた家族全員で話し合うので、合意を得やすいというメリットがある。また、被相続人自身の意見も表明できるので、被相続人の意思に添った分割が可能になる。遺言書と遺産分割協議をあわせたような、遺産相続を円満解決に導く方法になる。
反面、今まで表面化していなかった家族同士の確執が表に出てくるという可能性があることを覚悟しなければならない。
たいていの場合は、「納得できない」という話に対して、感情的な部分が多くを占めている。それは、しばしば遺族同士の人格攻撃という形になる。
相手方がどれだけひどい人間であるか、ということを批判するが、現実的な話として、このことはそれほど意味がない。
ひどい人間であろうと、逆にやさしくて人格的に優れた人であろうとも、遺留分や特別受益、寄与分といった遺産相続をめぐる様々な権利・義務から免れるわけではないし、遺産相続に関する法律を無視できない。この点に法律は非常にシビアだ。
しかし、相続に関する法律はガチガチではなく、話し合いで解決できる余地も充分に残されている。

