宝塚『エリザベート スペシャルガラコンサート』批評②~役作りの違い~ | ふうこの★アートでセルフセラピー★

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こちらのブログでは、セルフセラピーとして描いたオリジナルアートやぬり絵、そして様々なアートにおけるヒーリング効果についてを私の視点から発信しています。

ふうこです。

 

こちらのつづきです。

 

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トート役の一路真輝、ゾフィー役の初風諄、ルドルフ役の朝海ひかる、そしてアンサンブルのメンバー達などはほぼ『東宝エリザベート』も出演していたため、

 

ガラコンのお芝居の厚さがもはや宝塚の域を超えていました。

 

宝塚は夢の世界であるため、歴史上の人物を主人公にした舞台であっても、

どこか遠い世界の住人のような非現実感があるものですが、

 

今回は『東宝エリザベート』のように、

どちらかというと現実感を感じるような、

鬼気迫るお芝居になっていました。

 

それはキャスト陣の役作りがかなり変わっていたからだと感じます。

 

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雪組の初演時、青い血が流れる氷のようなトートを演じていた一路真輝は、

以前より情熱的ではあってもやはり氷のトート。

 

青い情熱を秘めたトートになっていました。

 

(こちらから画像をお借りしました)

 

私は無表情だった初演時の一路トートも大好きだったのですが、

今回の表情豊かなトートは、一路さん自身も東宝でエリザベート役も経ているからこそ出来たトートなのではないかと思いました。

 

初演時はエリザベートに一喜一憂してぶんぶん振り回されるトートになっていましたが、

 

今回の一路トートは、エリザベートを【理解している】トートのように感じました。

 

「今はお前にこう拒絶されることは予想していた。

だがいつかお前は俺を心から愛することを知っている。」

 

という確固たる自信があるように見えました。

 

それがただの根拠のない自信ではなく、

はたまた神だから全知全能であるからという理由なのではなく、

 

エリザベートの魂を理解しているからだと思わせる共鳴感がありました。

 

私は一路さんの演じた東宝エリザベートも大好きです。

「この人にしか東宝エリザベートはできない」

とエリザベート役を卒業する前の一路さんの演技を観て思ったほど。

 

だからこそ今回のトートにまた説得力があったのだなと思います。

 

 

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花總まり(はなちゃん)エリザベート。

ガラコンの時はまだ東宝エリザベートが決まる前で、

本人は宝塚で三度目のエリザベートとなっていました。

 

(こちらから画像をお借りしました)

 

初演と再演の時と今回役作りはガラリと変化。

 

上記2公演の時は、とにかく自分の自由を追い求めて周りが見えていないエリザベートでしたが、

 

今回は運命に翻弄されていく中でも必死に花開こうとしている様が窺えました。

 

去年の東宝版では本当に折れそうなほど繊細で、

とにかく可哀想で観ていて辛いエリザベートというまた新たな役作りを確立していましたが、

 

ガラコンはその東宝エリザベートの役作りの基盤になっていたと感じます。

 

皇太后ゾフィーにいじめられるシーンでは初演時と再演時にはなかった絶望感が漂っていましたし、

 

自分の理想と周りが自身に求める理想のはざまで戦っている様子がすさまじかった。

 

特に『私が踊る時』の力強さと神々しさ、

『魂の自由』での精神病患者であるヴィンディッシュ嬢への羨ましさと孤独感は、

 

やはり彼女がレジェンドと言わしめる全てを体現していると感じます。

 

本当に、こんなにも演技派ですさまじい高貴さを出せる娘役は、

宝塚始まって以来なのではないかと私は思ってしまいます。

 

彼女のエリザベートは、何度も見たくなる。

 

それにしても驚くべきは、この大役を初演時20歳そこらで演じていたということです。

少女時代から老年期までを演じ分けるだけでも大変なのに、

あのクオリティの高さは何だったのか。

 

はなちゃんには本当にエリザベートが乗り移っているのだと感じます。

 

そういえば宝塚時代、毎公演自分にエリザベートが乗り移ってくれるようお祈りしていたのだとか。

 

まさに憑依型の女優さんです。

本当大好き。

 

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狂気的な殺人者という側面だけではなく、

ストーリーテラーという難しい役割も担っているルキーニ。

 

それを轟さんは16年経った今、

より完璧に演じていました。

 

(こちらから画像をお借りしました)

 

初演時、

「どうして宝塚は女性だけの世界なのに、

1人本物の男性が混じっているのですか?」

 

と、リーヴァイさん(作曲家)だったかな?クンツェさん(作詞家)だったかな?

 

言われたほどの男よりも男らしい轟さん(笑)

 

いやあ、今回もそうでした。

むしろ年齢を重ねてニヒル度が上がっている。

 

初演時との役作りの違いとしては、

トートを敬愛している様子が強く描かれていたことかなと感じます。

(ここは役作りというより演出かも?Wキャストのわたるさんもやっていたので)

 

トート出現の際に深々と何度もお辞儀をしているのは、

初演時のDVDを見た限りではなかったと記憶しています。

 

また、狂気さのベクトルが以前と違った。

 

最終答弁の際の

「まだ最後の証言が残っているぜ。さあ!」

の「さあ!」が初演時は高音でエキセントリックに叫んでいたのに対し、

 

今回は低音で他の魂たちを誘っていたことが、

ルキーニがエリザベートを殺害したのは、

本人の中で一貫していた正義があったのだなと感じさせました。

 

ただ狂っていたのではなく、

ルキーニの中では確かにトート閣下は存在していたし、

エリザベート殺害はトートが自分に命じたからだと確信を持っていたルキーニでした。

 

・・・それにしてもルキーニが史実でエリザベートを殺害したのは、

自己顕示力の高さからだったと思うのですが、

 

こうやってミュージカルでも主要人物として登場しちゃって、

愛されてしまって、

 

なんだかちょっと複雑ですね。

まんまと本人の望み通りになってしまったように感じて・・・

 

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初演時も包容力がハンパなかった高嶺ふぶき(ユキさん)フランツは、

今回、よりパワーアップしていました。

 

(こちらから画像をお借りしました)

 

年齢を重ねたからこそ、中年期から老年期にかけてのフランツが本当に素晴らしかった。

 

初演時のフランツは、愛するエリザベートの機嫌にいちいち振り回されているという感じがありましたが、

 

今回は「自分が皇帝である」という自覚からエリザベートをたしなめているということがよくわかり、

 

それが一層エリザベートとのすれ違いを思わせて切なくなりました。

 

例えば初演時は結婚式での『最後のダンス』後、

エリザベートに抱き着かれて素直に喜んでいましたが、

今回はすぐに喜びの感情を抑えて周りに応えています。

 

他にも子供をゾフィーに取られたエリザベートに

「母のほうが経験豊富だ、任せよう」と言って、

「わかりました、あなたは敵だわ!」と言い返された時、

 

初演時は

「どうしようもないんだ!頑張っているけれど僕は母には敵わない」

というマザコン的なもどかしさが伝わってきましたが、

 

今回ははっきりと母親に味方しているという感じが見てとれました。

1人のフランツという男性よりも、

皇帝フランツとしての役作りが大きかったように思います。

 

それでもきちんとエリザベートへの深い愛情も表現できるのは、

やはりユキさん(高嶺ふぶき)の芝居力の高さだなと心底感じます。

 

他の方の演じたフランツも好きですが、

やはり私の中では東宝版含め、ベストフランツはユキさんです。

 

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宙組以来の朝海ひかる(コムちゃん)ルドルフ。

 

(こちらから画像をお借りしました)

 

思えばコムちゃんはこのルドルフ役からブレイクしたんですよね。

 

退団してからは東宝エリザベートでまさかのタイトルロールを演じて、

私としてはとても驚きました。

 

コムちゃんはダンスの人だったと思っていたので。

 

でも彼女もエリザベート役を経たからこそ、

今回素晴らしいルドルフを演じていたのだなと感じます。

 

宙組時代のルドルフは、繊細さと必死さがゆえにから回るルドルフでしたが、

 

今回のルドルフは皇太子として国を思いながらも、

母エリサベートの気難しさと繊細さを受け継いだがゆえにどんどん崩れていくという、

 

悲劇のルドルフでした。

 

まさにエリザベートとは鏡同士なのだと思わせる説得力がありました。

最後の死の場面では、虚無感の表情にぞくっとしました。

 

そして宙組の時はもっとフランツに歩み寄った役作りだったように見えましたが、

今回はフランツとは完全な対立関係を示していたように感じます。

 

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初演でルドルフを演じていた香寿たつき(タータン)。

 

(画像はこちらからお借りしました)

 

今では東宝でエリザベートをいじめる皇太后ゾフィーですもんね(笑)

びっくりです。

 

雪組時代から彼女のルドルフはとても優しく、あたたかいルドルフなんだなあと感じていました。

 

エリザベートへの愛だけではなく、

父フランツに対する愛情もひしひしと伝わってきました。

 

だからこそ父に自分の気持ちをわかってもらえないことに苦しみ、

エリザベートからも拒絶されたことで、もう頑張れなくなってしまったように思います。

 

今回もその雪組時代の役作りは健在だったように思います。

 

エリザベートの手にすがりつき、

その手がするりと抜けた時にこぼれた一粒の涙に、

 

ルドルフの孤独と優しさが全て詰まっていたように感じて、

切なくなりました。

 

これが表現できるのは、演技力が高く、

人への気遣いの長けているタータンならではな気がします。

 

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ざっと主に初演時の主要キャストの役作りの変化を述べました。

 

もっともっと語りたいことがありますので、

(アンサンブルに関しても語りたいこと多数!)

 

また改めての機会に書こうかと思います。

 

 

長文、そしてマニアックな文章失礼しました~。