突然、MV公開当日(2020/5/26)にteaserが出て、ノイミー(≠ME)冨田菜々風のソロ曲が発表されました。

すごく、いい曲、ですね。

すばらしい歌詞、冨田菜々風の「声」もとてもいいです。

MVは良質なショートムービーの趣き。

 

 

片思いのガールミーツボーイの恋、告白する機会もないまま卒業式を迎えた女子高生の心情を、しかしドラマチックに過去形で歌う。なにかとてもパーソナルなニュアンスを感じさせます。

指原莉乃プロデュース・作詞のイコールラブにもノイミー(≠ME、ノットイコールミー)にもこれまでなかった曲のように思えます。

 

「この恋が花だったら 学名すらないでしょう」

「気付かれず見つからずに そっと咲いて枯れるだけ 空白の花」

 

ただの「名もなき花」ではなく「学名すらない」(誰にも発見されず、存在もしない)「空白の」花。

なんという言葉のセンス、なんという歌詞でしょう。

そして、明るい笑顔が印象的で力強い声の冨田菜々風に、こういう切ない想いを歌わせるセンス。

これまでノイミーの曲はすべてバグベアさんの作曲・編曲だったので、音楽的にもちょっと違う趣向。作曲は長浜駿平さん、編曲はAKBグループ・坂道シリーズ楽曲でおなじみの若田部誠さんです。バイオリン演奏は若旅菜穂子さん。

 

MVがきちんと撮影されているところからも、teaserの指原Pとの対話の服装を見ても

おそらくコロナ前の19/12月〜20/1月にレコーディング、撮影されたようであり(撮影は1月だったそうです。ということはイコラブ7thシングル「CAMEO」制作より前か?)、おそらく4〜5月のノイミー単独関東ツアーで披露される予定だったのでしょうか。

 

MVは物語的で、秘められた恋のドラマがひしひしと伝わってきます。

1年間(もしかしたらもっと長く)ひそかに想い続けた主人公の「見つめる視線」を

季節を変えながらていねいに撮っていきます。

冨田菜々風の印象に残る強いまなざしの、その先にはいつも彼の姿が、、、

相手の目と交わることのない、一方通行の視線劇。

 

 

しかし主人公はバレンタインのチョコもタイミングが悪くて渡すことができず、彼と親しくなる女子が先に渡してしまい、ひとり夜の公園で、、、(この雪のシーンはとくにいいですね)

告白もできぬまま、手をつなぐ二人に耐えきれず卒業式から飛び出して、、、

暗い闇の中で叫ぶように歌った彼女は光の方へと飛び出していく。

 

この本格的劇映画のようなMVも名作と言えるのではないでしょうか? 

 

「女優 冨田菜々風」を引き出した山戸結希(やまとゆうき、1989-)監督は、

「描かれた歌詞世界を何よりも大切に、映像版『空白の花』を監督しました」

とtweetしています。

 

山戸監督は若手の女性監督としてちょっと名の知られた存在で、15人の女性若手映画監督(自身やノイミー「君の音だったんだ」MVの松本花奈監督も含む)による8分ほどの短編で構成した「21世紀の女の子」(18)を企画・プロデュースしたこともあり、東京国際映画祭で見たことがありますが、才能のある人だと思います。昨年のTAMA映画祭では「闇の中の光ー山戸結希監督特集ー」が催されました。

 

乃木坂46の堀未央奈さんが初主演した劇映画「ホットギミック ガールミーツボーイ」(19)も監督しています。(↓本編の映像・写真と花譜KAFの主題歌をミックスした山戸監督のVideo short ver. 途中から動画になります)

 

 

(追記)2020/11/27に乃木坂公式youtubeで公開された堀未央奈さんのソロ曲「冷たい水の中」MVは、山戸結希監督ならではの作品でした。その中で乃木坂からの卒業が宣言されるという前代未聞のMVでしたが、冒頭のモノローグから制服姿へ、そして制服を脱いで冷たい水の方へ向かおうとする彼女のパフォーマンスを1カットで撮り続け、その中で特機で雨を降らし制服が濡れるので一発撮りだったと思われる緊張感に満ちた非凡なMVでした。この監督はやはり才能がありますし、捉えたい何かをきちんと掴む力量が伝わってきます。

「空白の花」での菜々風の横顔とまなざしにも同じものが感じられました。

 

 

山戸結希監督はMVの世界でも、バンドじゃないもん!「パヒパヒ」 (12)、おとぎ話「NO SOS」「AND YOUNG」(13)「COSMOS」 (14)、神聖かまってちゃん「ズッ友」 (14)、乃木坂46「ごめんね ずっと…」 (15,「命は美しい」収録の西野七瀬ソロ曲)「ハルジオンが咲く頃」 (16)、RADWIMPS「光」 (16)、Little Glee Monster「はじまりのうた」 (16)、NGT48「世界はどこまで青空なのか?」 (17)、Aimer「Ref:rain」 (18)、ももクロ「Sweet Wanderer」 (18)、ラストアイドル「好きで好きでしょうがない」 (18)、と売れっ子といっていい活躍ぶりです。

(2023追記)山戸結希監督はその後ノイミーの「君はこの夏、恋をする」(1st表題曲, 21/7)「はにかみショート」(5th,22/11)、イコラブ「この空がトリガー」(13th表題曲, 23/1)のMVを監督されました。

ドラマではテレ東「生きるとか死ぬとか父親とか」(21/4月期, 監督・シリーズ構成)、NHK「おれ、夕子」(23, 藤子・F・不二雄 SF短編ドラマ, 脚本・演出)を演出。

また、監督作「溺れるナイフ」(16)と「ホットギミック ガールミーツボーイ」に志磨遼平(ドレスコーズ/元毛皮のマリーズ)が出演した関係から、2023年後半にドレスコーズのMVを「最低なともだち」「少年セゾン」「襲撃」と3本続けて監督。いずれもMVというより志磨遼平と山戸監督のコラボレーションによる3部作の表現で楽曲部分にタイムコードがカウントダウンで入り(死のテーマ)、特に「襲撃」はアート的な傑作といえる。ドレスコーズ公式chに志磨と山戸監督の特別対談3回(1作ずつについて, 23/8-9)がアップされている。

 

 

本ブログでは基本的にイコラブメンバーを取り上げたいので(これまで文中でノイミーちゃんに触れたことはあっても)ノイミーメンバーに関する記事を書くのは初めてであり例外になりますが、あまりにいい曲、いいMVだったので、こんな文章を書いてしまいました。