「戦争関連法」と「中国脅威論」の虚実
先日、久しぶりに反「戦争関連法」の講演会に参加しました。会場から溢れんばかりの参加者です。講師のお話もとても良かったのですが、途中「またか?!」という思いにかられました。安倍政権とアメリカを辛らつに批判するのは当然として、そこに付け加えて、何ら脈絡もなく、正に“取って付けた”ように「中国の拡張主義も問題ですが・・・」の一言を加えることを忘れない・・・。自分が如何に不偏不党で、公正中立の立場に立っているかと言わんばかりです。
いわゆる「活動家」との居酒屋談議などでも、こうした場面によく出くわします。試しにこの「拡張主義」の中身を問うてみると、返ってくる答えは正に安倍政権とそれに追随してやまない“マスコミ”がたれ流す、単純化された理屈(=或いは「感情」か?)と大差ない内容です。この“理屈”は主に2つ、一つ目は釣魚台(*尖閣列島)周辺の“侵犯行為”と“資源開発”、2つ目は西沙、南沙海域島嶼(*一般では無自覚に「シナ海」という差別用語を平気で使うが・・・)での開発問題です。
「尖閣列島は日本領」という前提と、中国の国力増大と軍事力の増強に対する漠然とした“不安と恐怖”からくる、こうした“理屈=感情?”に対し、ここで全面的な反論ができるほどの“学術”知識も見識も持ち合わせてはいませんが、こと“日本”がこのことを挙げて「戦争関連法」の必要性を説く狡猾さについてだけ、少し触れておきたいと思います。
元を辿れば、いわゆる「尖閣問題」がアメリカの「沖縄返還」に際し、意図的にその範囲に「尖閣諸島」を加えたことに起因します。無論このことが偶然に起こったことではなく、アメリカお得意の“領土問題”を利用した地域分断=不安定化戦略の典型と言えるでしょう。
当時、中国本土はもとより、台湾や香港、アメリカやヨーロッパ各地の中国系市民による激しい抗議行動が起こりました。その後、どうにか安静化したものが、近年、中国漁船による日本の警備艇“追突”事件と、その後の日本政府による「国有化」によって再び火がついたという事実は誰も否定できないでしょう。また、「戦争関連法」可決に合わせ、その直前になって右翼扇動家によって、賑々しく公表されたこの海域での16基のガス田施設についても、実は2008年に合意した「ガス田開発に伴う日中合意」後の開発は一カ所(*「白樺ガス田」)のみで、他はそれ以前から中国側が発見し、既に開発している施設です。ついでに言うと、この「白樺ガス田」についても、中国側による「日中合意」に基づいての共同開発の呼びかけに、日本からは1社たりとも応募はありませんでした。これは当然のことで、日本にとって、元来この海域での資源開発は、その埋蔵量は言うに及ばず、輸送経費一つをとっても、まったく採算に合わない代物だったからです。もとより“資源争い”さえする気がない中で、中国脅威論を煽る行為は、「戦争関連法」可決に向けた“為にする”攻撃としか言いようがありません。
次に、今日本でことさら喧噪の種になっている西沙・南沙海域の領有問題を見てみましょう。この海域での中国と他国との間に領有権問題があるのは事実です。しかし、これは何も今にはじまったことではありません。70年代にはその領有をめぐって“戦争”まで起こり、双方に多数の戦死者を出しています。その後、「当事者」間の努力によって、今日までは大きな武力衝突はなくなり、この「領土問題」というやっかいなしろものがどうにか「沈静化」し、「制度化」に向かっているところに、「海洋法条約」を批准さえしていないアメリカと、この紛争の「当事国」でもない日本が「武器輸出三原則」などお構いなしに、相手国にせっせと武器を供給し、事態を敢えて悪化させようと目論み、盛んに対立を煽っているのが実情ではないでしょうか?
ところで、この西・南海域での軍備拡張、海洋進出を騒ぎ立てるアメリカや日本政府であっても、ことこの海域島嶼の“領有”問題については意図的にほとんど触れないのは何故でしょうか?それもそのはず、他ならぬ日本が、1938年から1939年にかけて、この海域の東沙諸島、西沙諸島、南沙諸島を占拠し、1939年3月30日には台湾総督府第122号で、その一部を日本領として台湾総督府の管轄に入れ、高雄州高雄市に編入しているのです(*これらの“島々”にそれぞれ「日本名」があるのをご存じですか?)。
第二次世界大戦終了後、中国政府(*当時は中華民国)が1946年に東沙諸島、西沙諸島、南沙諸島の主権を回復し、主な島嶼に石碑の設立および駐留軍の派遣を行いました。1947年12月に、新しく定めた南海各諸島の名称および『南海諸島の位置図』を発表し、中国の領土および海域の範囲をあらためて明示したものです。因みに、この「石碑の設立と駐留」はアメリカ(!)海軍の艦船によって行われた事実も付け加えておきましょう。中国の外交部長(*日本の「外務大臣」にあたる)がかつて語った「この海域の島々が中国領であることは、アメリカが一番よくご存じのはずですが・・・?!」という“皮肉”は、まさにこの事実を指しての発言です。
先に述べたように、中国の国力増大と軍事力増強は紛れもない事実ですが、このことと「日本にとっての脅威」とはイコールではありません。中国の「軍拡」や「脅威」を考える上で、その“膨大な人口と、おそらく世界でも最長級の国境線を抱えているという事実と併せて、近現代史における列強の侵略による国土荒廃、それによる中国民衆の凄まじい被害を無視してはなりません。「南京」、「強制連行」、「性暴力」の被害者がほぼ例外なく、「二度と侵略されないよう、祖国が強大になってほしい」と口々に語るその思いと、日本政府が目論む軍拡路線と同一視していいものでしょうか。
「仲裁裁判所」による“判決”以降、“日本”では新たに“国際世論を無視する横暴な中国”と言ったキャンペーンで大賑わいです。因みに、「司法裁判所」とはまったく異なる「仲裁裁判所」の役割や性格、「仲裁員」の構成、その効力範囲などはさておくとして、日本のマスコミ報道だけを見ていると、まるで“世界中”が中国を非難しているかのような錯覚にとらわれても無理からぬことでしょう。
「G8」や「ASEAN」「G20」など、国際的会議のたびに、日本が率先して「中国非難決議」をさせようと必死に活動する姿は、さすがに少々異様にさえ感じます。
さて、こうした“中国包囲網”を築くという日本(+アメリカ)側の“努力”は効を喫したのでしょうか?“残念ながら”そうはうまくいっていないようです。先日のASEAN会議では日本側による「経済援助」をちらつかせた買収工作(*日本のマスコミでは“中国側の買収工作”だけが大々的に報じられていますが・・・)の甲斐もなく、決議にはこのことが一行も載らないばかりか、議題にさえ上らなかったのです。アジア各国で今敢えてアメリカの“ポチ”になろうとする国がそう多くないということでしょう。
日本が「議長国」となった「G8」では、議長国の“ゴリ押し”で「国際法遵守・・・ウンヌン」が声明にようやく盛られました。このことを大々的に報じた日本のマスコミですが、その新聞の片隅に“ひっそり”と以下のような記事が載っていました。その大まかな内容は「G8の決議は20数条あり、(議長国である)日本の強い要請によって、その最後の一条に、“一般論”として、僅か一行付け加えられた・・・・」というものでした。
残念ながら、お昼のワイドショー等での“中国が攻めてきたらどうするのか!”という幼稚かつ短絡的な“論調”がそれなりの“説得力”を有しているのが実情です。私たち自身が、こうした「排外主義=反中嫌韓」を克服しない限り、「戦争法」等に反対や抗議する声が、こうした「世論」に呑み込まれてしまうのは避けられないのではないでしょうか?
墨面
先日、久しぶりに反「戦争関連法」の講演会に参加しました。会場から溢れんばかりの参加者です。講師のお話もとても良かったのですが、途中「またか?!」という思いにかられました。安倍政権とアメリカを辛らつに批判するのは当然として、そこに付け加えて、何ら脈絡もなく、正に“取って付けた”ように「中国の拡張主義も問題ですが・・・」の一言を加えることを忘れない・・・。自分が如何に不偏不党で、公正中立の立場に立っているかと言わんばかりです。
いわゆる「活動家」との居酒屋談議などでも、こうした場面によく出くわします。試しにこの「拡張主義」の中身を問うてみると、返ってくる答えは正に安倍政権とそれに追随してやまない“マスコミ”がたれ流す、単純化された理屈(=或いは「感情」か?)と大差ない内容です。この“理屈”は主に2つ、一つ目は釣魚台(*尖閣列島)周辺の“侵犯行為”と“資源開発”、2つ目は西沙、南沙海域島嶼(*一般では無自覚に「シナ海」という差別用語を平気で使うが・・・)での開発問題です。
「尖閣列島は日本領」という前提と、中国の国力増大と軍事力の増強に対する漠然とした“不安と恐怖”からくる、こうした“理屈=感情?”に対し、ここで全面的な反論ができるほどの“学術”知識も見識も持ち合わせてはいませんが、こと“日本”がこのことを挙げて「戦争関連法」の必要性を説く狡猾さについてだけ、少し触れておきたいと思います。
元を辿れば、いわゆる「尖閣問題」がアメリカの「沖縄返還」に際し、意図的にその範囲に「尖閣諸島」を加えたことに起因します。無論このことが偶然に起こったことではなく、アメリカお得意の“領土問題”を利用した地域分断=不安定化戦略の典型と言えるでしょう。
当時、中国本土はもとより、台湾や香港、アメリカやヨーロッパ各地の中国系市民による激しい抗議行動が起こりました。その後、どうにか安静化したものが、近年、中国漁船による日本の警備艇“追突”事件と、その後の日本政府による「国有化」によって再び火がついたという事実は誰も否定できないでしょう。また、「戦争関連法」可決に合わせ、その直前になって右翼扇動家によって、賑々しく公表されたこの海域での16基のガス田施設についても、実は2008年に合意した「ガス田開発に伴う日中合意」後の開発は一カ所(*「白樺ガス田」)のみで、他はそれ以前から中国側が発見し、既に開発している施設です。ついでに言うと、この「白樺ガス田」についても、中国側による「日中合意」に基づいての共同開発の呼びかけに、日本からは1社たりとも応募はありませんでした。これは当然のことで、日本にとって、元来この海域での資源開発は、その埋蔵量は言うに及ばず、輸送経費一つをとっても、まったく採算に合わない代物だったからです。もとより“資源争い”さえする気がない中で、中国脅威論を煽る行為は、「戦争関連法」可決に向けた“為にする”攻撃としか言いようがありません。
次に、今日本でことさら喧噪の種になっている西沙・南沙海域の領有問題を見てみましょう。この海域での中国と他国との間に領有権問題があるのは事実です。しかし、これは何も今にはじまったことではありません。70年代にはその領有をめぐって“戦争”まで起こり、双方に多数の戦死者を出しています。その後、「当事者」間の努力によって、今日までは大きな武力衝突はなくなり、この「領土問題」というやっかいなしろものがどうにか「沈静化」し、「制度化」に向かっているところに、「海洋法条約」を批准さえしていないアメリカと、この紛争の「当事国」でもない日本が「武器輸出三原則」などお構いなしに、相手国にせっせと武器を供給し、事態を敢えて悪化させようと目論み、盛んに対立を煽っているのが実情ではないでしょうか?
ところで、この西・南海域での軍備拡張、海洋進出を騒ぎ立てるアメリカや日本政府であっても、ことこの海域島嶼の“領有”問題については意図的にほとんど触れないのは何故でしょうか?それもそのはず、他ならぬ日本が、1938年から1939年にかけて、この海域の東沙諸島、西沙諸島、南沙諸島を占拠し、1939年3月30日には台湾総督府第122号で、その一部を日本領として台湾総督府の管轄に入れ、高雄州高雄市に編入しているのです(*これらの“島々”にそれぞれ「日本名」があるのをご存じですか?)。
第二次世界大戦終了後、中国政府(*当時は中華民国)が1946年に東沙諸島、西沙諸島、南沙諸島の主権を回復し、主な島嶼に石碑の設立および駐留軍の派遣を行いました。1947年12月に、新しく定めた南海各諸島の名称および『南海諸島の位置図』を発表し、中国の領土および海域の範囲をあらためて明示したものです。因みに、この「石碑の設立と駐留」はアメリカ(!)海軍の艦船によって行われた事実も付け加えておきましょう。中国の外交部長(*日本の「外務大臣」にあたる)がかつて語った「この海域の島々が中国領であることは、アメリカが一番よくご存じのはずですが・・・?!」という“皮肉”は、まさにこの事実を指しての発言です。
先に述べたように、中国の国力増大と軍事力増強は紛れもない事実ですが、このことと「日本にとっての脅威」とはイコールではありません。中国の「軍拡」や「脅威」を考える上で、その“膨大な人口と、おそらく世界でも最長級の国境線を抱えているという事実と併せて、近現代史における列強の侵略による国土荒廃、それによる中国民衆の凄まじい被害を無視してはなりません。「南京」、「強制連行」、「性暴力」の被害者がほぼ例外なく、「二度と侵略されないよう、祖国が強大になってほしい」と口々に語るその思いと、日本政府が目論む軍拡路線と同一視していいものでしょうか。
「仲裁裁判所」による“判決”以降、“日本”では新たに“国際世論を無視する横暴な中国”と言ったキャンペーンで大賑わいです。因みに、「司法裁判所」とはまったく異なる「仲裁裁判所」の役割や性格、「仲裁員」の構成、その効力範囲などはさておくとして、日本のマスコミ報道だけを見ていると、まるで“世界中”が中国を非難しているかのような錯覚にとらわれても無理からぬことでしょう。
「G8」や「ASEAN」「G20」など、国際的会議のたびに、日本が率先して「中国非難決議」をさせようと必死に活動する姿は、さすがに少々異様にさえ感じます。
さて、こうした“中国包囲網”を築くという日本(+アメリカ)側の“努力”は効を喫したのでしょうか?“残念ながら”そうはうまくいっていないようです。先日のASEAN会議では日本側による「経済援助」をちらつかせた買収工作(*日本のマスコミでは“中国側の買収工作”だけが大々的に報じられていますが・・・)の甲斐もなく、決議にはこのことが一行も載らないばかりか、議題にさえ上らなかったのです。アジア各国で今敢えてアメリカの“ポチ”になろうとする国がそう多くないということでしょう。
日本が「議長国」となった「G8」では、議長国の“ゴリ押し”で「国際法遵守・・・ウンヌン」が声明にようやく盛られました。このことを大々的に報じた日本のマスコミですが、その新聞の片隅に“ひっそり”と以下のような記事が載っていました。その大まかな内容は「G8の決議は20数条あり、(議長国である)日本の強い要請によって、その最後の一条に、“一般論”として、僅か一行付け加えられた・・・・」というものでした。
残念ながら、お昼のワイドショー等での“中国が攻めてきたらどうするのか!”という幼稚かつ短絡的な“論調”がそれなりの“説得力”を有しているのが実情です。私たち自身が、こうした「排外主義=反中嫌韓」を克服しない限り、「戦争法」等に反対や抗議する声が、こうした「世論」に呑み込まれてしまうのは避けられないのではないでしょうか?
墨面