日本のマスコミがほとんど報じない「ニュース」№36
イスラエルとアメリカによるイラン侵略と、イランによるホルムズ海峡の実質封鎖から数週間が経ちました。
汚職で提訴され、逮捕を逃れるために“エンドレス”の戦争を続けざる得ないイスラエルのネタニヤフ首相はさておき、トランプが「終戦戦略」がないまま、この「道義」の欠片もない侵略を始めたことに驚きます。
おまけに、口では“反米”を高唱しつつも、その実“親米勢力”によって骨の髄まで浸食されている(旧イラン)政権中枢を根こそぎ「斬首」するに至っては、正直、理解不能です。直近の交渉で“屈服”にほぼ同意していたとされる「交渉相手」を皆殺しにして、イランを「徹底抗戦」“一択”に追いやる愚行と言わざる得ません。これはもはや「政治」でも「戦略」でもない、「チンピラヤクザ」の所行と言えるでしょう。案の定、イランは崩壊するどころか、新政権が「徹底抗戦」を宣言し(・・・せざる得ない)、ホルムズ海峡の実質封鎖に至りました。
ホルムズ海峡の重要性や、実質封鎖による世界経済の大混乱、特に資源がなく、エネルギー源の約90%を中東に頼る日本の苦境についてはマスコミでもすでに散々報じられているので、今回は中国への影響と中国のエネルギー事情を合わせてお伝えします。
面白いことに、ネット上では日本の苦境以上に、中国の「苦境?」をあざ笑うニュースに満ちあふれています。30年間叫び続けた「中国(経済)崩壊論」の新バージョンと言えるでしょう。
“中国も70%の石油輸入をホルムズ海峡に頼っている。相当な打撃になるはずだ!”と思い込んでいるようです。思えばつい先のアメリカによるベネズエラ侵略の時も同じような論調があふれていました。イランと同様に、中国に輸出するほぼすべての石油が止まれば、中国経済に大打撃になるという「論調=期待?」です。
もちろん、「ホルムズ海峡の封鎖」をはじめ、中東情勢の緊迫化は、中国にとっても少なからずの影響があります。ところで、ホルムズ海峡封鎖以後、日本を含む各国が次々と関連部署の緊急会合が招集され、「備蓄」の放出や対応に追われている中、中国がこうした緊急会合を招集したり、「備蓄」を放出したという「ニュース」を聞いたことがあるでしょうか?「この世界的危機の中、唯一中国だけが眉一つ動かさない」と評した欧米のマスコミもありました。
ネトウヨたちが喜ぶ「中国(経済)崩壊論」には決定的な見落としがあります。それは「依存度」「備蓄量」など統計数字を算出するに当たっての「分母」が全く無視されているという点です。
中国のエネルギー源構成(2024年度)を見てみましょう。エネルギー源の約半分は石炭です。ちなみに石炭の自国産比率は90%以上です。そもそも石油依存度は僅か18.49%(その内輸入に頼る比率は72%)に過ぎません。その他の比率は世界最大規模の再生エネルギー(水力、風力、太陽光など)と原子力発電です。これに加えて世界最先端にある蓄電技術や、送電技術などがこれらを補佐しています。
中国にとって、最大の供給源としてロシアや中央アジア、南米などが控えていることはさておいても、驚くことに、全エネルギー源に占めるベネズエラ石油の依存度は0.53%、イラン石油の依存度は1.6%に過ぎないのです。
(*上記統計数字は遠藤誉・中国問題グローバル研究所所長による整理)
ちなみに上記統計数字は2024年度のものです。石油消費で大きな割合を占める自動車ガソリンに関し、25年から26年と、「電気自動車」の爆発的増加と代替(すでに国内普及率の半分を超える)によって、その依存度はさらに低下しています。
それにもう一つ、日本のマスコミでは全く報じられていない事実があります。中国が世界最大の「資源輸入国」であるのは事実ですが、日本などと違って、中国はそもそも「資源大国」でもあるのです。特に近年、中国国内でいくつもの有力な鉱源が発見されていますが、その開発があまり進んでいません。と言うより、意図的に開発せずに「温存」しているのです。その気になれば、自国で生産できるものも敢えて「輸入」しているのが現状です。エネルギー源の「多角化」という側面と、西側から“完全封鎖”された時など、「いざ」となった時の為に「温存」しているのです。こうした数値は公的な「備蓄統計」には含まれません。
こうしたことは偶然でも、中国が単に“幸運”だった訳でもありません。中国は約20年前から、エネルギー資源供給の不確実性を意識し、供給網の多角化や高効率の備蓄などの対策を講じてきました。何より決定的なのは再生(クリーン)エネルギーの開発と石化エネルギーそのものの依存縮小です。ご存じかもしれませんが、水力発電、風力発電、太陽光発電などによる発電量すべてにおいて、中国が今や世界トップです。「電気自動車」の開発も、単に技術的革新という意味あい以外に、こうした戦略に沿ったものです。
それはエネルギー分野のみならず、「食糧」をはじめ「鉱物」や「民生用品」にわたる全方向のものです。
中国の国家戦略は長期的に“最悪の事態”を想定して打ち立てられます。百年以上に及ぶ列強による蹂躙と収奪、建国後から今日まで続く経済封鎖と制裁を経験してきた中国の“血の滲む歴史”から得た教訓とも言えます。
もちろん、エネルギー源の“自給率100%”などと言うことはありませんし、“地政学”的側面は言うに及ばず、ホルムズ海峡封鎖による経済的影響もそれなりにあります。その為、イスラエルとアメリカによるイラク侵略直後から、中国の王毅外相などがイラク攻撃への侵略を強烈に批判すると共に、3/1から3/4という僅か3日間のうちに、ロシア、オマーン、イラン、フランス、イスラエル、サウジアラビア、UAEなどと接触し、戦乱の鎮静化を図ろうとする外交努力を重ねてきました。この戦争が大方の予想に反し、今のところ「中東全域」に広がっていないのも、こうした外交努力の賜かもしれません。
(2026/3/25 墨面 記)