彼我の最短距離である。
真の技のスピードはこの点にかかっている。単なる物理的距離の面だけでなく「攻防一体」「心・技・体」の感性を伴う技の加速度(当てるためというより、当たった後のスピード)の意。初めから手腕に力を加えないということが「攻防」一切の質を決定する。
技の極めの「受動筋力」が最大に働く。
技の威力は加速度×慣性質量(体重)
技の立体感が感受しにくいので距離感といった間合や技のタイミングをつかむ「感性」を狂わせる効果がある。
この事実は人間に「立ちすくむ」といった恐怖感を与える。
正中線上の攻撃は心身の弱点を突く最強の方法なのである。
拳尖の一点が拡大する如くみえることで相手の視野を制限する働きがある。このため自らの技の気配とともに「身体を消す」ことも大きな効果を生む。そのため防御や反撃がきわめてむずかしくなる。
正中面上での直進により、以上のような効果があるが、さらにその効果を高めるべく、相手の死角、つまり相手の視覚から「身体を消す」術(変化技)がきわめて有効となる。一切の体捌きの意義がこれにより真に生かされる。
体軸を安定化するだけでなく体軸(正中線)のブレをなくすことで技の極めが鋭くなる。
正中線(体軸)の安定性(動きのなかでは正中面に対する復元力として働く)は体力づくりに深く関係するが、動きのなかでの正中線の意識はさらに大事な空手の基本である。
この点を学ぶ意味でも形の練習は欠かせない。
以上、『武道空手の理 最終回』より抜粋
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