こんにちは
ちょっとした外出はしたものの、旅行など遠出をすることなく過ごしたゴールデンウィークでした。
今回は、ちょっと趣向を変えて、母の日を前に、ドラマ「愛の不時着」に登場した母たちに思いを寄せたいと思います。
「愛の不時着」に出てくる主な「母」は3人。
登場順に、セリの母、ダンの母、ジョンヒョクの母です。
この3人のお母さんたちを中心に、おしゃべりしてゆきます。
写真は4月下旬に撮った緋合歓(ひねむ)の花。
カーネーションの代わりに、というわけではないけれど、ハッとする美しさのある赤が好きです。
セリの母
セリにとって実の母ではないとはいえ、ちょっととらえどころがない感じ、というのが私が抱いているセリ母の印象です。
セリ母が登場するシーンをリスト化してみました。
●セリ母・登場リスト
【第1話】セリが後継者に名指しされた食事会で複雑な表情。孤食ランチでセリに電話をかけた後、セリの事故を知る。捜索現場で前夜を思い出しながら複雑な表情。
【第2話】行方不明のセリについて話す家族会議で、息子達を牽制するような存在感。
【第3話】なし
【第4話】食事の場でセリの幼少期を回想し、「セリは生きているかも」と発言。
【第5話】長男妻に「娘はいないでしょ」と言われ、怒る。
【第6話】なし
【第7話】株主総会に出席。複雑な表情。
【第8話】なし
【第9話】セリ自宅にロック解除して入り、過去を思い出す。写真立てに自分の写真があるのを見つける。
【第10話】セリの帰還を複雑な表情で迎える。セリから生きて帰ったことを謝られる。夕食の食卓につかず。
【第11話】長男セジュンから、セリが北にいたこと、次男セヒョンが邪魔したことを聞いて驚く
【第12話】セリの誕生日、セリ&次男問題を夫に伝える。セリを尋ね、過去の置き去りを責められ、苦しむ
【第13話】次男妻の役員会暴挙を阻み、夫婦で来るように伝える。
【第14話】セリの手術&意識回復に駆けつける。マンボクが仕掛けたボイスレコーダーで、セリに贖罪していたことが記録され、セリが知るところとなる。セリのスキャンダルでジョンヒョクを知り、ジョンヒョクと喫茶店で会話。次男の悪あがきを引っぱたく。
【第15話】隊員達の連行に取り乱すセリを支え、そばにいるようになる。対面調査に出向くセリに付き添い、その後の危篤を見守る。
【第16話】ジョンヒョクがセリを見守れるよう国家情報院に頼む。セリにジョンヒョクがそばにいたことを伝え、禁断線まで連れて行く。セリが推進する「事業」を後押しする発言をしたり、一緒に買い物に出掛けたり、セリのスイス行きを応援したり、心通う日々を送るようになる。
●矛盾に近い複雑な心情
「とらえどころがない」というのは第14話まで続いたと思います。
「成さぬ子」ということがあって、屈折した気持ちでいることは最初から理解できましたが、「シンデレラ」や「白雪姫」に見られるような継母によるステレオタイプな「憎悪」とか「陰湿なイジメ」はありませんでした
これが「息子溺愛」の強いママだったら、ドラマ的に分かりやすいのに何故?
セリが行方不明になったことに対して、【第2話】【第4話】【第5話】など終始複雑な表情で、実の息子達と違って喜ぶふうもなく、反対に悲嘆に暮れることもなく、複雑としかいえない仏頂面です。
かといって、「セリ押し」でもないのは【第1話】から明らかで、セリが後継者に指名されたとき、首を振って「辞退するように」という視線を送っただけでなく、意気揚々と帰るセリをわざわざ呼び止めて結構ひどいことを言っています。
でも、携帯電話の短縮「1」番に登録しているのはセリらしく、その順番からして、息子達よりセリに対する気持ちが強いのと思わず勘ぐってしまいます。
そして【第14話】で、「冬の海に置き去りにしたけど後悔して戻って来た」と言ったり、「行方不明になった時に再び会えたら母の気持ちを伝えたいと祈ったけどできなかった」と言ったりするなど、捨てたいけど捨てられない、愛したいけど愛せない、矛盾に近い不思議な心理状態の母です。
そもそも冬の海に子どもを置き去りにするのは、警察に逮捕される案件のような。。。
まあ、その辺は置いといて、本当に「複雑な」母です。
●セリ母に対比する登場人物がいるとすれば
マンボクさんかな。と思います。
南VS北
女VS男
財閥夫人VS軽蔑されやすい仕事(盗聴者)
まったく反対で結びつかないようでいて、この2人は過去に重い罪を負って、現在まで引きずっています。とはいえ、マンボクの罪は、罪というより仕事上避けられない苦渋の選択によるものでした。
しかし、過去において主役(セリ・ジョンヒョク)の人生観を変えるほどの影響を及ぼし、その罪悪感にさいなまれながらも、ドラマの過程で更生して、主役の役に立ちながら自身の再生を果たすという役割は同じです。
人生は複雑で、過ちを犯したことがあっても、やり直し、乗り越えて幸せを求めて行くことができる、そんな人間讃歌をさりげなく語ってくれているのが、セリ母であり、マンボクさんであるように思います。
セリ母には、「ドラマ『愛の不時着』に文学的な陰影と奥行きをもたらしてくれたで賞」を捧げます
ダンの母
セリ母と、ダン母と、ジョンヒョク母の3人のうち、個人的に私がいちばん好きなのがこのお方です。
強力な存在感でしたー
●ダン母・登場リスト
【第4話】経営するデパートで、ダンと買い物
【第5話】自宅にジョンヒョクを迎えて豪華な夕食をご馳走する
【第6話】美容室で「畝化粧」をしてもらい、両家の食事会へ。結婚の日取りが決まり、ゴキゲンに。
【第7話】ダンの新居選び。村の女性達を手なづける。ジョンヒョクの病室へお見舞い。ダンとドレス選び。
【第8話】新居への荷物運びでダンのことが心配になり、ジョンヒョク舎宅へ行って隊員たちと呑む。翌朝、記憶無し。
【第9話】酔っ払って帰ったダンを迎え、エレベーター係に口封じのチップを渡す。
【第10話】ダンのアルバムを見ながら弟とダンの話題をして、「破談になるならこっちから断る」と言う。
【第11話】ダンの他の男との噂についてダンに問う。「ダンの気持ちが赴くほうを応援する」と言う。
【第12話】ダンの外泊に驚き、弟に「アルさん」について調べるよう命じる。
【第13話】ダンの新居でク・スンジュンに会い、気に入る。ク・スンジュンの調査結果を聞き、弟に八つ当たり
【第14話】村の女性達と酒盛り。「ジョンヒョクの浮気」の記憶を取り戻す。酔って帰り、ダンに迎えられる。
【第15話】ジョンヒョクのことを怒って弟に伝えたとき、弟から「ク・スンジュンが北を出るらしい」と聞く。
【第16話】ダンを心配し、寄り添う。村の女性達にセリズチョイスの「限定品」を渡す。リ家に破談の申し出。占い師に見てもらい、ダンの幸せを祈りつつ、自分も楽しむ人生を送ろうとする。
ダン母の登場は重役出勤なみで、【第4話】からでしたが、その後は毎回登場して、ドラマに面白みのある躍動感を与える存在でした。
●最初は好きではなかったけれど・・・
ダン母も、他の登場人物と同じく、前半は押しの強い、ちょっと腰が引けてしまうようなキャラクターです。
そのあたりジョンヒョク母も同じように思っていたみたい【第6話】両家お食事会ではまだ抑制されていましたが、【第7話】ジョンヒョクの病室シーンでは露骨なほどイヤな顔をしていました。ジョンヒョクさんに似て、正直ね
ところが、どのあたりからでしょうか、【第11話】得体の知れない男・アルさんとの噂に心配しつつも「ダンの気持ちが赴くほうを応援する」と言った頃からかな、私たち視聴者に「あれ」と思わせます。
押しの強いイヤな人だと思っていたけれど、娘の心を大事にしているなって。
それがハッキリ伝わるのが【第14話】酔っ払って帰り、ダンに言うシーンです。
「お母さんに気を使わず幸せになりなさい」
「言うことを聞きすぎる必要はないの」
「自分の思うように生きて幸せになりなさい」
「あなたが母親の言うことを聞きすぎないか心配なの」
「私が死んだあと、あなたが不幸だったらどうしようって」
「私が間違っていたらどうしよう。そう思うと怖くてたまらないの」
このシーンで、ぐっと心を掴まれました。
字幕を見ながら写してみて、涙が出てきました。
押しが強くて苦手だと思っていたダン母。それまでの「押しの強さ」は思えば、ダンへの愛があればこそ。
娘への幸せを思って押しの強さをみせてきたけれど、「それが間違っているかもしれない」と思ったときの恐怖。
これ、人の親になったら、誰でも思うのではないでしょうか。
●ダン母に惚れるの巻
以降、ダン母の見事さには恐れ入るばかりです。
【第15話】ク・スンジュンが詐欺師と分かれば、大事な娘を引き離したくなっても不思議ではないのに、ダン母はあくまでもダンの気持ちに立って、北を離れるという報せに複雑な表情を見せます。
【第16話】悲しみの余り寝込むダンに寄り添おうとするところ
そしてやっと起きて言った「復讐したい」のひと言をしっかり受け止めた度量
村の女性達にセリの化粧品を届けたこと。セリを憎んでも無理はない立場なのに、全てを呑み込み、村の女性達を思うセリの純粋な気持ちを汲んで、使者の役割を果たした器量
なにより立派なのが、リ家に破談を伝えに言ったシーン。
あくまでも「非は我が家」というスタンスを取りながらも、リ家の不誠実な対応について責めることなく一応指摘しておきます。一枚上手(うわて)でした。さすが事業者、きちんとした立派な態度です
そこで、ク・スンジュンの存在を語ったことが、私には一番よかったと思えました。
個人的見解ですが、私、ここでダン母がク・スンジュンの存在を語ったのは、ダンを愛さなかったジョンヒョクへの面当てではなく、また、ダンがモテるのだという自慢でもなく、「名前までは出さないけど、ク・スンジュンという人物がこの世にいた」という「生きた証」を刻んだのだと思います
最後に、占い師のシーン。ダンの幸せを祈りつつも、娘だけを生きがいにするのではなく、自分自身の人生を楽しもうとする姿勢を見せたこと。この飛躍も素晴らしかった
お互いを大事にしつつも、互いに自立した精神をもっている、ステキな親子です。
(【第4話】「鼻っ柱をへし折ってきてやりなさい」「お母さんたら、心配せず私に任せて」と高慢な言葉を交わした母娘の息が合ったシーンも、最後まで来てみれば、もはや愛おしいです)
ダン母には、「母として人として素晴らしい度量で賞」を捧げます
長くなったので、続きは明日に回します。See you~