往生要集
源信(げんしん) 著
源信は奈良で生まれ比叡山で修行した日本の僧侶です。
『往生要集』は、極楽浄土へ行くための案内書として書かれました。
極楽浄土は、西にある阿弥陀仏(阿弥陀如来)の世界です。
平安時代に、極楽浄土への導きを願う浄土信仰が貴族の間で広まりました。
往生要集をもとにした地獄の様子を絵にした「絵解き」によって、日本人の地獄のイメージは形成されています。
ただ往生要集に閻魔は出てきません。
閻魔の起源は、インドの「ヤマ」にある。ヤマは最初に死んだ人間で死後の世界の王でした。
それが、日本に渡って死後の世界の神、地獄の主になったとされています。
仏教で地獄は六つの迷いの世界「六道」の1つです。
六道には地獄のほか、天、人間、阿修羅、畜生、餓鬼という迷いの世界があります。
天 |
人間 |
阿修羅/修羅 |
畜生 |
餓鬼 |
(八大)地獄 |
生きとし生けるものが亡くなると六道の中で生まれ変わる「輪廻」を繰り返します。
六道の迷いの世界から抜け出した悟り(覚り)の世界が極楽浄土で、抜け出すには念仏の修行が必要だ。
地獄には、
等活(とうかつ)地獄・黒縄(こくじょう)地獄・衆合(しゅごう)地獄・叫喚(きょうかん)地獄・大叫喚(だいきょうかん)地獄・焦熱(しょうねつ)地獄・大焦熱(だいしょうねつ)地獄・阿鼻(あび)地獄
の「八大地獄」があります。
名称 | 特徴 | 生前の罪 |
---|---|---|
等活地獄 | お互いに傷つけあい、骨だけになる。 鬼に八つ裂きにされる。 | 殺生 |
黒縄地獄 | 焼けた鉄の斧で切られる。 鉄の釜に落とされ、グツグツ煮込まれる。 | 殺生と盗み |
衆合地獄 | 焼けた鉄の獣たちに喰われる。 美しい女性が現れるが近づくと消える。 | 殺生と盗みと不倫 |
叫喚地獄 | 熱い鍋で焼かれて、釜で煮詰められる。 ドロドロの銅を口から流し込まれる。 | 殺生と盗みと不倫と飲酒 |
大叫喚地獄 | 叫喚地獄と同じだが、 苦しみは10倍だ。 | 殺生と盗みと不倫と飲酒と嘘つき |
焦熱地獄 | 灼熱の棒で叩かれ肉団子にされる。 鉄の串に刺されて炎で焼かれる。 | 殺生と盗みと不倫と飲酒と嘘つきと 裏切り |
大焦熱地獄 | 焦熱地獄と同じだが、 苦しみは10倍だ。 | 殺生と盗みと不倫と飲酒と嘘つきと 裏切りと戒律を守る尼僧をレイプ |
阿鼻地獄 | すべての苦しみが集結する。 鉄の鬼や大蛇や虫500億匹に攻められる。 苦しみは大焦熱地獄の1000倍だ。 | 殺生と盗みと不倫と飲酒と嘘つきと 裏切りと戒律を守る尼僧のレイプと 強奪・親殺し・大乗仏教をそしる |
これらの地獄は下に行くほど苦しみが大きくなります。
もっとも恐ろしいのが阿鼻地獄で、他の七地獄の一千倍以上の苦しみがあります。
極楽浄土へは、念仏「南無 阿弥陀仏」と言うと行けるようになります。
極楽浄土では、「十楽」(10の喜び)を得られます。
1.聖衆来迎(しょうじゅらいごう)の楽・・・臨終のときに、聖衆さま(阿弥陀仏さま・観音菩薩さま・勢至菩薩さまなど多くの菩薩さまたち)が迎えにきて極楽浄土へ連れて行ってくださる喜びです。
2.蓮華初開の楽・・・極楽浄土に生まれるときに、清らかな蓮華の花の中から生まれる喜びです。
3.身相神通の楽・・・美しい姿に生まれて神通力を得る喜びです。
4.五妙境界の楽・・・五感(目・耳・鼻・口・肌)を通して入ってくる感覚がすべて気持ちいい喜びです。
5.快楽無退の楽・・・快楽がずっと続き、無くならない喜びです。
6.引接結縁(いんじょうけちえん)の楽・・・家族や友人を極楽浄土に生まれされる力が得られる喜びです。
7.聖衆倶会(しょうじゅくえ)の楽・・・聖衆さまと同じ場所にいられる喜びです。
8.見仏聞法の楽・・・阿弥陀仏さまに直接会って、教えを聞く喜びです。
9.随心供仏の楽・・・心のままに素直に仏さまを供養できる喜びです。
10.増進仏道の楽・・・悟り(覚り)を増進させて解脱する喜びです。
極楽浄土に着くと蓮華の花びらが開き、往生した喜びに包まれます。
空からは花びらが降り、孔雀や白鳥が歓喜の歌を唄い、菩薩さまは音楽を奏でます。
美しい景色や音楽のなか、直接、阿弥陀如来から教えを聞くことができます。