足音裁判:子供は走らないようにしつけなさい! | マンション管理士がゆく 

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マンション管理士・行政書士 西脇マンション管理士事務所

平成19年10月3日にマンション騒音に関する裁判の判決がありました。


上階の住人の子供の足音がうるさいと訴えた裁判で、下の階の原告が勝訴し、子供の父親への損害賠償請求が認められたのです。


判決文の中で裁判長は、「夜間、深夜は、長男をしつけるなど住まい方を工夫し、誠意ある対応を行うのが当然」と述べています。


集合住宅でも「住まい方」、とくに「子供のしつけ」の不備に言及して、損害賠償命令を下したのです。子供を持つ親を不安に陥れるような前代未聞の判決でした。


マンションは、わずか15cmほどの薄っぺらなコンクリート板1枚で仕切られただけの住まいです。


壁の場合はこれでも何とか暮らせますが、床の場合にはそうはいきません。


判決のあったマンションは昭和62年に建てられた当時の豪華マンションでしたが、それでも床の厚みは15cmでした。


このような床構造では子供の走り回る音は、かなりの大きさで下に響きます。


しかも重量床衝撃音と呼ばれるこの子供の走り回りの音は、畳の部屋でも、分厚いカーペットを敷いても、ほとんど低減効果がありません。


しかし、この裁判で判決が本当に言いたかったのは、「夜間、深夜は、長男をしつけるなど住まい方を工夫し」の部分ではなく、むしろ、その後に続く部分、「誠意ある対応を行うのが当然」にあるのではないかと思えます。


判決理由の中で裁判長は次のように述べています。


「被告は、原告から再三にわたり注意や要請を受けたにもかかわらず、一向に改善する意思を見せなかった。


これは、本件で最も問題とされるべきある。夜間、深夜は長男をしつける住まい方を工夫し、誠意ある対応を行うのが当然である。


被告の住まい方や対応の不誠実さを考慮すると、騒音は受忍限度を超えていたと言わざるをえない」


仮に、誠意の見える改善の努力がいくばくかでも示されていたなら、音の大きさにかかわらず、判決は異なったものになったかもしれません。