こんにちは!『西東京市 地域猫の会』です。
春から始まった猫達の出産ですが、少し前から当会にも仔猫の保護の依頼が入ってくるようになりました。
当会は乳飲み子に対応できるメンバーがいないため、離乳前の仔猫の保護はお断りしています。
もし、離乳前の仔猫のご相談があれば、離乳(生後1~1.5ヶ月位)するまで様子を見てから保護(母猫は人馴れしていなければTNR)するようにしています。
それは何故なのか?
離乳前の仔猫を人の手で育てることはとても難しいからです。
先日、悲しい出来事がありました。
とある若い女性の方が、まだ生まれたばかりの胎盤がついた状態の3匹の仔猫を保護しました。
一般の方は立ち入れない建物と建物の隙間の草むらから仔猫の鳴き声がしたのです。母猫は人の気配がないその場所で子供を産むことを選んだのでしょう。
その方は、仔猫を助けるために必死で警備員さんに事情を説明し、立ち入らせてもらい、鳴き声を頼りに仔猫をみつけ、バケツにタオルと産まれたばかりの仔猫を入れて動物病院へ連れて行きました。
動物病院では少し低体温になっていたため、即席湯たんぽで仔猫達を保温し、胎盤の処理を行い、ミルクを飲ませてくれました。
その後、動物病院の先生から連絡が入り、当会が駆け付けます。
仔猫たちには保温が必要だったり、3時間おきの授乳や排泄を促してあげたり、それでも免疫力の弱い仔猫は助からないことも多々あります。
それほどに乳飲み子は難しく、母猫の存在が必要なのです。
これほどまでに小さいと助からない可能性もあることを伝え、仔猫達を受け取りました。
その女性はボロボロと涙を流していました。
当会では乳飲み子の受け入れが出来ない為、市外の乳飲み子を受け入れられる経験豊富なミルクボランティアさんに3匹を託しました。
お母さんの初乳も飲んでいないであろう産まれたばかりの小さな命達。
深夜にも関わらず保護預かりを引き受けて下さったミルボラさんは、カテーテル授乳を行ったりと、寝ずのお世話をして下さいましたが、残念ながら翌日の夜までにみんなお空に逝ってしまいました。
ミルボラさんのところに来た頃には手足が紫色に変色するチアノーゼが始まっていました。
2匹が先にお空に旅立ち、一番元気だった子も数時間後には2匹を追うように旅立ちました。
離乳前の仔猫を育てるのは本当に大変です。
経験と知識と体力と時間がなければできませんし、仔猫自身の体力、免疫力も必要です。
本案件は、乳飲み子を見つけた現場には一見すると母猫はいないようだったとのことでしたが、母猫は人の気配を感じて一時的に身を隠していたと思われます。
仔猫を失った母猫は、誰にも飲んでもらえないにパンパンに張ったお乳のまま、産み落としたばかりの仔猫を必死で探していることでしょう。
もし小さな仔猫を見つけたらどうするべきか。
その仔猫達は母猫が大切に育てている最中である可能性があります。
人間が保護しても育てることは難しく、また育てられる人も少ないです。病院に連れて行っても生きられるとは限りません。
母猫の母乳に勝る免疫力はありませんし、母猫は子育ての天才です。
小さな仔猫を見つけたら、慌てて保護をせずに静かに離れた場所から様子を伺い、母猫がいるかどうかを確認してください。
母猫がいれば保護せずに、離乳する頃までそっと見守ります。
見守っていくのが難しいようなら、母猫と子猫の情報をお近くのボランティア団体にお伝えしておくのもよいかもしれません。
そして離乳(生後1.5ヶ月位)をした頃に、母猫と仔猫を一緒に保護します。
当会では、仔猫の保護依頼の際は、必ず、仔猫の保護+母猫の避妊手術はセットです。
不幸な命が増えないようにしっかりと蛇口を閉めること、そして、母猫にもう二度と可愛い我が子を奪われる切ない想いをさせない為にも、母猫の避妊手術は必須なのです。
仔猫を助けようと無我夢中だった保護主さん、動物病院の先生、当会、最後のバトンを受け取ってくださったミルボラさん。
今回の案件に関わった人には「善意」しかありません。
ただその結果は、誰一人喜ばない、悲しい結果となってしまいました。
子育て中の母猫から仔猫を奪っても、誰も幸せにはなれません。
仔猫は生きられず、仔猫を奪われた母親は人間と違い搾乳機もありません。誰も飲んでくれないお乳が苦しい中、必死に仔猫を探しています。
探して探して…見つからなくて、
そしてまた妊娠して出産を繰り返し、子宮はボロボロになります。
人間が手を差し伸べたことにより、逆にその小さな命を奪うことに繋がってしまいます。
もし、外で離乳前の仔猫を見つけたら、この記事のことを思い出してください。
「助けたい!」そう思って下さった、その優しさがもう一歩前に進むこと、小さな命を救うためにも知っていただきたいと思います。
悲しいことに、仔猫だけ保護して救った!助けた!良いことをした!と思っている方もいらっしゃいます。
例え、保護した子猫の命が繋がったとしても、その先に、切ない想いの母猫がいる事を忘れないで下さい。
仔猫を保護するのであれば、母猫の避妊手術も必ずセットでなくてはなりません。
二度と悲しい想いを母猫が味合わないように、せめてもの優しさで避妊手術をしてあげて下さい。
西東京市地域猫の会の『ペットのおうち』
当会の猫ちゃん達に会える保護猫カフェ