今日は先日までの春の到来を思わせる陽気とは打って変り、息も白く凍る寒い朝を迎えました。
一足先に衣替えをと準備されていた方には、足下すくわれた気分でしょう。

 

 

春へ向かう装いと言えば、卒業を迎える羽織袴、
そして、少々語弊があるかもしれませんが、今ではマスクもその一つになりました。
これから花粉アレルギーをお持ちの方には本当につらい時期になります。

 

 


この花粉症、
鼻やくしゃみ、目などの不快症状に加え、私たちの職場で良く耳にするのは、
「味がわからない」、「料理が美味しくない」などの訴えです。

 

口の中、特に味覚には変化がないように思えるのですが、不思議なことに”味”がしないという感覚。
これより先、この現象について参考文献を引用させてもらいながら話を続けます。

 

 

”料理”の味や美味しいという情報は、
口の中で咀嚼して感じる食感、味覚や嗅覚、温度や視覚、聴覚などが複合的に加わる情動性に富む感覚によってもたらされるといわれています。

 

 

特に味とにおいの感覚は化学物質が刺激のトリガーになることから化学感覚とも称され、
この2つの融合感覚は過去の記憶も加わり、非常に多彩な働きをすることが知られています。

 

よく知られイメージしやすいのが
『風味』。

 

”・・風味の料理”と聞いただけでおよそその味が連想できるのは、においに対する味覚の食経験か来るものです。
食物の味とにおいの組み合わせを学習し、記憶しているからに他なりません。
面白いのが、この両感覚間で相互的に促進作用があることです。

 

このことについて、Daltonという人が興味深い実験をしました。
ある異なる味を有する化学物質をおのお口に含み、それらによってにおいの感受性が変化するかをみた研究です。
指標としたにおい成分はベンズアルデヒドという化学物質でチェリーの香りがします。
口にふくむ化学物質は、サッカリン(甘味物質)とグルタミン酸ナトリウム(いわゆる”うま味”成分と呼ばれるもの)。
結果は下図のグラフのとおりで、サッカリンを口に含んでいた場合において一番においの感受性に富んでいました。
この結果はチェリーのもっている甘みを経験的に知っていたからに他なりません。

 

 

したがって、花粉症により
鼻が出る、つまることにより嗅覚の感受性が低下すると、”風味”がうまく形成されず、
元来もつべき料理の’味”がしない、”美味しくない”といった感覚が生まれることになります。

 

いずれにしても、つらいことです・・・。


■参考文献
森本 俊文ほか:新・口腔の生理から?を解く、デンタルダイヤモンド社、東京、2012.

 


歯科医ランキング