先日、奥歯のかぶせ(金属冠)をセットする予定で予約をとられていた患者さんより電話が入る。

 

「今日そちらに参ろうと思うのですが、社内で”銀歯は良くないゾ”って話になりまして…」


「本当に大丈夫でしょうか?」

 

応対していた受付から私の方へ申し送りがあり、電話をかわる。

 

「ひょっとして、週刊誌からの情報ですか(私)?」

 

「そうです(患者さん)」


との返事。

来院されてから、良く説明することと相成った。

 

(やっぱり来たか…独り言)

 


先達て、週刊ポスト(7/8号 小学館)に掲載された

「やってはいけない歯科治療」という特集記事の中で触れられていた銀歯に関する問い合わせであった。

 

 

現在、社会保険における歯科診療において認められている歯の修復金属材料には、銀合金、金銀パラジウム合金、ニッケルクロム合金、14Kなどがある。
”銀歯”とは、これら金属の見た目からくる総称名である。

 

この特集が20年程前に出たのであれば、それなりに意味があり、また、”削る”治療は悪い、だから悪くならないために”予防・ケア”に力を入れましょうと謳う結論だったら、きっと”神”記事になっていただろう。

 

銀歯に関する記事中には事実に該当する事象は勿論あるものの、すでに過去となった概念とこれを受ける形でのミスリード、疑問符の付く文言などがあり、件のセンセーショナルな見出しに帰結するロジックはあまりにお粗末といわざる得ないというのが素直な感想。

 


雑誌が悪いと指摘しているポイントは、金属の修復では歯を削る量(再治療の数)が多くなる、寿命が短いの2点。
削るに関しては、”予防拡大”がキーワードのようだが、時代錯誤も甚だしい。
(各センテンスの末に、一応さらりと”過去”と触れられてはいるが)

 

 

 

金属にしろ、(記事中で紹介されている)レジンにしろ、修復治療(削る治療)の寿命には、様々なリスクが複合的に関与する。


単純に材料だけをとりあげて金属だけが寿命が短いなどということは決していえない。

 

*上記画像は、ODPHP  health gov.(http://web.health.gov)
II. MATERIALS, METHODS, AND INDICATIONS FOR THE RESTORATION OF POSTERIOR TEETH より引用改変

 

 

 

ちなみに、

私の口の中には治療後40年を経て何のトラブルもなく経過する”銀歯”が2歯ある。