省エネ,節電の呼びかけにより,涼を得る手段の一つとして『打ち水』がみなおされている。

この『打ち水』は,江戸初期から庶民生活に根付いたとされ,「涼をとる」,「砂埃を抑える」といった生活上の知恵以外に「お客様を気持ちよくお迎えする」という"おもてなしの心"を意味する習慣でもあったとされる。この原点は古より茶の湯(茶道)といわれる。

茶道における『打ち水』は、浄化としての「清め」の意味のほか、亭主が茶会の準備が整った事を知らせる「しるし」の意も含まれているそうである。
かの千利休が茶道の基本心得としてまとめた七即の中の第四即(『夏は涼しく冬暖かに』)は,『打ち水』と『おもてなし』との関係を示す例としてよく取り上げられる。

茶道の『おもてなし』には,姿形として目に見える「モノ」と決して見えない心を指し示す「コト」があるとされる。
大切な客を迎える際,個性を考えた掛け軸,お香,菓子など体で感じる具体的な「モノ」と,相手を思いやる言葉などの心を示す「コト」がそれとされる。

この「モノ」,「コト」を併せ説いた利休七即は茶道心得の基本であるとともに,『一期一会』を具現化するための礎ともいわれている。
(その3につづく)
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