本棚で探しものをしていて、このレトロな本を思い出し、久々に開いてみた。
ページ数は、86ページ。定価・45銭。大正5年11月26日発行。(複製は30年前です)
『お伽説教』
少年の巻 15話 少女の巻 15話
たとえば・・・少年の巻の12話 『牢屋の花』
~さて其頃の仏蘭西の皇帝は、かの有名な大ナポレオンでありました。彼れは、たう時、あまたのともだちをもっておりましたが、同時にあまたの仇敵をももってをりました。彼れは自分のしたことに賛成しなかつた澤山な人々を牢屋へ投入れて、其人々の苦しむにまかせ、また時によると死ぬるにまかせたのであります。~
と、こんな感じです。その牢屋に入れられた人の中にシャルコーという人がありました。たいそう賢い人で学者さんだったそうです。そんなシャルコーさんがある日牢屋で小さなみどりの葉っぱをみつけます。水などやるうちに可愛い花も咲かせます。
その花をかわいがり、愛しむ様子をみた人が、牢屋の番人の妻にそのことをはなします。するとその話が人からひとへと伝わり、とうとう皇帝のお妃の耳に入りました。
~おきさきは、かの小さな花を其のやうに愛することの能きる人は必ず悪人でないに違ひない、とおっしゃって皇帝のナポレオンにあの人を牢屋から出してお上げなさいとおすすめになりました。
やがてシャルコーはゆるされました。で彼れは喜んで家に帰ったでせうか?さうです。では彼れはただひとりかえったでせうか、それとも、件の花をつれてかえったでせうか?さうです、かれはそれを持ってかえって、我家の庭に植えつけ、ますます愛してやりました。
其の花は彼れの教師でありました。
こんなお話です。当時の子どもたちはどんなふうに聞き、感じていたのでしょうか?タイムスリップしたいです![]()
