困難を抱える女性への支援について | 西村くにこ オフィシャルブログ Powered by Ameba

困難を抱える女性への支援について

神奈川県議会 予算委員会において

「困難を抱える女性への支援について」質疑を行いました。以下、ご報告申し上げます。


 

質問1 性犯罪・性暴力被害者に対するワンストップ支援センター「かならいん」について

私は、昨年6月の議会でも、性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援センター「かならいん」における証拠採取等の仕組みづくりについて取り上げた。なぜなら、性犯罪の被害者が、被害直後に警察に相談し、被害届を出すのは大変勇気のいる、ハードルの高いことである一方、被害直後でなければ、重要な証拠は失われてしまうからだ。知事からは「被害者が、後に被害届を出す意向を示した場合に備え、支援の初期段階で、予め証拠を採取し、保管しておく仕組みを構築することが重要」との見解が示された。

ただし、この証拠採取の仕組みづくりを構築するにあっては、様々な課題がある。対応できる医療従事者「性暴力被害者支援看護職SANE(セイン)」の育成もその一つだ。

SANE(Sexual Assault Nurse Examiner)とは、心身に傷を負った性暴力被害者に適切なケアを提供するための訓練を受けた女性の看護師を指し、被害者の回復を早めることに貢献するとともに、被害者の意思に応じて、告訴など法的手続きに備え、本人に説明し同意を得ながら証拠を採取し、記録を残すことも行う。

私のこれまでの提言を交えた質問を受けて、今年度、県ではSANE育成の予算を計上していた。しかし、予算の質疑で、今年度は新型コロナウイルスの感染拡大により、予算の活用が見送られていたことが明らかとなった。しかし、来年度予算に再び計上され、SANE養成が試みられることも分かった。

内閣府男女共同参画局の調査によると、全国の性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターに寄せられた令和2年4~9月の累計相談件数は前年同期の約1.2倍。コロナ下にあっても、性犯罪被害者の証拠採取の取り組みを、人材育成、設備整備ともに、速やかに進めるよう要望した。

 

質問2 望まない妊娠について

児童虐待のハイリスクとなる「望まない妊娠」。県ではこれまでも電話相談を中心に対策に取り組んできた。また、今年度は若い世代に向けた「LINEを活用した相談を一時的に相談した結果、10代の相談者からの利用も見られた。質疑の中で令和3年度は通年でLINE相談を実施すること。また、緊急性によっては直接会い、支援につなぐためのアウトリーチ支援についても検討されていることが示された

「望まない妊娠」や性被害が増えている可能性があるとして、厚生労働省は日本産婦人科医会の協力を得て、人工妊娠中絶の状況などを調べる初の全国調査を行うとの報道もあった。相談事業の重要性もさることながら、相談を受けた次に、どこに繋ぐのかが大きな課題である。今、予期せぬ妊娠などの事情を抱えた若い妊婦が、支援を受けながら滞在し、出産できる施設も、他県では設置されているとの報道もあったことから、本県においても、具体的で切れ目のない支援が展開されるよう求めた。

 

質問3 若年女性への支援について

コロナ禍による外出自粛やネットカフェ等の休業は、虐待や貧困等により、自宅にいること自体が苦痛であるという若年女性の居場所をも奪ってしまった。彼女たちは家出やJKビジネス被害など、性暴力や性被害等に遭遇する確率が高くなっていると言えないだろうか。

県では、そうした様々な困難を抱えた若年女性に対し、令和2年度「若年被害女性等支援モデル事業」を実施している。

しかし、来年度、同事業の予算は計上されていない。早い話、今年度は国の予算で実施できる「モデル事業」だけれども、「予算の半分を県が負担する来年度のスキームではできません」ということだ。

コロナ禍、様々な予算の縮小は致し方ないところがある。しかし、同事業については、「県が撤退した」ということになれば、その後、県内自治体も取り組まなくなってしまう。また、質疑の中では「今年度事業で様々なデータがわかったから、これを県内自治体とも共有していく」という答弁があった。今年度の事業といっても、令和2年10月から令和3年2月までのデータに過ぎない。コロナ禍の5か月で、いったい何がわかったというのだろう。

私からは、事業の再実施を求めた。

 

また、ここまでの質疑については、性犯罪については「くらし安全防災局」。望まない妊娠は「健康医療局」。若年被害女性支援は「福祉こども未来局」と他部局にまたがる。しかし、これらの支援を求めて相談される方は同一である可能性、つまり、人物の重なりが少なからずあるであろうことは容易に推計できる。俗に言われる「縦割り」を廃し、最もマッチする支援策が相談者に届くようにしなければならない。

具体的には、それぞれの事業が展開していくLINE相談で、プッシュ通知等を活用して、横断的に情報が届くような試みを柔軟に活用するよう求めた。

しかし、なによりも相談で終わらせない体制が必要だ。問題を解決し、困難を抱える女性が自立できるよう支える、関係機関(婦人相談所、児童相談所、福祉事務所、警察、学校、DVセンター、かならいん、婦人保護施設、医療機関、自治体、民間団体等々)の連携強化を求めた。

 

質問4 不育症について

このほど、不妊治療の保険適用を見据えた助成制度の拡充が図られる。これには、初めて不育症についての助成も盛り込まれている。

県議会に初当選した2011年。初めての本会議での質問で、不育症への支援を取り上げた。知事からは、検査、治療ができる医療機関の情報を提供するとともに、相談窓口を設置するとの答弁があり、現在の不妊・不育専門相談センターに繋がっている。あれから10年が経過したが、不育症はまだまだ一般的には知られていない。

妊娠はしても、流産、死産や早期新生児死亡を繰り返して、つらい思いをしている不育症の方は多い。しかし、検査を受け、適切な治療に繋がれば、出産までたどり着く確率は相当高くなるという。

県は今後、不育症検査費助成事業を実施し、治療につながる人を増やしたいと考えている。また、県内にはこの制度に先行して、検査費用を含む治療費の助成を行っている自治体もある。

私からは、検査費助成の制度化はもちろんのこと、治療につながる医療機関情報の提供や治療費の助成についても検討するよう求めた。

また、今後は流産・死産の悲しみや、治療がうまくいかなかったときの喪失感を抱える不妊症・不育症の患者さんを心理面で支える「グリーフケア」の充実や里親制度や養子縁組といった多様な選択肢についても当事者の方に丁寧に伝わるような取り組みの必要性を訴えた。

知事からは、経済的、身体的、精神的負担が伴う不妊症・不育症治療への対応の拡充が決意とともに語られた。