共生社会の実現を目指して 開かれた社会教育施設を | 西村くにこ オフィシャルブログ Powered by Ameba

共生社会の実現を目指して 開かれた社会教育施設を

共生社会の実現に向けた、社会教育施設における障がい児者への取組について質問しました。内容は、以下の通りです。


美術館や博物館などの社会教育施設では、利用者は他の方の迷惑にならないよう、静かに鑑賞することが一般的とされています。

その中でも、特に美術館においては、展覧会は静かに鑑賞する、という印象が強いように感じますが、先日、「美術館でおしゃべりOKの日」とい新聞記事を目にしました。

記事では、会話しながら自由に作品を鑑賞できる日を設けたり、親子が周りに気兼ねなく観覧できるいくつかの美術館が紹介され、そのなかには県立近代美術館葉山館の名前ありました。

これまで、小さな子どもを持つご家庭では、親が子どもに美術を鑑賞させたい、あるいは親自身が美術鑑賞をしたいと思っても、他の観覧者への遠慮などから子ども連れでの利用を控えることが多かったのではないかと思います。

この事例と同じように、障がいのある児童の保護者や、児童の引率者も、美術館や博物館、図書館の利用を躊躇しているようなことがあれば、県民の理解を促しながら、誰もが楽しめる県立教育施設にしていかなければなりません。特別支援学校の生徒たちの課外授業の場として、美術館や博物館がもっと活用されるべきですし、そのためには、障がいの特性を踏まえた合理的配慮が必要です。

先日、我が会派の有志でiPS網膜医療再生に取り組んでいる神戸アイセンターに伺い、視力や視野などの視機能を改善するロービジョンケアについて学んでまいりました。

同センターのエントランスでは、雑誌や書籍が備えられ、視覚障害のある方が、自由に閲覧していました。閲覧をサポートしているのは「Oton Glass」というIT機器です。


眼鏡にセットされたカメラが、目の前にある文字を捉え、人工知能が分析し、文字を音声に変換します。手を使わずに起動しますから、視覚障がい者だけでなく、雑誌やパンフレットを持つことが困難な肢体不自由児者にも活用していただけるでしょう。

また、社会福祉法人日本点字図書館はこのほど、立体化した絵画などを展示する「ふれる博物館」を都内に開設しました。現在、ダ・ヴィンチ展が開催され、イタリアのアンテロス美術館が作成した石膏像のモナ・リザが展示されておりますが、例えば、本県でも、3Dプリンターなどを活用し「立体的な絵画」に触れる体験ができれば、障がいのある、なしに関わらず、子どもたちの興味をそそる展示企画になるでしょう。


ちなみに「ふれる博物館」では、すべての展示品に音声ガイドが付いていて、それらを収録したCDもお土産として持ち帰ることができると伺いましたが、視覚障がい者だけでなく、文字での認識が困難なディスレクシアなどの学習障がい児者にとって、持ち帰れる「音声解説」になると感じました。

県内でも、4月に再開館した歴史博物館において、「ポケット学芸員」という展示ガイドアプリを導入し、スマートフォンを活用して、展示品の文字・音声・画像で閲覧・視聴できるようになったと聞いています。「ポケット学芸員」は障がい児者を対象に企画されたものではないということですが、今後は、障がい児者の利用についても検証し、改良・拡充していただきたいと思います。

本県は、共生社会の実現を目指し、平成28年10月に「ともに生きる社会 かながわ憲章」を定め、その中では、「障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や差別も排除します」と謳っています。県立の社会教育施設においても、障がい児者が気軽に利用でき、障がいがある、なしに関わらずともに楽しめるようにしていくことが重要であると考えます。

 

そこで、教育長に伺います。

障がい児者が、県立の美術館や博物館、図書館を利用しやすくするために、どのような取組を行っているのか、また、今後どのように取組を充実させていくのか教育長のご所見を伺います。



教育長答弁要旨


県民の誰もが、生活の中で、価値ある文化財や素晴らしい絵画などに親しむことができる場を提供していくことは、県立の社会教育施設の大きな役割です。


  例えば、博物館では、土器や化石、動物のはく製などに直接触れることができる展示や、また、図書館では、司書が、視覚に障がいのある利用者と対面して朗読するなどの取組を行っています。 

一方で、社会教育施設の中には、金沢文庫のように国宝等、直接触れることができない作品を中心に展示している施設もあります。

また、静謐な環境の下での鑑賞等を望まれる利用者もおり、こうしたことを考慮しつつ、障がいのある方の利用を促進していく必要があります。


そこで、歴史博物館で導入した、展示物の解説などをイヤホンで聞くことができるスマートフォンアプリを、弱視など視覚障がいのある方にもご利用いただくために、学芸員がより詳しく展示物を解説するなどの工夫、改善を検討していきます。                     


また、博物館において、特別支援学校の児童・生徒も、のびのびと鑑賞できるよう、訪れた人全てが、自由に会話しながら、展示物を鑑賞できる日を、仮称ですが、オープン・コミュニケーション・デーとして設定することや、近代美術館で、利用者が共に鑑賞し、語り合うワークショップの開催なども検討したいと考えています。

今後も、障がいのある方が、より一層、県立の社会教育施設を気軽にご利用いただけるよう、サービスの改善や、利用者相互の理解促進を図るなど、共生社会の実現に向けた取組を充実してまいります。

  答弁は、以上でございます。