おはようございます。
今日もご覧いただきまして、ありがとうございます。
今日は、私自身のことを少しお話しします。
プロフィールにもありますように、私は地元の学校を卒業後、地方銀行に入行しました。
入行すると、同期全員参加で泊まりの研修があり、銀行のことや、ビジネスマナー、お札の勘定の方法など、いろいろなことを教えていただきます。
やるべきことを教わり、おおやけスイッチ全開で配属された支店での仕事に就きました。
この最初の就職で、私はとても大事なことに気がつくのです。
私は為替の担当になりました。
手形取引や振り込みを扱う部署で、手書きの振り込み用紙の内容を端末に打ち込んだり、回ってきた手形の確認作業が主な仕事でした。
銀行は午後3時に店舗を閉めます。
その後、その日のすべての数字の入りと出を計算し、同じであれば問題なし、無事業務を終了できます。
もしこの数字が合わないと、一斉にすべての部署が、今日扱った内容の見直しをして間違いを見つけ出すまで業務を終えることができません。
入行からしばらく経ち、一人で仕事を任せてもらえるようになった頃から、私のミスによって数字が合わないことがたびたびありまして。
集計が合わないと
「まず西村のゴミ箱から捜せ」
とまで言われるようになりました。
全くのお荷物です。
本人はいたって真剣にやっているのです。必死です。でも、向いていないとは恐ろしいもので、頑張っても(多分、頑張り方も間違っているんでしょうけれど)、どうしてもミスが出てしまいます。
困りました。
働くことには意欲があるのに、全く向いていない仕事に就いてしまった。
やり方は自由に工夫していいから、この時間内にこれだけのことを終えてください。であれば大好物なのですが、お金を扱う銀行に、そのようなことが求められる仕事は皆無です。
だんだん申し訳なくなってきて、早々に辞めようと思ったのですけれど、私の配属された支店は、これから出世していく人が支店長として配属される店だったようで、自分が支店長の時に退職者が出ることも、査定上マイナス評価になるとの噂が。
私が銀行にいた1年10ヶ月の間に、支店長が3人か4人変わったと記憶しているのですが、その誰もが面談で退職希望を伝えても、もう少し頑張ってください、と取り合っていただけませんでした。
最後の支店長が、「辞めたいと思っている人は、僕が支店長の間に辞めていいですよ」とおっしゃってくださって、私と同じ時期に4人が銀行を去りました。
さて、私は本業で役に立てているとは言い難いものの、腐っていたわけではありません。
働いてお金をいただくこと。その日に行ってやるべきことがあること。
それ自体にはワクワクしていたのです。おおやけスイッチ、入ってますから。
どうせ向いていないし、辞めさせてももらえないし、って腐るなんて勿体無い。
居ていいですよ、お給料も払いますよ、って言ってくださっているのです。
とにかくやるべきことは、なんでも自分なりに工夫してやってみました。
そうしましたら、認めていただけたことがあったのです!
それは、いわゆる「雑用」です。
会議があるからこの書類を束ねてホチキスで止め、封筒に入れてください、という作業。
20枚ほどある書類をどのように並べて、書類を動かした方が早いのか、そのまわりを人間が動いた方が早いのか、ホチキスはどのくらいの位置に止めると中の書類の文字に影響なく、しっかり止められるのか、などなど、
どのようにしたら、早く、確実に、美しく、セットできるのかを考えて実行するのが楽しくてたまりませんでした。
やってみてわかったのですが、雑用は、私にとって素敵なプロジェクトでした。
方法や手段を自分なりに考える余地があるものは、私にとって…楽しい。
若手が三人ほど集められてこの作業をしたのですが、
これ、こう並べません? こちらからあちら側に動いて、ここでホチキスして封筒、の方がやりやすいですよね。
と、いつもダメダメな人間が急に仕切り出して、喜んで書類を束ねている。
もう1つの大好きな「雑用」は、お茶汲みです。
個室にご案内するお客様用に緑茶が買ってあって、お茶を入れてお出しする役割。
主にその年に入行した女性行員が担当します。
「西村さん、お茶入れてください」
私のお茶出しプロジェクトが始動します。
いいお茶っ葉なので、沸騰してから少し冷ましたお湯でお茶を入れるのですが、
冬は少し濃いめに、夏は少し薄めに出して、お湯で温めた茶碗に注ぎます。
そして、個室の扉の前に立ち、まずは耳をそばだてて、中の様子を伺うのです。
わっはっは、と明るい笑い声が聞こえてくるなど、前向きな話をされに来たんだな、と感じ取れるときには、少し大きめで軽やかなノックを。
そばだてても聞こえないくらいに静かな場合は、ゆっくりと小さめのノックをします。
銀行にやって来て、個室に通されるような用事は、
とても嬉しいお話か、かなり後ろ向きなお話か、大きなお金が動く時、が主です。
大きな融資を断られる、会社をたたむなどの内容で来店されているときに、大きな明るい声で「失礼します!」とノックされたら、私だったらピリッと反応してしまうと思うので。
そして、ノックの後すぐに扉を開けてはいけません。
社外秘の書類を広げていらっしゃるかもしれませんし、人が入ってくるんだな、と中のお客様が認識できるくらいの間を取ってから、静かに入室します。
扉を開けて、お客様と目があうような場合は、「いらっしゃいませ」とお声をかけますが、お話を続けていらっしゃる場合は、小さく黙礼するにとどめます。
お話の邪魔になってはいけません。
そして、資料などで埋まったテーブルの上を確認し、熱いお茶を置いても邪魔にならなさそうなスペースを見つけ、そっとお出しするのです。
出ていくときも、「ありがとう」などとお声をかけられれば「失礼いたします」などと短くお伝えします。
お話しに集中されているようであれば、黙礼して、できるだけ音を立てないようにそっと扉を閉める。
そして、少しの間はもう一度、扉に耳を近づけて、中の様子に変化がないかを確認し、「わっ!」とか、「熱っ」などのお声が万一聞こえて来たら、すぐに入室し、拭くものをお出しできるように。
変化がなければ自分の業務に戻り、任務完了。
「お茶が美味しいからもう一杯入れて欲しいと仰っているよ」
と、言われたときには、やっほー!!! です。
お仕事の邪魔をせず、お茶を味わうひと時もご提供できたなんて最高です !
大袈裟でしょ、と、お思いでしょうか。
私にとって、お客様へのお茶出しは大事なプロジェクト。
その所作に万一失礼なことがあれば、大袈裟でなく銀行の印象に関わる可能性がある、と、当時の私は思っていました。
何かしらの用事があって、我が支店を訪ねてくださったお客様に、行員として出来る事、を突き詰めていくと、私の場合はこういう行動になってしまうのです。
お客様にお茶を出すという「やるべきこと」が明確で、その出し方に細かな決まりはないから自由に工夫して良い。
こういう発注、大好物なんだな、私。
どんどん自分で想像して、おおやけの役割を突き詰めていく。
結果、いいねぇ、と仰っていただける。
1つづつ、自分の考えや行動にいただくOKが増えていく喜び。
「西村いいねスタンプ」がまた1つ押していただけた喜び。
これを少しずつ貯めていくことで、自己肯定が出来るようになっていきます。
で、これがですね、
神経を使わなければならないお客様が少なくない銀行では、案外重宝されまして、
いっ時、お茶出しは西村で、と、指名されるようになりました。
お茶に限らず、ちょっと書類持って来て、とか、本当にちょっとしたことなのですが、大事なお客様の目に触れるところでの振る舞いに安心ができる、ということは、
お役に立てることなのだなぁ。
銀行で働いているのに数字は苦手、な、西村のままですよ。
それなのに、この部分では必要としていただける。
つまりです。
私が何をするとお役に立てるのか、必要としていただけるのか、
は、私以外の方たちが決めてくれる、ということなのです。
《お役に立てない》
・数字を扱うこと → ミス多いですよ
・手順が決められその通りにやらなければならないこと
→ 間違えますよね
《お役に立てる》
・ゴールが示され 方法は自分で工夫できること
→ 早くて綺麗にやってくれてありがとう
・神経を使うお客様の前に出しても気遣いができるるか
→ ご指名いただけた
なんとなくでもわかっていただけるでしょうか。
就職したけれど向いていない、と感じる。
よくあることかもしれません。
そこで、失敗したとか、間違えた、などと後ろを向く必要はないと思うのです。
とてもたくさんの仕事の種類がある中で、やりたいことで必要とされもする仕事を最初から選べる方が、奇跡に近いのですから。
すぐに辞めて、その奇跡を探して転々とするのもひとつの方法でしょうけれど、その前にやれることがあるはずです。
今いる会社であなたに「やってください」と言われたことは全部、とにかく一生懸命に取り組んでみる。
なぜなら、あなたがやりたいかどうかに関係なく、
向いているかどうか、あなたが必要かどうかを決めるのは、あなた以外の人だからです。
大抵の場合、あなたの雇い主とか、職場の上司が、
彼は使えますねぇ、我が社に必要な人材ですね、と判断するものですよね。
好きなことともまた違います。
あなたがやると
認めてもらえること・必要とされること
= 向いている 役に立てている
です。
せっかく会社に入ったのですから、そこでやらせてもらえることは全力でやってみる。想像もしていなかった部分で、とても認められることがあるかもしれません。
たとえその会社の本業部分でお役に立てなくても、自分の意外な特性に気づかせてもらえるかもしれません。
そのお試しをしないうちに次に、なんて勿体無いと私は思います。
(よほどのブラック企業であることが理由なら直ぐに辞めることをお勧めしますけれどね)
好きなことをやりたい。素敵です。
でも、それをあなたがやることを、誰も必要としなければ、仕事になりません。
自分で起業しても同じです。
あなたの会社の商品や技術を、使いたいと思ってくれる人がいなければ、どんなに好きでも、仕事にはならないのです。
んー、少しズレるかもしれませんが…
私がずっと引っかかっていることの中に「大人になったら何になりたいですか」という子供への質問、があります。
質問するのはいいのです。
でもね、小学生で、大人になったらなりたいことが決まっている子供は何割くらいでしょうか。
子供は、大人からされた質問に、
「わかりません」「まだ決めていません」と答えてはいけないことを、かなり幼い頃から知っています。
だから、将来なりたい職業がまだ決まっていない子供は、思いつくことや、みんなと似たようなことを「僕ちゃんと答えました」の為に、何かしら答えるのです。
私にも記憶があります。
小学生低学年の時に、文集か学級新聞か何かで、将来何になりたいですか?の項目がありました。
それを見て「この年齢で将来なりたい職業書けって、クラスの内の何人が書けるんだよ」って、正直思いました。
で、こう書きました。
「お花屋さんか、小鳥屋さん」
結局 書いたんか、とお思いでしょうか。
はい、書きました。
なぜなら、この大人からの問いに、
白紙、決めていません、わかりません、は 波風立つなぁ、と思ったからです。
書いたからといって確定するわけではないんだし、答えておいたほうが、質問した大人は安心するんだろうな、と。
なぜ、花屋さんか小鳥屋さんだったかというと、よく行く祖父母の家の最寄駅にあるスーパーの入口に、花屋と小鳥屋があったことを思い出したからです。
スーパーに行くと、お花綺麗だな、小鳥可愛いなって思うのは事実ですし、
けれど、どちらもなりたいとは思っていないので、その二択をどちらかに絞る判断材料がなく「お花屋さんか小鳥屋さん」と書くしかありませんでした。
書かない選択肢が無い以上、精一杯の苦肉の策です。
あ…。
あいつが出てきそう。
話を戻します。
つまりですね、
かなりざっくりと分けてみますよ。
①好きなことをした × いいねと言われた
②好きなことをした × いいねと言われない
③苦手なことをした × いいねと言われた
④苦手なことをした × いいねと言われない
⑤どちらでもない × いいねと言われた
⑥どちらでもない × いいねと言われない
がありますよね。
「好きなこと」は「やりたい事」に置き換えても同じです。
①どうぞそのままお進みください
②趣味でお続けください
③必要とされますが 割り切れないと精神的に辛いかもしれません
④お辞め下さい
⑤必要とされます
⑥お辞め下さい
です。
もう一度言います。
乱暴な分け方です。
でもね、②なのに仕事にしようとして、上手くいかなくて、もがいている人が多いように思うのです。
あるいは、①が目指すべき形だ、と思い込んでいる人。
(時間をかけて努力し、そこにたどり着ける人もいるとは思いますが)
好きは好きでいいんです。
やりたい事はやりたい事でいいんです。
ただ、それと、そのことをするあなたが必要とされるかは別、ってことです。
私の場合は、⑤を積み重ねていくうちに、
自分が必要とされることと、されないことを棲み分けていって、
必要とされること=好きなこと になっていきました。
私自身に目標や、なりたいものが全く浮かばなかったので、
自分で選びようがなかったことも理由のひとつですけれど。
学校を出て入行した銀行も、進路相談の時に、担当教師が6つ差し出した求人票のうち4つが金融機関だったので、進路を担当する大人の目から見ると、私は金融が向いている、と判断されているんだな、という理由で選びました。
で、結果、数字を扱うことは向いておらず、1年10ヶ月で辞めることになるのですが、全く無駄ではありませんでした。
私は銀行で、やって、と言われたことは自分なりに精一杯考えてやってみたのです。
その結果、私がやっても必要とされない事と、
必要とされる事がそれぞれ2つずつ、わかりました。
そして、必要とされなかった2つの事は、
今後の選択肢から外していい事であると知ることができた、と思いました。
同時に、私がやっても必要としていただけた2つのような要素が含まれている仕事は、今後もお役に立てる可能性が高いんだな。
それが含まれている方向へ行くと、私の居場所がある可能性が高いんだな、と思いました。
銀行に行かなければ、特に、必要とされないことについては、こんなにはっきりと知ることが出来なかったと思います。
たくさんの気づきを与えてくれた銀行を辞め、いよいよ「言葉って面白い」と気づくきっかけをくれた職場へと続いていくのでした。
お読みいただきまして、ありがとうございます。