手術から8日が過ぎ、新しい身体にも生活にもすっかり慣れました。

 
ネットを見るとひどく大変な目にあっている人もいるようだけど、
適応スピードはそれぞれ。
 
同室だった一つ年下の女性は、ストーマをつけて、抗がん剤をしながらフルタイムで働いている。
 
「会社がいいんです。これからふたりに一人ががんになる社会がもっと可視化されるだろう。治療しながら働くモデルになってもらいたいと言ってくれる。
 
今の役職もこれまでの働きを評価してなったものだから、病気になったから返上なんて考えなくていいと言ってくれて」
 
素晴らしいですね。
医療関係の企業だからか社員も病気に理解があり、「いつか自分も」というまっとうな危機感もあるのでしょう。
仕事と病気の両立というテーマに対し、温かい好奇心を持ってくれるているのが伝わってきます。
 
ストーマについて調べていたら、
前触れも持病もなく、タバコやお酒やストレスが過ぎるわけでもなかったのに、ある日病院に行ったら、「ストーマをつけないと死ぬ」という体になっていた三十代男性の話も読みました。
 
病気は、食べ物のせいとか、
心のせいとか、
考えかたが悪いから発症する
という思い込みは、根の深いものがありますが、そんな割り切りのいい理由ばかりではありません。
1番多いのは、たまたま、です。
誰だって明日は我が身。
 
 
昨日は、病院の患者会に参加し、ストーマが大嫌いな人にも会いました。
 
何がそんなにいや?
と聞いて納得させられるのも嫌なんで質問しませんでした。
でもその人はがんのすべてが嫌みたいでしたから、仕方ないのかも。
 
同室だった人が、午後立ち寄ってくれたので、その話したら彼女も、
 
何が嫌なんだろ
 
と不思議がってました。
 
4期のがん患者さんたちとのおしゃべりは、なかなか有意義でした。
 
「QOLが高いのが1番ですよ。押川先生じゃなかったらこうはいかない」
 
「1ヶ月以上先は考えない。考えるのは、今日どうやって自分が楽しく暮らせるかだけ」
 
「死ぬときもこの病院でお願いしますって頼んであるんです。押川先生が東京行ってるときに悪くなったらがっかりだけど」
 
「他の病院でひどい目にあいましたから、押川先生がどれだけ珍しいかわかります」
 
押川先生ファンのつどいになるのも仕方ない。
抗がん剤しながらこれだけ元気な集団のつどいは珍しいはず。
 
膵臓がんでいろんな臓器を失いながら、旅行と美食を楽しんでいる人などもいて、
私はその方と美味しい店とまずい店の話で盛り上がりました。
 
 
もっとも私は宮崎ではグルメ運がゼロで、まずい店しか知らないのですが。
大人気のケーキ屋さえ素材がひどい
と誰かに言いたかったが言えなかった。
やっと意見を同じくする人にあえて溜飲を下ろしました。
 
 
病気を治すことを「人生の目標」にしないほうがいい、という押川先生の教えは徹底して徒弟?たちに染み込んでました。
 
 
「カナイががんになってからすでに何万人が死んでますか? 災害で、事後で毎日死んでいきます。私はカナイが先に死ぬのを怖がってましたが、死ぬ運命は誰も一緒です。がん患者がいいのは他の人には目に入ってない、いつか死ぬって事実をちゃんと見てることです。だから私もカナイと一緒に毎日を楽しんで生きると決めてるんです」
 
 
未来をリアルに見てる人は明るい。
がんがいやだ。ストーマがいやだというのは、幻想の幕を被せた未来を見てるから。
 
明日が最後の日となってから、もったいないことしたと思わないように、毎日、いまをうけいれていたい。それは難しいことじゃないです。
 
 
 
肉体苦痛を薬で早期から緩和できていれば。
 
 
イチゴがのりのりの美味しさ