このタイトルを知ったのは映画からでした。

20代の半ばに映画館で見て、ものすごく好きになった。

映画公開時のポスターイラストを描かれたのは高橋常政さん。

私はこの絵に掴まれて映画を見に行ったようなものです。

この絵が好きで好きで何枚もちらしをコレクションし、部屋に貼っていました。

今みても好き。この絵が欲しい!!

 

映画公開から数年たって、なんと私は高橋さんとお仕事させていただくようになりました。

一緒に唐津の隆太窯へ取材にいったこともある(おいしいもの作家の佐藤隆介さんも一緒で。とってもいい思い出)。

 

私が希望したのではなく、アートディレクターの江島任さんが高橋さんを呼んだのです。

「前にあったことがありますよね」と初対面の顔合わせのとき、高橋さんは私に言いました。

「いいえ、絶対にありません」と私はいいました。

だって高橋さんの私は大ファンなのですから前に会ったら覚えてないわけがない、

といえばよかったのに、こういうときにそういう言葉を言えない28歳でした。

 

「ああ、君は忘れているんだ」

 

高橋さんは絶対に私に会ったと主張し、私は絶対に会ってないと主張する、へんな初対面のあいさつでした。

 

高橋さんのこの絵と同じくらい、この映画もすばらしかった。

特に後半の料理に関するシーンは私の人生にかなり影響していると思います。

どういう影響かというと・・・今考えましたが、私はうまい料理を作る人へのリスペクトが強すぎるとこがある。

表面には出てないかもしれませんが、緊張するのです。

巨大企業の社長とか有名人とかにはびびりませんが、おいしいものを作る人には緊張する。

 

映画を大好きになった私は、原作を読みました。

 

すると原作も大好きになり、読み返して読み返して、読み返しました。

読んだ回数最多の本といえば、私の場合『バベットの晩餐会』。

何度もめくられたせいで本はふくれあがり、ページは茶変し、汚れとシミがいっぱい。カバーはとっくに消失しています。

 

いろんなことが20代のときの私と今の私は違うのに、「バベットの晩餐会」愛だけは、変わりもせずずっと好き好き好き。

 

ひょっとすると、年をとるほど好き度が増している? 

たぶんそう。

 

最近になって、こんなに好きなのに映画のDVDを買っていない自分が変である、と気づいて

ネット購入しました。昔調べたときは高くて買う気になれなかった(DVDにはケチなんです)。

いつのまにか安くなっていた。クリックしたら翌日には届きました。

30年ぶりに昔の恋人に会うような思いで昨夜それを見ました。

 

映画を見終わったらいつもの就寝時間はとっくに過ぎていて、ふとんに入った私は照明の消えた部屋で、布団に入ったら即座に寝息をたてるタイプの彼はもう寝てたかもしれないけど、おっとの背中にむかって、

「私やっぱりあの映画好き。全映画のなかで一番好き」

ほとんど愛の告白のように熱っぽくひとり語りしておりました。

 

映画の前半はいったいなんという退屈な映画であろうかと思われるかもしれませんが、

それも重要な伏線だとあとになってわかりますから、ちゃんとみてください。

 

そもそも作者イサク・ディーネセンが好きなのです。

筑摩書房のちくま文庫版「バベットの晩餐会」に入っている「エーレンガート」も何回読み返したかしれない珠玉の短編。

 

 

やっぱり言いたい。

「バベットの晩餐会」は料理にたずさわるすべての人が読むべきだと。

 

料理がもたらす感動は、食べた人の精神を、その根底を、本人も気づかないうちに変えてしまう。

今更ですが料理は音楽や美術やダンスや演劇やドラマと一緒なのです。

 

9月に私は逆バベットの晩餐会にいきました。

集った仲間たちが不機嫌になっていき、食べ終わると喧嘩が始まった・・・

どんな料理がここまで、なかよしの仲間たちを不幸な夜に導いたか?

まずいとかじゃ言葉が足りません。愛のない作りて。エネルギーのない食材。表面だけのサービス。

 

地球を守ろうとか、環境を守ろうとか、そういうスローガンもときに大事なことなのかもしれませんですが、

おいしいものは、食べた人の心をこんなにも輝かせることができるのですから、おいしいものこそ地球を救うってことを、全つくり手は肝に銘じないといけません。

 

毎日のふだんご飯の作り手も飲食業の作り手も野菜やコメや果物の作り手も。

 

話が飛びますが、NHKの「探検バクモン」の再放送をみました。

テーマは神田のカレー。

番組の最後に、究極のカレーとして出てきたのが、約20年前に私が雑誌のために取材したシェフだった。

こんなにもプロセスが複雑で、大量でないと作れないカレーを家庭で作るのは無理だとわかりながら、それを再現するためのレシピ製作のために、2日かけてカメラマンとともに厨房にはりついたシェフが20年ぶりに出てきました。店が違ってた。独立されていたんだ。

 

昔と変わってない作り方。昔と変わってないご本人。20年たっても変わってないってすごい。ブレがないんだな。

鈴木シェフもバベットのひとり。

 

錦自然農園もバベットな農園でいたいです。

 

 

 

無添加キムチ&コチュジャン、無農薬野菜、コメ、お茶などなどのおもとめは

錦自然農園フルーツストア