放送作家 西川栄二のブログ

放送作家 西川栄二のブログ

放送作家でお笑い学校校長の西川栄二のブログ

テレビやラジオの台本を書くときに苦労するのが、

お笑い芸人を司会やパーソナリティーにした時に、

いかに決められたセリフの数を減らすかってこと。

 

芸人の人は、ずっと自由にしゃべれるのが一番で、

台本に「※受けて一言」とか「※リアクションあって」とかが

並んでいると、台本もそんなに見なくていいし、

自分の力も発揮できると思うから、嬉しいわけです。

 

だけど「M-1グランプリ」の今田さんは、

言わなきゃいけないセリフを、

キチンとしたMCとして沢山喋っている。

それが出来るからこそ、

パートナーが局のアナウンサーじゃなくて上戸彩さん…

みたいなことも可能になるわけです。

 

それにさあ、「Mー1」みたいな番組は、

「いかに緊張感を高めるか」

「いかに番組に集中させるか」で

視聴者のお笑いを見る目が変わり、

それが爆笑にもつながり、視聴率にも関わってくる。

 

今田さんの、格調あるMCをしつつ、

出場した芸人や審査員との絡みでも

様々な目線や関係性で笑いをとれて、

なおかつ後輩芸人の株を上げることもできる。

さらにハプニングにも強い…という

フラットでオールマイティーな司会者ぶりが

実はあの番組の屋台骨を支えている…というわけです。

 

実は芸人さんでああいう司会が出来る人って、

ほとんどいないと思っています。

昨日の「M-1グランプリ」、

特にファイナルは面白かったね。

 

以前にも書いたけど、僕は

漫才ブームっていうのは

「どれだけレベルが高いか」じゃなくて、

「どれだけそれまでの漫才より

レベルが高くなったか」っていう

「どれだけ圧倒的か?」

「どれだけ伸びたか?」ってことだと思ってる。

 

1980年のマンザイブームの時は

ツービートは圧倒的に毒舌だったし、

B&Bは圧倒的に早口だったし、

紳助竜介は圧倒的にキャラが立ってたし、

のりおよしおは圧倒的にナンセンスだったし、

ザ・ぼんちは圧倒的に(凄くいい意味で)

くだらなかったしね。

 

だけど、昨日ファイナルに残った

たくろう、ドンデコルテ、エバースは

「圧倒的に進化してる」「圧倒的に見たことがない」

「圧倒的にオリジナリティーが強い」という

圧倒的なネタ作りをしている3組だった。

 

「こういう圧倒的なネタ作りをしているコンビが

あと3~4組いたら、

令和の漫才ブームが来るんじゃないの?」

そんな期待感を抱いてしまったのでした。

 

コンプライアンスが厳しくなり、

本人のキャラとかに頼ってる部分が少ないネタで

勝負してるから、

前のブーム以上にネタを作ってる方の芸人に

「ずっと進化するネタを作り続けられるんだろうな」っていう

プレッシャーがかかるブームになるんだけどね。

でもそれくらい面白かったです。

中村雅俊さんが監督、主演をつとめた映画

「五十年目の俺たちの旅」が、来年1月9日に公開になる。

 

その番宣も兼ねて、テリーさんのラジオに

ゲストに来ていただくのだけれど、

考えてみたら、中村雅俊さんのファンは幸せだよね。

 

だって、自分のことに置き換えてみたら

僕の青春時代の3大ヒーロー、

ビートたけしさんの漫才をもう見ることはできないし、

吉田拓郎さんのコンサートももう見ることはできないし、

アントニオ猪木さんに至っては、

亡くなられてしまったもんね。

 

でも中村雅俊さんのファンは、

恐らく大好きな作品であったであろう「俺たちの旅」が

映画化し、現在進行形の中村雅俊さん、

現在進行形の「俺たちの旅」を見ることができる。

雅俊さんはコンサートも毎年開催してるしね。

 

これって、気に留めないと普通のことに見えちゃうけど、

実は奇跡みたいなことだと思う。

 

実は僕も2年位前に「中村雅俊のオールナイトニッポン」の

作家をさせてもらって、雅俊さんが物凄くいい人な上に、

スタジオの中で田中健さんと一緒に「ウイスキーの小瓶」を

歌う姿を見させてもらって、すっかりファンになったのでした。

今年も女性芸人のネタNO1を決める「THE W」が

開催された。

ネットでは、「レベルが低い」

「賞金1000万円に見合ってない」

「開催をやめるべき」など、様々な批判が起こっている。

 

でもね。

藤田ニコルさん、みちょぱさん、めるるさん、

ゆきぽよさん、ゆうちゃみさん…などなど

最近のバラエティー番組対応型の女性タレントの方々は、

一気に露出を増やして、す~っとバラエティーから

いなくなっていく…そんなケースがほとんど。

 

バラエティ番組を賑わしてくれる女性タレントは、

慢性的に不足しているのです。

 

それって毎回賞レースで優勝する芸人や

旧ジャニーズのタレントさん達が参入し、

どんどんバラエティー対応型タレントが溜まっていく

男性陣とは、まったく反対の事情。

 

「THE W」は、優勝の副賞に

「日本テレビの20の番組に出演権」みたいなのが

与えられるけど、「THE W」って、

本音では、ここで力を発揮している芸人が

欲しいのだと思っています。

 

業界の人達は、オセロとか、北陽とかの

成功例も見て来たわけで、

密かに年齢との戦いみたいなことも考えているはずだしね。

 

それを「女芸人のネタNO1を決める」みたいな

キャッチフレースをつけるから、

話がこじれてくるわけで

もうちょっと本音の開催意義みたいなのを

明らかにするか、ほのめかすかだけで、

視聴者の見る目も変わって、

あの「やけに批判精神」みたいなのも

薄れていく気がします。

昨日の午後、日本テレビで

大谷翔平選手を語りつくす特番、

「ザ・マントルトーク」をやっていた。

 

凄いよね、どんな人が見ているか、

イマイチわかりにくい日曜午後という時間帯に

大谷選手の活躍を改めて振り返る番組を企画する…

これだけで、いかに大谷選手が男児を問わず、

幅広い年齢の人達に愛されているかがわかる。

番組スポンサーには

大谷選手をCMに起用しているスポンサーもあって、

そこも「テレビ局には美味しいんだろうなあ」と

思わせたのでした。

 

番組では長嶋一茂さんや高橋尚成さん、赤星憲広さんなどが、

大谷選手の打撃、投手、そしてランナーとしての凄さを解説。

結構マニアックな内容だったのだけれど、

「大谷選手というドメジャーな人のこととなれば

それもまたメジャーなこと」…そんな印象だったのでした。

 

あとさあ、番組には、少年野球をやっている子供達も

観覧に来ていたのだけれど、その子たちの声も抜群に良かった。

 

最近見た番組の中で、最も「第2弾がありそうな番組」だったのでした。

昨日放送された「秋山ロケの地図」という番組に

木村拓哉さんがゲストで登場。

9時間にわたり、ロバート秋山さんと一緒に

九十九里町にいる「地元住民のおススメスポット」を

訪ね歩いていた。

 

木村拓哉さんの番組、それも木村拓哉さんが

これまでにしたことがなさそうな体験をする番組は

総じて面白い。

 

まず当たり前だけど、町の人が出会ったときの

有難がり方が、やっぱり他のタレントさんとは違う。

今でも木村拓哉さんの神通力みたいなものは

他の追随を許さない。

 

そしてせっかく木村拓哉さんの出演が決まったからには、

秋山さんや番組スタッフは

「隙がなく格好いい」木村拓哉さんの

「今まで見せたことがない表情」や

「今まで聴いたことがない本音」…

そういったものを引き出そうと、あれこれ準備をする。

 

だけど、木村拓哉さんは

他の芸能人と比べても圧倒的に美学が多い気がする。

美学というのは

「こんなことが起こったら、こんなアクションをする」とか

「こんなことを言われたら、こう返す」みたいな

引き出しの埋蔵量みたいなもの。

木村拓哉さんは、まさに美学で出来た分厚い鎧を

まとっている感じなのです。

で、結局、昨日も木村拓哉さんは木村拓哉さんを

最後まで崩すことなく、恰好いいまま去って行った。

 

きっと木村拓哉さんは、

酒飲んで話す番組で飲み過ぎても、

大食い番組で限界ぎりぎりまで食べ続けても、

例えどっきり番組で騙されたとしても、

きっと自分の美学を貫き通しそうな気がする。

 

木村拓哉さんの意外な一面、

格好悪い部分が見られる番組って、

いったいどんな番組なんだろうね。

来年、「長嶋茂雄賞」が新設される。

選出基準は、ポストシーズンを含む公式戦で

走・攻・守だけじゃなくて

ファンを魅了するなどした野手1人に贈られる…とのこと。

 

メジャーに行く前に松井秀喜選手にインタビューした際に

「天才とは?」という質問をしたら

松井さんは「完璧な準備をする人」と答えてくれた。

登板する投手からどんな球が来て、どんな風に打ち返すか…

徹底的にシミュレーションをして、

どんな球でも対応できるように準備しておく…

まさに松井さんは想像力の天才だ。

 

一方長嶋茂雄さんは、

明日の試合について、1回から9回まで

自分の打席だけでなく、試合の流れを含めて

全部をシミュレーションする…そんなお話をされていた。

「こんなシーンでは、こんなホームランを打つ」とか

「こんなピンチでは、こんな守備を見せる」とか

ファンを喜ばす、ファンの期待を超える…

そんなイメージトレーニングをしていたわけで、

これはもう想像力ではなく、妄想力の世界だ。

 

遠くにいる人と話をするには?

…そんな妄想力でベルは電話機を発明し、

空を飛びたい…そんな妄想力で

ライト兄弟は飛行機を発明したけど、

妄想は人類の進歩を推し進める原動力。

二刀流の大谷選手だって、圧倒的な妄想力があったから、

今があると思えるもんね。

 

そんな中、「じゃあ、来年は誰か受賞するんだろう」と

日本の球界を見回して、今一番妄想力を感じるのが、

新庄監督。

妄想力を物凄~く感じるプレーヤーが出てきてほしいよね。

仲代達矢さんが肺炎で92歳で亡くなられた。

ワイドショーでは、その人柄を語ってもらうべく、

著名人をあちこち探したのだろうけれど、

電話で出演されていたのは、せんだみつおさんだった。

 

凄いよね。

せんださんはサービス精神旺盛な素敵な人で、

先日のペーさんパー子さんの支援ライブでも

物凄く笑いをとっていたけれど、

「他にも語る人がいるでしょ」って気もしないでもない(笑)。

 

でも、仲代達矢さんが生前仲良くされたのが

せんださんってことが紹介されて、

仲代さんの人柄の良さ、せんださんの愛される性格…

みたいなのを両方感じることができた。

凄くいいなあと思ったのでした。

 

で、実は先日のぺ―さんパー子さん支援ライブでも

同様の経験をした。

 

それはテリーさんとたい平さんのオープニングトークで

たい平さんから「ペーさんがずっとピンクを着るようになったのは

テリーさんの一言がきっかけなんですよね」と明かされ、

それに対してテリーさんが「なんか華やかでいいなあと思って」

みたいな話をしていた。

 

つまりそんなテリーさんの軽い一言を

ペーさんは生真面目に40年も50年も忠実に守っているってことだ。

これだけで、ペーさんが良い人なのと、変わった人なの、

両方がわかる。

いい人で変わった人…芸人としちゃあ最高の誉め言葉だもんね。

 

また舞台でテリーさんは、

「ペーさんは本当に金がないんですよ。今、貯金が20万円位」

そんな嘘とも本当ともわかんない話をしてたけど、

その大きな理由の1つが、

ペーさんがゲストで出演する番組への差し入れ。

「テリーとたい平のってけラジオ」にゲストに来てもらったときは

ペーさんは必ず肉まん100個を差し入れしてくれて、

「一番かかった年は、肉まん代だけで年に280万円かかった」

そんなエピソードも披露していたもんね。

 

この「今、貯金が20万円」ってエピソードでも

肉まんのエピソードを知っている僕たちは

ペーさんが良い人&変な人ってことを改めて感じ取れる。

「貯金20万円」は、ネットニュースにも取り上げられて、

ライブのいい広告にもなったしね。

 

こうした話をダラダラと書いてきたけど、

何が言いたいかというと、

ペーさんとせんださんは良い人だ…ってこと。

それをみんなに伝えたかったのでした。

林家ペーさん、パー子さんの暮らすマンションから

火災が発生。

さっきワイドショーでは

お2人が焼けてしまった部屋にカメラマンを案内し、

燃えてしまった品、奇跡的に残った品を

1つ1つ説明するVTRが紹介されていた。

 

そもそも焼け跡の部屋にカメラが入るなんて映像を見たのも

初めて。

お2人が下の会の人に謝りに行くところまで

カメラは追いかけていた。

優しくて思いやりのあるペーさん、パー子さんだから

そこまで紹介してくれたんだろうけどね。

 

ペーさんパー子さんと言えば写真。

お2人が大事に撮りためた写真も全部燃えてしまったらしい。

 

でね、

ペーさん、パー子さんから写真をもらった人も大勢いるはず。

そしてもらいっぱなしで、そんなに写真を見直していない人も

結構いると思うのです。

 

そんな人は、お2人に写真をお返ししてはどうだろうか?

ペーさんは83歳、パー子さんは77歳。

そんな思い出の品、

それもご厚意で返却してもらった品があったほうが

これからの人生、お2人が

もうひと踏ん張りできるんじゃないかと思ったのでした。

「爆笑レッドカーペット」の特番が放送された。

見た人からの評判も概ねいいみたいだね。

 

僕は昨今の「M-1」「キングオブコント」

至上主義みたいなのがちょっと苦手。

設定の意外性、ネタの完成度、演技力みたいなのの

総合力の戦いは、

真面目な芸人、頭のいい芸人だけが勝ち上がってこれる

大会となっている。

見ている側も審査員になった気分で

「自分とは評価が違う」「自分の中での優勝は…」って、

書き込む人も多い。

出る方も、見る方も、皆、生真面目な世界。

 

一方、「爆笑レッドカーペット」は

たまたま思い付いたことが物凄~く画期的だったら

選ばれちゃう、広く開放された舞台。

見る方も「この人は何点」とか気にすることなく、

肩の力を抜いて、気楽に楽しめちゃうもんね。

 

そんな中で、今回の番組で目立っていたのが、

キンタロー。とアキラ100%。

 

キンタロー。は、自分が演じる「くだらない」へのハードルが

物凄~く高くて、毎回、想像を超えた「くだらない」を

提供し続けている「くだらない」の求道者みたいな人。

 

僕は「見たことがない」「もう1度見たい」を続けた人は

絶対売れると思っているのだけれど、

そういう意味では、キンタロー。がNO1かもしれないもんね。

 

一方、アキラ100%は、

「お盆で前を隠す」という物凄い発明をしちゃった人。

「お盆で前を隠す」芸がなぜ特別かというと、

「お盆で前を隠す」ことを前提にネタを考えること事態が、

物凄くくだらない。

つまり永遠に物凄くくだらないことをやり続けることができる

…という素晴らしい発明なのです。

 

しかもお盆で前を隠すのには技術がいる。

テクニカルな進化も必要だったりするんだけど、

「お盆で前を隠す」ための練習を重ねる…ってことも、

どんなに苦労していたとしても、やっぱりくだらない。

ついでに書くと、そんなことに練習を重ねる人っていうのは、

「実は真面目な人」「本当はいい人」ってことも垣間見えるしね。

 

高いハ-ドルを自分に課して

「くだらないこと」をあれこれ考え続けるのも良し、

一生使える「くだらないこと」の発明に全力を注ぐも良し。

「M-1」「キングオブコント」で勝ち目がない芸人さんは、

是非こっちの世界にも頂点があることを理解して、

こっちの山を登ってみてほしいです。