日本のカップラーメンは海外にそのまま輸出することはできません。
トランスフリー商品でなければ売れない――それが今の世界の潮流です。しかし、日本だけは規制がなく、うやむや状態。
問題が山積みの超加工食品ですが、まだまだ大きな問題があります。その1つが 「油」です。カップラーメンをつくると、表面に油が浮かんできますよね。あれは調味液に含まれている油だと思うかもしれませんが、大半が麺に含まれている油です。
即席ラーメンでは、蒸した麺を乾燥させて保存性を高めるわけですが、ただ干すだけではガチガチになり、お湯では戻せません。そこで140℃前後の低温で揚げて水分を飛ばし、乾燥させているのです。保存性を高めるだけでなく、油の中で沸騰する際に麺に微細な穴が開くので、そこにお湯が入り込むことで早く戻せるようにもなります。 今はノンフライ麺も出回っていますが、油揚げ麺の場合、麺の重量のうち3割は油です。
この油が曲者なのです。液体の油で揚げると酸化しやすく日持ちしないため、傷みにくい固形の油で揚げたいのですが、 ラードでは割高になる。そこで、安い大豆や菜種の液体油に水素ガスを吹き込んで固形化したものが使われているのです。
このように水素添加した油を「硬化油」といいます。元が液体の油でも、固形化すると酸化されにくくなる。変質しにくく扱いやすいため、揚げ油だけでなく、マーガリンやショートニング、ファットスプレッドの原料にも使用されます。言うまでもなく、これらは菓子パンやスナック菓子、レトルト食品に多用される油です。
問題は、液体を固形に無理やり変えるときに「トランス脂肪酸」が発生すること。これが心臓病リスクを高めるということで、アメリカやカナダ、ヨーロッパでは食品への使用が禁止されました。アジアでもタイやシンガポールで全面禁止、中国や韓国ではトランス脂肪酸含有量の表示が義務付けられています。トランスフリー商品でなければ売れない――それが今の世界の潮流です。しかし、日本だけは規制がなく、うやむや状態。 ですから、日本のカップラーメンは海外にそのまま輸出することはできません。
超加工食品大国の日本では、トランス脂肪酸を含む硬化油は大活躍です。今のパンはしっとりしているでしょう? 昔の10 倍近くの油が入っています。甘みを出すために、わざわざシロップまで入れています。だからいつまでも柔らかく、しっとりしている。それは水分が多いということでもありますから、 保存料や保存効果のある添加物の使用もうなぎ上りです。
今は、「マーガリンは健康によくないので買わないようにしています」という家庭も多くなりました。しかし、超加工食品 には大量に含まれています。 超加工食品を食べている限り、摂取量は減りません。
「精製加工油脂」と原材料にあるのは、水素添加など人工的に手が加えられた油と知るべきです。硬化油はホイップクリームやイミテーションチョコレートにも姿を変えます。これも添加物のなせる業です。
Renaissance vol.13 食がもたらす病 p12 安部司先生の解説です。