こんにちは。aonoです。
先日は、
「相手の行動を変えたいなら、
まずは相手の事情を理解すること」
というお話をしました。
今回は別のケースからも
そのことをみていきたいと思います。
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示談交渉における「説得」の極意
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私は交通事故の示談交渉を行う
仕事をしていました。
「交渉」というと理屈や駆け引きの
世界というイメージもありますが、
交通事故に関わる交渉は
非常に感情的なやり取りを伴います。
イメージしやすいもので言えば、
被害者がお亡くなりになった事故が
分かり易いと思いますが、
実は一番もめやすいのは
物損事故です。
車同士の事故の場合、
どちらかが一方的に悪い事故
というのは
追突など限られた類型だけです。
それ以外は、
大抵は双方に責任が発生します。
では、どの程度責任が生じるのかというと、
それは事故類型や色んな要素から検討します。
しかし、交通事故に関わる仕事をしている人
でもなければ、
その感覚は人によって全く違います。
例えば、十字路交差点で
相手が一時停止を無視して
突っ込んできたとします。
この場合、皆さんは自分に
過失があると思うでしょうか?
もしくは、何パーセントくらい
あると思うでしょうか?
その理由はなぜでしょうか?
過失は無いという人もいれば
50:50という人もいますし
なんとなく
10:90くらい?という人もいます。
理由も、喧嘩両成敗だからとか
速度が出ていたからとか、
横っ腹にあたったからとか
人によって尺度が全く違うのです。
しかも、
「現場での相手の言動に
気に食わないところがあった」
とか、
「当日は大事な商談があった」
とか、
「大切な休日のひとときだった」
とか色んな事情が加わってきます。
更に、事故現場で警察の事情聴取を受けたり
色んな手間をとられたり、
車を修理工場に預けるのに手間をとられたり
急な出費を強いられたり…
怪我があった場合は
病院へ行って何時間も待たされたり、
痛みに悩まされるなどの状況も
加わってきます。
そんな感情的な面もあり、
一般的な責任割合などお構いなしに
「自分に過失は無い」と強く主張する人、
また、「過失は無い」とまで言わないでも
客観的には50:50の事故でも
例えば「30%しか過失を認めない」等
一般的な基準とは離れた見解を主張される
ということも多々あります。
(というかほとんどそうです)
彼らにとっては、それは「正論」です。
彼らの尺度からすれば、
それが正しいからです。
そして、それが受け入れられないと
感情むき出しで迫ってきますし、
そのまま会社まで乗り込んでくる人も
よくいます。
そういった方々と折衝を行い
一般的な基準をベースに解決をしていく
というのが我々の主な仕事です。
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多くの担当者が行っている誤った交渉
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こういった場合に
担当者がやりがちな対応としては
判例を基にして説得するということです。
交通事故は年間で何千何万件とありますし
双方の見解が分かれて裁判となるものも
相当数あります。
その積み重ねにより、
責任の割合などの考え方は
ある程度基準化されていて
書籍として
発行されているものもあります。
そういったものをベースに
「この件は判例では〇:〇です」
と説明するのです。
もしくは、その背景にある根拠を
事故状況に沿って
丁寧に説明していくのです。
一見すると正しい対応に思えます。
私も当初はこういった形で
交渉を行っていました。
感情的な人に対して、
冷静に丁寧に淡々と
こちらの見解の理由を説明していくのです。
しかし、
これではなかなか解決できないのです。
頭で理屈が分かっても
納得できない、
もしくは、そもそもこちらの話を
聞いていないのです。
一応、相槌をうって聞いている様子でも
理解しようとは思っておらず、
自分の話をすることしか考えていません。
だから、話も噛み合いません。
判例をたくさん学びましたし、
周りの先輩や弁護士の話法を聞いて
取り入れるなどもしてみました。
しかし、
いくら説得力のある根拠を伝えても
話法を研究して分かり易く伝えても、
「それでも納得できないんだ」
と言われてしまえばそれまでなのです。
相手方が無茶を言っている場合は、
お客様からは
「まだ解決しないの?」
と責められます。
逆にお客様が無茶を言っている場合は、
お客様からは
「お前はどっちの味方だ?」
と責められます。
非常にストレスフルでした。
そして内向的な私は、
「自分の言い方が弱いから駄目なんじゃないか」
と考えて
「交渉力」=「声の大きさ」とか「相手に喋らせない」
とか、強引なやり方を理想と考えていた時期がありました。
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示談交渉がストレスなくできる様になった
ある「きっかけ」
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示談交渉は基本的に電話が主になります。
しかし、入社して数年経過した頃
お客様や相手方と実際に面談して
話をするようにしたところ、
お客様や相手方が感情的になる
背景がよく理解できるようになってきました。
突然事故に巻き込まれて
怖い思いをしたり
色んな手間や出費がかかったり、
痛い思いをしていること。
また、ご家族においては
突然警察から連絡を受けて
家族が事故で入院していると告げられれば
気が気ではありません。
急いで病院へ行って
病室の前で何時間も待たされたりします。
また、その間に色んな書類を書かされたり
といった手間もかかります。
そして、面会できるようになっても
ふと気づくと入院の準備が
何もできていないことに気付き、
一旦家に帰って色んな必需品をとって
また病院へ行ったりします。
翌日の仕事が休めないので、
そのまま職場に行くという方もいらっしゃいます。
お子さんがいらっしゃったりすると
更に大変です。
そういった事情が理解できるようになってから、
私は理屈を伝える前に相手の置かれている状況を想像して
言葉をかけるようにしました。
それまでも気遣いの言葉はかけていましたが、
定型文言として口にしているだけでした。
それをもっと具体的にしました。
例えば、先程の様に入院した被害者の家族と
折衝をしている場面では、
「突然のことで驚かれたんじゃないか」
「病院で何時間も待たされて食事も
できなかったんじゃないか」
「翌日も仕事だったからコンディションも
悪いままで、しかもご家族のことが
気になって大変だったんじゃないか」等
相手の置かれている状況を把握して、
それを理解していることを
言葉にして示すようにしました。
また、責任の割合に関する話をする場合も
事故状況の事実関係だけを聞くのではなく
相手が話したがっている状況や
感情的な面にフォーカスして聞くようになりました。
そうしたところ、
理屈をそれ程説明しなくても
うまく話がまとまるようになったのです。
もちろん最初は感情的になって
無茶なことを言ってくる方はいらっしゃいます。
しかし、そこで反論するよりも
まずはありのままに理解を示すことで
相手はこちらの話を聞く耳ができるのです。
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「理解された」という感覚こそが
相手を説得する力の源
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前回もお話ししたとおり、
人は自分の事情を理解してもらえないと
「この人がこんなことを言うのは
事情を理解していないからだ」
と考えてしまうものだからです。
そして、一般的には無理を言っていても
「被害に遭って苦しめられている
善良な市民である自分」
VS
「事情をきちんと理解せず
事務的な対応をする担当者」
みたいな考えに支配されて聞く耳を
持てなくなってしまうのです。
そして、事情を理解してくれるまで
同じ話を何度も繰り返します。
このことが分かってからというもの、
示談交渉であっても
取引先とのトラブルであっても
問題解決が非常に楽になりました。
繰り返しになりますが
相手の言動を変えるためには
こちらの考えを聞いてもらう必要があります。
しかし、そのためには聞く耳をもってもらう
必要があります。
聞く耳をもってもらうためには
「理解された」という感覚を
もってもらうことが必要です。
よく勘違いする人がいますが、
「うん」「うん」
と相槌を打ちながら聞いていれば
良いというものではありません。
理解しているという事が
相手に伝わって始めて効果を発揮するものです。
そのためのテクニックとしては、
「こういうことですね?」
と伝え返したり、
「こういうことで合っていますか?」
「こういう感覚ですか?」
とすり合わせしていくのが有効ですが、
一番大事なのは自分の解釈を挟まずに、
ありのままに理解をすることでしょう。
相手の話を聞きながら
「なんて言い返そうか」
「この後、あの仕事やらなきゃ」
と考えているとしたら話を聞けている
とは言いません。
是非、相手に「理解された」という
感覚を与えることを意識してみてください。
最後まで読んでいただき
ありがとうございました。