帰り道が怖かった夢



Xmasイブの昼下がり

女は商店街を歩きつづけた


若いカップルで通りは混んでいたが

華やかさはなかった


女は雲ひとつない青空にそびえ立つ

高層ビルの玄関に着いた


女は初対面の男を訪ねて来たのだ

女は男を待っていた


仕立ての良いスーツを着た男が現れたが

上着の前ボタンがちぎれ 糸だけがぶら下がっていた


男は私に気がついたが他に用事があるからと

言い残しどこかへ消えた


約束していたはずなのに

Xmasのスケジュールが一杯で

穴が開けれないらしかった


女は

金糸雀色したコーデュロイの

森ガール風ワンピースに

薄紫色のスカーフを巻き

華奢な体は小鳥のようだった


帰りの道は険しかった

行きは良い良い帰りは怖い

女はさみしい気持ちを抱かえたままで

工事現場のガタガタした石ころだらけの道をよろけながら歩いた

工事現場の人たちが手を取って助けてくれた

みんな優しい人達だった


途中で目から大量の血を流して私に助けを求める青年に出会った

辺りの壁一面に血が飛び散っている

女は慌てて救急車を手配した


青年を見送り

女はまた歩き続けたが道に迷ってしまった

永遠に帰れないのでないかという不安が襲ったが

女は歩き続けた


帰らなければならない


渡せなかった

Xmasプレゼントをどうしたものかと思案にくれた


空はすでに夕暮れて

東の空に薄く月がかかっていた