第338話 『怪獣の夢』  (Bパート)

 

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気がつくと私は、どこかの砂漠にいた。
 
風が吹き抜ける、荒涼とした世界で、
見ると私は、怪獣だった。
 
それで、私は誰で、何をしていたのだっけ?
 
漠然とした、記憶の中から、
いくつかは断片的に、思い出した。
…おぼろげだが。
 
確か、誰かに使われていて…
 
人がいて、争いがあって。
 
世界を作ったような…?
 
いや、私が? まさか?
 
じゃあ、なんだったんだろう?

夢か???
 
どうもよく、思い出せない。
 
目の前に広がる、現実は、
誰もいない世界で、砂漠しかない。
 
いや、しかし別の記憶を思い出した。
確かこっちの方向、この先に、
人間の町が、あった気がする。
 
そうだ、そこを襲っていた。
 
襲撃したい衝動が、自分の中から起きると、
止まらなくなったんだ。
それで…

 


 
町の人間は、かなわないと知ってるのか、
あるいは、何かの決め事か、
抵抗らしい、抵抗はしなかった。
 
私は好き勝手に暴れ、建物を壊し。
 
ただ、
何か神官が、こちらに向かって来ると、
妙に体の動きが、止められるような、
何とも不思議な抵抗に、あってしまった。
 
だがそれも、一時の事で、
もがき続けると、見えない拘束は解け、
神官は消えてしまった。
 
それを見ると、ほどなくして、
王妃らしい人物と、もう一人も消えた。
 
魔法か何か、だったのかも知れないが、
それほど、大した物ではない。
 
それにおそらくは、もうあの町には、
私を防ぐ力は、残っていない。

 
よし、行くか。
 
ここにこうしていても、しょうがない。
 
何か遠い昔は、良いとか悪いとか、
正しいとか間違っているとか、平和とかに、
不思議と、拘っていたような気もするが、
今は、もう、どうでも良い。
 
怪獣なら怪獣らしく、衝動に任せて生きよう。
その是非を考えても、しょうがない。
 
正しいとか、間違っているとか、
こうするべきだとか、言う人はいない。
ここには、私しかいないから。
 
一人で好き勝手に生きるしか無いなら、
一人で好き勝手に生きよう。
 
何かもう、どうでも良い。
何もかも、どうでも良い。
 
考えるのが、本来性に合わないのに、
なぜか今回、変にこだわって、
考えてしまって、いたのかも知れない。
 
1分か、1日か、1年かはわからないが。
 
今はもう、どうでも良い。
そう、どうでも良いんだ。
きっと…
 

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砂漠の王国都市に向かい、
ゆっくり歩き出す怪獣。
 
足元には白い花が揺れています。
 
高台から、それを見下ろしている、
片手杖の老人と、帽子の少女。
 
老人
「哀れなる、彷徨える魂。
 せめて好きに、生きるが良い。
 
 お前には、それしか出来ないが、
 お前にはそれをする、権利はある。」
 
それをまた、無表情で、
物陰から見ている、髪の長い人物。
ジョージ・ホワイト。
 
画面がブツっと消え、真っ暗になります。
 

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【科学センター 第9研究室】
 
USTとカジ参謀、B班、
科学センターのメンバーが、
消えて真っ暗になった、
スクリーンを前にしています。
 
机の上には、
「部外秘 R4計画」
と、
書かれたファイル。
 
押し黙った空気の中、カジ参謀が声を上げます。
 
カジ
「博士、今のは一体!?」
 
しばらく何かを考え、整理するかのように、
髪をかいている、マキノハラ博士に代わって、
ナワテが、口を開きます。
 
ナワテ
「全機器、異常ありません。
 
 ダモダル・トリニウスが、消費され、
 ほぼ無くなっているだけで、
 現在も正常に作動している
 …となっています。
 
 見た通りの事だとは、思われますが。」
 
マキノハラ
「知っての通り、
 R1号は破壊超兵器、
 R2号はそのさらに、数十倍の攻撃兵器。
 
 その反省を踏まえて、練られた、
 R3号計画は、攻撃型の兵器ではなく、
 対象知性体の脳波に干渉し、
 攻撃・暴力・敵対的な、脳波だけに反応し、
 逆位相の波長をぶつけて、相殺、
 争いが起きる以前に、思考・感情を、
 消し去るシステムだった。
 
 R3号は、攻撃型兵器ではなく、
 争いが生じる前に、その意思を消し去るため、
 究極の平和兵器になり得る…とも思えたが、
 倫理面を始め、様々な問題が起きて凍結。
 
 以降、Rシリーズは封印状態だったが、
 今回半ば偶然、ダモダル星人の残した、
 トリニウスと同性質と思える、エネルギーが、
 少量残っていたために、これを利用し、
 企画だけはあった、R4号計画が、
 テストの運びとなった。
 
 R4号は、R3号の反省をさらに踏まえ、
 対象の脳には、影響を与える事無く、
 思考のみを、モニターする。
 
 選ばれたのは、シャール星座の第17惑星。
 その知性体の脳に、リンク成功した。
 
 …はずだった。」
 
ユリコ
「それの結果が、これって…
 どう考えたら良いんです?」
 
カジ
「見ているこちらの方が、混乱しそうだった。
 今でも、整理が追い付かん。」
 
ゴウリ
「誰が誰なのか、私が誰なのか、
 人間なのか怪獣なのか、今がいつなのかも、
 モニターすればするほど、わからなかった。
 
 むしろ、入れ替わったり、
 混在していた気もするし。
 
 やっぱり機械の、何かの故障じゃ?」
 
ナワテ
「お言葉ですが、言ったように、
 機械は正常です。
 ですから、あれは、
 一個体~一知性体のモニターです。
 
 故障があれば、わかりますし、
 モニター対象が、コロコロ変われば、
 実験は、続けられていません。
 
 一度、ロックオンしたミサイルが、
 標的を勝手に変えて、何度も当たるとか、
 そんなの、考えられないでしょう?」
 
クロス
「しかし… だとすると、モニター世界は、
 異様に、こちらの世界に似ていた。
 
 それだけでも、違和感は大きい。
 
 正月、駄菓子屋、神社、道祖神、
 生活様式から、年号まで共通するとか、
 そんな偶然って、あるだろうか?
 
 まるで、少し前の別の昭和のような…」
 
ユリコ
「でも… 帝都や帝宮、反政府軍なんて、
 これまでの、昭和の日本には無いわ。
 
 そう考えたら、似ているけどやはり、
 別の宇宙の、偶然、似た世界じゃ?」
 
マキノハラ
「どんなに確率が、低くとも、
 0でなければ、起こった以上偶然…
 が、前提とは思う。
 
 生命の発生・存続だって、計算の仕方では、
 天文学的に、あり得ない可能性だ。
 
 とは言った物の…
 日常的、人間的な感覚では、理解も納得も、
 にわかに信じられんのもわかる。」
 
ユルガ
「あれが一個の生物… 現地の人間の脳内。
 考え、経験した事だとしたら、
 我々は一体、どう受け取ったら良いのか?」
 
ユリコ
「とりあえず、ヒデちゃんは、
 同席させなくて、良かったわ。」
 
と、機械が小さくショート、
画面が完全に、暗くなります。
 
カワベ(第9研究室長・科学センター)
「R4号システム、ダウン。
 今、沈黙しました。」
 
マキノハラ
「どの道、
 ダモダル・トリニウスが尽きた以上、
 実験はもう、これまでだが。
 
 こりゃまた、封印かのう…。」
 
カジ
「言うまでも無いが、念のため改めて。
 
 R4号計画に関する、今見た全ては、
 口外法度、絶対部外秘だ。
 
 ああ、同じUSTの、
 ヒデコ隊員だけは、除いてな。」
 

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 【乙女浜駅跡】(おとめはま えきあと)
 
くつろいでいる、UST6人と、
シズカ班長、マキノハラ博士。
 
ヒデコ
「そんな事がねえ…
 
 ま、R4号って聞いた時、
 大体、想像はついていたけど。」
 
ゴウリ
「しかし、本当に、
 何から何まで、わからなかったよ。
 
 結局、人間が人間である限り、
 平和な世界って、無理なのか?」
 
ナワテ
「それは、モニターした、
 17番惑星の、世界での話であって、
 ここも同じとは、限らな…」
 
ユリコ
「でも、なんか、
 あながち、まるで他人事とも、
 思いにくかったけど…」
 
ユルガ
「17番惑星が現実で、こちらが夢かも知れない。
 
 それを、絶対に違うと、
 証明する事は、出来ないと言う事か?」
 
ナワテ
「ああ、それは、まあ、
 
 シミュレーション仮説とか、
 世界五分前仮説とか、
 不完全性定理とか、
 胡蝶の夢とか、言いまして…。」
 
クロス
「証拠や立証は不可能。
 
 だけど、それを言い出して、
 考えだしていたら、キリは無い。」
 
シズカ
「夢の立証には…
 どこかで、現実の視点が必要と思います。
 
 つまり、現実から見て、夢なのであって、
 夢だけでは、それが夢か現実かわからない。」
 
ユリコ
「でも、それだと、
 起きた瞬間に『さっきのが夢』とはわかるけど、
 起きてるこの世界が『これも夢?』かどうか、
 “中からは”、わからないんじゃ?」
 
シズカ
「そうです。
 
 だから、あくまでも、
 『現実から見て、夢は夢』なのであって、
 『これが夢ではない』立証は、極めて困難です。
 
 夢から見て、現実世界があれば、
 これは夢…明晰夢と自覚出来ますが。
 
 現実から見て、夢世界があっても、
 この現実が、夢ではない保証はない。
 
 明晰現実と言う概念は、普通ありません。」
 
ユルガ
「すると… どこまで行っても、
 
 確かめる事。
 確かな答えにたどり着く事は、不可能か。」
 
シズカ
「そうですねえ。
 
 将来的には、わかりませんが、
 少なくとも、今の科学、世界では多分。」
 
ゴウリ
「うええ。
 
 俺そう言う、ハッキリしないの嫌いだよ。
 なんか、落ち着かないしさ。」
 
ナワテ
「ぼくもまあ。
 
 科学の限界みたいに、言われちゃうと、
 ちょっと…」
 
ユリコ
「人が…恒久平和を手にする事は、不可能?」
 
クロス
「簡単じゃ無いですか。
 
 いや、気持ちはわかりますよ。
 
 でも、考えても答えが出ないなら、
 考えてもしょうがない。
 
 今、出来る事をすれば、良いと思います。
 ここが本当は、夢であろうが現実であろうが。
 
 出来そうならやろう、とか、
 無理そうなら止めちゃえ!でも無いでしょうし。
 
 夢だからって、好き勝手したとしても、
 現実だからって、サボっても、
 別に何も、変わらない。
 それで得が、あるわけでも無い。
 
 少なくとも、夢と証明されない限り、
 現実に困った人が、この世界にいるのなら。
 
 平和のために。
 我々で出来る事を。」
 
その時、鳥が一斉に飛び立ちました。
 
ヒデコ隊員が、駅の洗面所に行き、
棚にあった一輪挿しの花を、持って来ます。
 
ユルガ
「その白い花は…
 R4号の映像で見た、花に似ているが。
 
 いや、まさか、
 同じ花が、地球には無いか。」
 
ナワテ
「そうですよ、隊長。
 確率的にあり得ません。
 
 ただ一部は、異様に似た世界だったし、
 環境も割合と、近そうでしたから、
 似たような花がある事は、考えられますね。」
 
ゴウリ
「一瞬、ギョッとしたが…
 
 そうだな。
 遥か宇宙の果ての、実在するかどうかさえ、
 わからないような、得体の知れない世界の花が、
 この地球の、日本にあるわけ無いよな。」
 
ユリコ
「でも、不思議ねえ。
 
 なぜか、この花…
 どこかで昔、見た覚えがあるような…
 
 ねえ、クロスさん?」
 
クロス
「そうだね。」
 
じっと、白い花に、
見入っていたかのような、クロスでしたが、
 
ユリコ隊員の声かけ、
ヒデコ隊員のウインクで、表情を崩すと、
笑いながら、答えました。
 
ヒデコ隊員が、洗面所に戻すと、
戻って来る、その時にはもう、
なぜか花瓶だけで、花はありませんでした。
 
クロス
「ぼくたちは、今、生きている。
 
 今、ここで、みんなで、
 確かに、生きているんだ。
 
 みんなで、生きよう。
 そして、出来る事をしよう。」
 
ユリコ
「そうよね、クロスさん。」
 
誰に言うともなく、つぶやくと、
ユリコ隊員が、答えました。
 
空は青空。
雲が、流れて行きました。
 
【第338話・終わり】

 
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