第100話 『ゲームの星人』  (Cパート)

 

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【沢の内殿場神社】
 
ツベレ星人
「碁石が13個ある。
 そのうち1個だけ、他と重さが違う。
 
 天秤を3回使って見つける方法は?」
 
ゴウリ
「待て、それは、
 8個の碁石と、同じパターンだろ?
 
 それなら今度は、俺でもわかる。
 えーと、
 
 1回目にまた4個と4個だろ?
 
 重かった方が、あったら、
 2回目に2個と2個。
 3回目に1個と1個。
 
 つりあったら5個のうち、
 2回目に2個と2個。
 つりあったら最後の1個。
 
 で、
 傾いたら、重かった方を、
 3回目に1個と1個。
 
 どうだ!?」
 
ユリコ
「い、いえ、違うわ…」
 
ゴウリ
「え、なんで?
 どこが?」
 
ユリコ
「8個の碁石は、
 1個だけ、重い碁石がある。
 
 でも今度は、
 1個だけ、違う重さの碁石がある。
 
 つまり重いか?軽いか?は、
 わからないんじゃない?」
 
ゴウリ
「え…それって?」
 
ユリコ
「1回目に、
 4個と4個をかけて傾いても、
 重い方の4個のどれかか?
 軽い方の4個のどれかか?は、
 わからないのよ。」
 
ゴウリ
「すると…
 
 重い方の4個か、軽い方の4個かわからず、
 後、2回で…
 
 えーっ!?」
 
少し、考え込む一同。
 
ツベレ星人
「わからないかな?
 
 答えられないなら、約束通り、
 地球を半分もらうよ?」
 
指を鳴らす… が、何も起きません。
 
不安そうな顔で、見回す中、
緊急コールが鳴ります。
 
ヒデコ
「なんですって?
 地球が半分、去って行く?」
 
ゴウリ
「なに…言ってんだ?」
 
スイッチを入れると、スクリーンに、
半分われた地球が、去りつつある光景が映ります。
 
カジ
「こ… これは一体?」
 
マキノハラ
「いや、ありえん。
 
 破壊なら、まだわかるが、
 半分切ったまま、移動するなど…!?」
 
ナワテ
「こ、これ、
 切り口のところは、どうなってるんだ?」
 
ツベレ星人
「心配ない。
 何も心配ない。
 
 言った通り、地球を半分もらうだけだ。
 壊したり、破壊したりはしない。 
 
 どっちの半分も、これまで通りだよ。」
 
ゴウリ
「い、いや、だからってよ!?」
 
クロス
「待ってくれ、
 わかった!」
 
ずっと黙って、テーブルの上の小物13個で、
考えていたクロスが、片手を上げます。
 
クロス
「1回目に4個と4個をかける。
 
 この時、
 1、つりあう。
 2、一方が傾く。
 
 どちらかになる。
 
 1のつりあった場合。
 つりあった8個の碁石は、
 目的の碁石では無い。
 
 だから、
 2回目、
 つりあった8個のうちの3個と、
 残した5個のうちの3個をかける。
 
 この場合も、
 1、つりあう。
 2、一方が傾く。
 
 どちらかになる。
 
 1の場合は、
 すでにかけた中から、1個の碁石と、
 残した2個のうち、1個をかける。
 
 3回目、
 これで、つり合っていた時は、
 最後の1個が、目的の碁石。
 
 2、で一方が傾いたら、
 傾いた方が目的の碁石。
 その3個のうちの、1個と1個をかける。
 
 3回目、
 2回目で傾いた時、下がっていたなら、
 目的の碁石は重いので、下がった1個。
 2回目で傾いた時、上がっていたなら、
 目的の碁石は軽いので、上がった1個。
 
 次、
 1回目で
 2、一方が傾いた場合。
 
 目的の碁石は、
 重い方の4個の1つで重い
 か、
 軽い方の4個の1つで軽い
 か、どちらか。
 
 そこで2回目、
 重い方の4個から3個
 軽い方の4個から2個取り、
 5個にして、残していた5個とかける。
 
 この2回目でも
 1、つりあう。
 2、一方が傾く。
 
 どちらかになる。
 
 つりあった場合は、残った、
 重い方の残り1個と
 軽い方の2個のうちの、どれかだから、
 
 重い方の残り1個と、
 軽い方の2個のうちの1個を、一方に、
 もう一方に、
 最初に残した、5個のうちの2個を乗せる。
 
 この3回目でも、つりあえば、
 最後に残した1個の碁石が目的の碁石で、
 目的の碁石は軽かった。
 
 下がれば、目的の碁石は重かった1個。
 上がれば、目的の碁石は軽かった1個。
 
 一方が、傾いた場合、
 重い方の1個か
 軽い方の2個のどちらかになるので、
 
 3回目、やはり、
 一方に、重かった方の碁石1個と、
 軽い方の2個のうちの1個を乗せ、
 もう一方に、
 最初に残した、5個のうちの2個を乗せる。
 
 最後まで、つりあったら、
 軽い方2個のうち、かけずに残した方で、
 目的の碁石は軽かった。
 
 下がれば、目的の碁石は重かった1個。
 上がれば、目的の碁石は軽かった1個。」
 
ツベレ星人
「正解。」
 
スクリーン上の地球が、徐々に戻って行きます。
 

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【UST作戦室】
 
ツベレ星人
「ここまでは、楽しかったよ。
 名残惜しいが、最後の問題だ。
 
 私が私なのはなぜか?」
 
ゴウリ
「な、なんだそりゃ!?」
 
ユルガ
「て、哲学の… 問題なのか…?」
 
リオ
「わかる?」
 
シズカ
「いや… 唯一無二の解答は…
 確か無かったような。
 
 無い証明みたいなのは、あった気がするが、
 この手は、うろ覚えだ。」
 
リオ
「や、役に立たん」
 
ユウキ
「半ば問題の意味が、いくつも取れそうだが…」
 
マキノハラ
「私が私として存在している理由…かな?」
 
ヒデコ
「そ、それどう言う事?」
 
マキノハラ
「つまりだ。
 
 私は…
 と言うか、私の意識は、
 別に私じゃ無くても、良かったわけだ。
 私は、
 ユルガ隊長でも、ヒデコ君でも良かった。
 
 自由意思や好き好んで、自分の肉体を選んで、
 生まれたわけじゃ、無いだろうからね。」
 
ユリコ
「そ、そんな事、言われたら、
 答えようが、無いんじゃ無いの?
 
 どう答えれば良いの?」
 
ドノバ
「俺、この手の観念論はパス。」
 
ユウ
「あ、あたしも…
 
 あたしに正解、答えられる自信無い。」
 
ナワテ
「そ、そんな事言われて、
 一抜けた、してたら、
 ここの全員、専門外でしょうに。」
 
アカイ
「それでも、問題になるって事は、
 何らかの形で、答えがあるって事なのか?」
 

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【ムーンベース】
 
カツノ
「い、一度正常に戻った、地球が、
 再び、割れて行きます…」
 
ミナミ
「冗談じゃねぇよ。
 
 こんなの俺達に、どうしろって言うんだ!?」
 
唖然としたまま、地球を見入る一同。
 

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【UST作戦室】
 
マキノハラ
「人間原理宇宙論では、人間がいるので、
 宇宙が出来た的な、逆転の発想が…」
 
ユリコ
「いえ、博士、
 今はそれ、関係無いです。」
 
ナワテ
「改まって、考えると、
 私の定義自体、どうすれば良いんだ?」
 
シズカ
「スワンプマンとか、水槽の脳とか、
 胡蝶の夢とかの、あれか?」
 
リオ
「いや、それじゃお話が、
 横に広がったり、さかのぼるだけでさ…」
 
ドノバ
「姉さんには、答えられそうなのか?」
 
リオ
「わかるかっ!」
 
ツベレ星人
「答えられなければ、
 すまないが地球は…」
 
と、
その時、ドアが開くと…
 
カジ
「ふ、副長官!?」
 
スガノ
「私が私なのはなぜか?
 答えは
 
 “たまたま”
 
 もしくは、
 
 “わからない”。」
 
ゴウリ
「え?
 そんなので良いの?」
 
ユルガ
「そう言う事…?」
 
ヒデコ
「それで???」
 
思わず2人を、見比べる全員ですが、
 
ツベレ星人
「OKだ。」
 
片手を上げるツベレ星人。
 
スガノ
「星人は、十分フェアだよ。
 
 録音を聞いたが、星人は、
 『問いに答えられたら』
 と言っている。」
 
ユウキ
「え、あ。
 そうか… それって…」
 
スガノ
「多義的な質問を出し、
 Aと答えたら、正解はB
 と、
 言う事も出来るが、そうはしていない。
 
 唯一無二の、正解を言えなければ、
 不正解と言う事も、していない。
 
 そもそも「答えられたら」であって、
 正解とすら、言っていない。」
 
ヒデコ
「あ、それじゃあ、
 仮にデタラメを、答えても?」
 
スガノ
「そう、こっちがそれやって、
 『答えはしただろう?』と、
 言い張る事も出来る。
 
 でも、こちらも生真面目に、
 星人に対して、正解を考え続けた。
 
 星人もまた、その答えを受け取り、
 『答えられたかどうか?』で、
 公平に判断してたのだろう。
 
 元より、
 地球を半分なんて事が、出来るなら、
 それが目的なら、最初からすれば良い。」
 
シズカ
「それは… 思いました。」
 
ユウキ
「星人は最初から、ゲームをする事。
 ゲームを楽しむ事自体が、目的だった。」
 
出て行こうとする、スガノ副長官。
 
ゴウリ
「あ、あれ?
 副長官?
 
 ゾフィの正体、聞かないの?」
 
スガノ
「必要無い。」
 
ドアが閉まります。
  

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ツベレ星人
「付き合ってくれて、ありがとう。
 
 満足したよ。
 じゃあ、約束通り、
 ゾフィの正体を教えようか。
 
 ゾフィはね、実はこの中にいるんだ。」
 
一瞬、緊張が走る全員。
 
ツベレ星人
「ゾフィは、USTの、
 隊員の1人に化けている。
 
 正体はお前だ!」
 
ツベレ星人の手から、光が伸び、
ナワテに当たると、壁の影がゾフィになります。
 
ユルガ
「ナ、ナワテ、お前!?」
 
ゴウリ
「お前が、ゾフィだったのか!?」
 
ナワテ
「ち、ち、違いますよ!
 
 冗談じゃない!」
 
ツベレ星人
「自分で知らないのも、無理はない。
 
 彼自身が日常的に、
 無意識にゾフィに乗り移られ、
 しかし、その自覚は一切無い。
 
 そしてピンチの時、ゾフィに強制的に操られ、
 変身して戦い、終われば元に戻る。
 
 そうして戻った時には、記憶を消され、
 変身してない、偽の記憶を植え付けられる。
 
 どこまで、行っても、
 本人自身が知らず、気づかないんだ。」
 
ナワテ
「ま、まさか…
 
 まさか、本当に…
 
 ぼくが、ゾフィだったなんて!?」
 
クロス
「い、いや待て。
 
 それだと…!?」
 
ツベレ星人
「…と言うのは、嘘だ。
 
 そう。
 この理屈は、確かに成り立つが、
 一方で、反証不能だ。
 
 嘘だったとしても、確かめる方法がない。」
 
ゴウリ
「なんと!?」
 
ツベレ星人
「真実と言うのは、絶対・不変では無い。
 
 自分より知識・科学・技術の上位者に合えば、
 容易にいくらでも、覆させられる。
 それがある種の、真実だ。
 
 どうだい。
 良い事教わったろ?」
 
ゴウリ
「ど、ど、どこがだ!
 これじゃ、ほとんど詐欺じゃんか!」
 
ツベレ星人
「そんな事、言って良いのか?
 本当は君が、ゾフィかもしれないんだ。
 
 なんならここで、正体を暴こうか?」
 
ゴウリ
「い、い、いや、いいよ!
 
 暴かれた正体が、本当かどうか、
 それがまた、わからないんだろう?」
 
ツベレ星人
「わかって来たじゃないか。
 
 実は真実は、絶対では無い。
 
 自分より知識・科学・技術の上位者に合えば、
 真実は変わってしまう。
 
 変わった真実の、前が本当の真実か?
 後が本当の真実か?
 確かめる術自体が、無いのだからね。」
 

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【極東基地 外】
 
夕日を見ながら、伸びをしているクロス。
 
一瞬、ウルトラホープを、フラシュさせると、
心の中に、ゾフィのイメージが現れます。
 
ゾフィ
「どうした?
 
 決めたのか?」
 
クロス
「うん。決めた。
 もう少し、このままでいたい。
 
 最後には別れる事は、わかっている。
 
 地球の平和は、地球人の手で、
 守らなくてはいけない事もわかる。
 
 今、君の力が無くなったら、
 大きな危機かも、知れないが、
 だからと言って、打算や都合で、
 君の力を借り続けるのも、潔くない。 
 
 色んな事を、考えたが…
 
 仮に、そう言うのが全部無くても。
 仮にゾフィが、全く無力だったとしても。
 
 ぼくは君が好きだし、せめてもう少し、
 君に地球を、見守って欲しい。
 
 君の力を、借りなくても、
 地球は、きっと大丈夫だと、
 それをちゃんと、見届けてから、
 安心して、帰って欲しい。」
 
ゾフィ
「わかった、クロス。
 
 実は、私も、
 気持ちとしては、まだ地球を見たい。
 ここで帰るのは、少々心残りだった。
 
 だが、だからと言って、
 無理にいたいわけではない。
 君の気持ちを尊重したい。
 
 だから、もう充分と言うなら、
 もちろん、去るつもりでいたが…
 
 そう言う事なら、それで良い。
 
 納得が行くまでは、戦い続け、
 この星の未来を、作って行こう。
 
 そして時が来たら、次へ進もう。
 それまでは、よろしく頼む。」
 
消えそうになる、夕日を見つめていると、
後ろから、声がします。
 
ユリコ
「あ、クロスさん、こんなところにいたー!」
 
ヒデコ
「そろそろ休憩、終わりですよー!」
 
クロス
「了解!」
 
手を振ると、何かが吹っ切れたように、
2人に向かて駆けだす、クロス君でした。
 
【第100話・終わり】

 
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