第149話 『戦え!IDM』  (Bパート)

 

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3度目の会戦でも、勝負はつきませんでした。

 
UST、空軍、陸軍の、必死の物量戦で、
今度も村侵入は、阻止しましたが、
ほとんど手傷も、追わせられないまま、
怪獣は地中に、潜ります。
 
そして、科学センターから、
新型の対怪獣・大型徹甲焼夷弾が届きます。
 
最大の威力で、火力は絞った、
これはある種の、妥協案でした。
 
が、
どこからか、様々な事情が漏れたらしく、
仮設対策本部に、例の若者がやって来ます。
 
警察官A
「あのう…例の若者達が…」
 
ユルガ
「何かあったんですか?」
 
伊谷寛
「聞いたよ。
 怪獣を攻撃するのはやめてくれ!
 
 怪獣を倒したら、病気の人は、
 もう治らないんだろう?」
 
ゴウリ
「お前達、どこからその話を…」
 
柳島有哉
「もうみんな聞いたんだから、
 隠したって無駄だよ。」
 
中田信三
「知ってるぜ。
 怪獣を倒したら、今病気の人は、
 みんな治らずに、死んじゃうんだろ?」
 
飯島晃
「俺達だって、光を浴びて、
 すでに、病気になってるんだ。
 まだ死にたくない。」
 
柳島有哉
「そうだ。
 地球防衛機構は、人命を守るのが仕事だろ?
 だったら、攻撃は止めてくれ!」
 

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大声で騒ぐため、村人も段々集まり、

次第に、動揺し始めます。
 
村人A
「あのう…
 怪獣を倒すと、病気が治らないと言うのは?」
 
ユリコ
「まだ、そうと決まったわけじゃ…」
 
伊谷寛
「嘘だ!
 こいつら、自分に都合が悪いから、
 嘘をついているんだ!」
 
柳島有哉
「倒さなくても、麻酔銃とか、
 生け捕りにしてくれれば、良いじゃないか?」
 
ゴウリ
「あの怪獣には、麻酔弾もガスも効かない。
 その上、バイルフェイル鉱自体が、
 装甲となっている強敵だ。
 
 生け捕りや、手加減して、
 何とか出来るような、相手じゃないんだよ!」
 
伊谷寛
「ほらみろ!
 俺達を犠牲にして、怪獣を倒すつもりだ。」
 
ゴウリ
「どこまで自分の事だけなんだ、お前ら。」
 
が、
さらに騒ぎは、大きくなってしまいました。
 
村人も集まり出し、又聞きから憶測が広がり、
怪獣を倒すべきか?倒さないほうがいいか?
戦うか?戦わないか?で、意見は分かれだし、
ところどころでは、ケンカ腰でした。
 
そこへ入院中だった、患者のうち、
動ける者が、避難で通りかかり、
話を聞き付けて、何人かが前へ出て来ます。
 
患者A
「戦って下さい。
 バイルフェイル鉱は、坑道の中にだって、
 まだ少しは、あるかも知れませんし、
 私達は、今鉱石が途切れても、
 すぐに死んでしまうわけじゃない。」
 
患者B
「そうです。
 このまま怪獣を、黙って村に入れれば、
 それ以上の犠牲が出ます。
 
 そしてその先は、すぐ下頭横市だ。」
 
ところが、少年達、
バイルフェイル鉱窃盗グループは、
 
飯島晃
「やめてくれ!
 今は、怪獣には手を出さないで、戦わないでくれ!
 俺は目の前で光を浴びてしまって、症状が重いんだ。
 助からない!」
と詰め寄ります。
 
ゴウリ
「貴様… !
 元はといえば、全部お前達のせいじゃないか!
 
 巻き込まれた側の、この人達でさえ、
 自分の事より、戦ってくれと言っているのに…。
 恥ずかしいとは、思わんのか!」
 
伊谷寛
「ああ、悪かったよ!
 でも、こんな事になるなんて、知らなかったんだ。
 
 俺達はただ、鉱石を売って、金にしたかっただけなのに、
 命で償わなきゃいけないほど、悪い事なのかよ!」
 
中田信三
「そうだよ、ちょっとひどすぎる!
 これで、怪獣を吹き飛ばして、
 鉱石での手当が、出来なくて死んだら、
 あんた達の、責任じゃないか!」
 
飯島晃
「そうだ!
 あんた達は怪獣から、人命を守るのが仕事だろう?
 頼む、今は戦わないでくれ!」
 
ゴウリ
「この野郎、自分の事ばかり…」
 
ユルガ
「よせ。落ち着け。」
と、
つかみかかろうとするゴウリを止め、
ユルガ隊長が割って入った時、
後ろで黙って、基地と連絡をとっていた、
クロスが一歩、前へ出て来ます。
 
クロス
「戦いましょう!」
 
ナワテ
「どうするんだ? 何か使うのか?」
 
クロス
「いえ、通常攻撃中心に牽制して、
 町の東側まで、なんとか追い込みます。
 
 そこまで行けば、泥炭地で、
 埠園池(ふえんいけ)…、
 大きな溜池が、あるそうなんです。
 今、B班に確認しました。」
 
ユルガ
「なるほど、池に落として動きを止めるのか。
 
 よし、それで、やってみよう!」
 
が、さらに、
 
伊谷寛
「東の溜池…
 
 や、止めてくれ!」
 
ゴウリ
「またかよ!
 
 今度は何なんだ!?」
 
伊谷寛
「いや… なんて言うか、その。」
 
口ごもる伊谷を、ユリコが説得します。
 
ユリコ
「意見が異なる場合、
 どちらかだけの意見を、100%は無理だわ。
 
 あなたにそれ以上の、代案があるなら、
 みんなも耳を、貸すと思うけど。
 
 黙って暴れるがままには、させられないのよ。
 何か名案は無いの?」
 
伊谷寛
「それは…」
 
患者A
「構いません、戦って下さい。」
 
村人A
「あなたの言う通り、成すがままには出来ない。
 どうぞ、戦って下さい。」
 
結局、少年達は不満そうにしながらも、
押し切られる形で、作戦がスタートします。

 


 

陸軍は、部隊の一部を割いて、
該当区域村民の、避難を優先するとともに、
陸軍主力、空軍、USTで、
怪獣の追い込み作戦が、始まります。
 
四たび現れた、鉱体怪獣セルダンを迎え撃ち、
3軍連合チームは、東側に追い込んでいきます。
 
USTは地底戦車≪エルグランザー≫を使い、
挑発しては、地底に潜りで、
作戦は溜池手前まで、順調に行きましたが…
 

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【埠園池(ふえんいけ)=東の溜池 手前】

 
クロス
「こちら≪コンプリー≫、クロス。
 
 作戦少し待って下さい、人がいる。」
 
ゴウリ
『な、なんだとう!?』
 
ユリコ
『作戦は村中の人が、知ってるはずでしょ?
 一体、誰が?』
 
クロス
「何人かの… あ、例の少年達だ。
 
 家…?
 
 池の脇の家に、向かっているようです。
 行ってみます。」
 
ゴウリ
『おい、クロス!?』
 

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【≪エルグランザー≫ コクピット】
 
ユリコ
「こちら≪エル≫、ユリコです。
 聞いた通りです。
 
 全体通達、お願いします。」
 

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【≪アーク1号≫ コクピット】
 
ユルガ
「わかった。
 
 こちら、作戦指揮者ユルガ、
 全軍一時、怪獣を現在位置で停止に。
 
 繰り返す、
 誘導作戦は、一時中断、
 怪獣は現在位置で、確保に全力。」
 
ナワテ
「一体、どうなってんだか、もう!?」
 
ゴウリ
「だったら、俺、ちょっと、
 クロスの方、行ってみます。
 
 ここで飛んでても、しょうがない。
 そっち片付かなきゃ、動かなそうだ。」
 
ユルガ
「わかった、気をつけてな。」
 
≪アーク1号≫から分離する≪アーク・ウイング≫。
 
ナワテ
「家って、言ってましたね?
 
 隠れ家に、金でも取りに行ってんのかな?」
 

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【埠園池(ふえんいけ)=東の溜池 手前
 掘っ立て小屋】
 
家の中に入ったクロスが、見た物は…
 
老婦人を、脱出させようとして、
手こずっている、少年達でした。
 
クロス
「何やってるんだ?」
 
伊谷寛
「この人が、ここにいるんだよ。
 
 脱出させなきゃ、巻き込まれる。」
 
クロス
「それで君達は…
 
 いや、車椅子じゃ、出てからが無理だ。
 丈夫なシーツを、担架にした方が良い。
 
 物干し竿あるか?」
 
鹿辺茂
「あ、あります。」
 
と、ゴウリが飛び込んできます。
 
ゴウリ
「何やってんだ、お前ら!?
 
 …って、どうしたの?」
 
クロス
「詳しい話は後ですが、病人がいます。
 避難させないと。」
 
ゴウリ
「よし、任せろ!
 
 と言いたいところだが、怪獣迫ってるぞ?」
 
クロス
「ゴウリ隊員、ここを頼みます。」
 
ゴウリ
「あ、おい!?」
 
飛び出すクロス。
 

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リモートレーザーに、照明弾をセットし、
何発か、鼻先に撃つクロス。
 
小屋の手前まで、迫っていた怪獣は、
それで注意が行き、
池の横で、クロスを追い出します。
 
少し走った後で、人がいないのを見ると、
ウルトラホープを、フラッシュ。
 
閃光と共に、ゾフィが現れます。

 


 

 

 
重量級の怪獣に突進し、下からのど輪のように、

突き上げて支え、小屋を守ります。
 
ゴウリと少年達が、必死に足元を駆けて行きます。
高熱粉塵をはき、暴れ出す怪獣を、
必死に抑えるゾフィ。
 
全員の避難を確認すると、横倒しに投げ捨てます。
 
ゴウリ
「よおし、ゾフィ。
 さあ、思いっきり戦ってくれ!」
 
伊谷寛
「でもゾフィが、M87光線を使ってしまったら…」
 
不安そうに見守る、少年達。

 


 

 
怪獣はやはり、泥炭地は嫌って近づこうとせず、

その場で、高熱粉塵をはいて攻撃します。
 
粉塵に掃射され、巻き込まれた小屋が爆発します。
 
高く飛んで避けたゾフィは、そのまま背中に着地、
馬乗りのまま、チョップを浴びせますが、
案の定全く答えず、振り飛ばされます。
 
粉塵攻撃を、サイクロンバリアで巻き取り、
球状にして投げ返すと、腹で爆発しますが、
これもあまり、効いてない様子。
 
前進する怪獣と、池を背にして接近戦になります。
 
と、
右手から放たれた波動が、怪獣を透過。
一瞬心臓部に、光点が浮かぶのを見ると、
引いた右手に気合を込めて、正拳を放ちます。
 
M87・バイタル・ストライク・パンチ。
 
拳から出た、針状のM87光線が、
急所を貫通して、抜けて行きました。
 
怪獣はその姿のまま、硬直すると、
動かなくなり、目の光が消えます。
 
ゴウリ
「や、やった!?
 
 ゾフィが、やったぞ!
 怪獣をそのまま、倒してくれたんだ!」
 
伊谷寛
「ゾフィ…」
 

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【UST作戦室】

 
ユリコ
「結局、あの少年達…
 
 伊谷君は、おばあちゃん子で、
 おばあちゃんを、助けたかったのね。」
 
ナワテ
「だったら最初っから、言ってくれれば良いのに。」
 
ヒデコ
「言えなかったんでしょう。
 
 不良ぶって、悪ぶってるのに、
 おばあちゃんのためとか。」
 
ユリコ
「お金も、おばあちゃんのために、
 新しく家を、建てたかったみたいよ。
 
 色々あって、あのおばあちゃんね、
 池の脇の小屋しか、行き場が無くなり、
 具合が悪いのに、一人暮らししてたらしいの。
 
 その小屋も、未登記らしくてね、
 表沙汰にしないうちに、お金作って、
 全部、済ませたかったらしいわ。」
 
ヒデコ
「どうもそれなりに、バイトを探したり、
 したりは、してたみたいだけど…
 
 高校生だし、小さな村でしょ?
 まとまったお金は、とても。」
 
クロス
「やった手段は、確かに正しいとは言えない。
 
 でも、そこに至った理由や事情はあるし、
 そこは汲んでやらないと…ですね。」
 
ユリコ
「あの子たち…
 メディカルセンターでしたっけ?」
 
ヒデコ
「そです。
 
 さっきゴウリ隊員が、ちょっと様子見て来るって。」
 
クロス
「事情がわかったら、気になるんですねえ。」
 
ユリコ
「私も、ちょっとだけ…
 
 様子見て、来ようかな?」
 

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【メディカル・センター】

 
ユリコが病棟に近づくと、聞こえる怒鳴り声。
 
ゴウリ
「何なんだよ、お前らは!
 
 配膳を手伝ってると言うから、感心と思ったら、
 プリンやイチゴを、ガメてるとか…
 
 小学生か!」
 
伊谷寛
「どうせ余るし、気付かなきゃ同じじゃんか?
 
 大体、騙される方が悪いんだぜ。」
 
柳島有哉
「そうそう。
 頭の固い隊長の部下は、やっぱり固いね。
 
 もうちょっと、世の中を知りなよ。」
 
ゴウリ
「貴様ら… 骨にひびが入ったと聞いたから、
 手加減してやってりゃ、調子に乗りやがって。
 
 何でもなけりゃ、ぶっ飛ばしてるとこだ!」
 
中田信三
「ぎゃははは、嘘に決まってんじゃん。
 そっちの方が、同情してもらえるからだよ。
 
 医者も看護師も、誰も気付かないなんて、
 本当に世の中、バカばっかりで簡単だよ。」
 
ユリコが物陰で、半ば呆れて聞いていると、
そっと、ユウが来ます。
 
ユリコ
「ちょ、ちょっと。
 
 ユウちゃん、あれ…」
 
笑って口元で、指を立てるユウ。
 
ユウ
「みんな知ってますよ。
 わからないわけ、ないじゃ無いですか。
 
 でも、まあ、室長達とも相談して、
 乗ってあげてるんです。
 
 おやつ代くらいで、働いてくれるんなら、
 良いんじゃないかって。」
 
ユリコ
「でもぉ…
 
 かえって、増長しちゃわない?」
 
柳島有哉
「バカ隊長の部下は、やっぱりバカだぜ。」
 
伊谷寛
「バカ同士で、気が合うんだろ?」
 
飯島晃
「だな!
 全員バカで、うまく行ってんだ。」
 
ゴウリ
「おのれ、貴様ら…
 俺の事はともかく、隊長への悪口は許せん!」
 
伊谷寛
「あれっ?
 なんですか?
 
 防衛機構が一般人に、暴力振るって良いのかな?」
 
柳島有哉
「入院患者に、暴力振るって良いんですか?」
 
ゴウリ
「やかましい!
 もう我慢ならん、堪忍袋は木っ端みじんだ。
 食らえ、小僧!」
 
人が吹っ飛ぶ音や、はやし立てる声が聞こえて来ます。
 
ふとユリコが、気配で後ろを向くと、
エレベーターの、ドアが開き、
ユルガ隊長が、立っていました。
 
ユリコ
「あ、た、隊長!?」
 
ユルガ
「私も気になって、様子を見に来たんだが…」
 
結構な取っ組み合いの音、物が壊れる音が聞こえてきます。
 
ユルガ
「ま、なんだな。
 ここは、病院だし。
 
 ゴウリが骨の2、3本も折って、
 それでもまだ、止まらないようなら、
 ユリコ君が、止めてやってくれ。」
 
ユリコ
「あ、は、はい。」
 
と言って、ふと考え
 
ユリコ
「あの… 隊長、
 骨の2、3本までは、良いんですか?」
 
が、その時、ユルガ隊長は笑顔のまま、
エレベーターのドアが、閉じました。
 
【第149話・終わり】

 
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