好きな詩北原白秋『とんぼの眼玉』より 金魚きんぎよ 母かあさん、母かあさん、どこへ行いた。 紅あアかい金魚きんぎよと遊あそびませう。 母かあさん、帰かへらぬ、さびしいな。 金魚きんぎよを一匹いつぴき突つき殺ころす。 まだまだ、帰かへらぬ、くやしいな。 金魚きんぎよを二匹にイひき締しめ殺ころす。 なぜなぜ、帰かへらぬ、ひもじいな。 金魚きんぎよを三匹さんびき捻ねぢ殺ころす。 涙なみだがこぼれる、日ひは暮くれる。 紅あアかい金魚きんぎよも死しイぬ、死しぬ。 母かあさん怖こはいよ、眼めが光ひかる、 ピカピカ、金魚きんぎよの眼めが光ひかる。