あの人の声 | 永劫回帰

永劫回帰

価値なき存在

夢の中の見知らぬ彼女は暗い顔で言う

 

『あなたは私を傷つけただけの人なのよ』

 

私には全く心当たりはないが

 

彼女がそう言うのならそうなのだろう

 

如何にも私がやりそうなことだ

 

私が謝罪の言葉を口にすると

 

彼女はさらに顔を暗くして呟いた

 

『あなたのそういったところがイヤなのよ』

 

彼女は実に悲しげに続けた

 

『あなたはいつもいとも簡単にやすやすと謝罪するわ

でも本当に申し訳なく思っている人はそんなふうに謝ったりしないものよ』

 

彼女の言うことはもっともだ

 

私はあまり物事を真剣に考えていないようだ

 

約束は守った試しがないし誠実な態度とは全く無縁に生きてきた

 

見知らぬ彼女に責められるだけの資格は十分ありそうに思えた

 

果てさてでは一体どうしたものか

 

何事も直ぐに捨て去ってしまう私の頭には少々荷が重い難題だ

 

ならばいっそのこと彼女にどうすれば良いのか教えてもらおう

 

何よりの名案だ

 

答えは彼女が知っているに違いあるまい

 

彼女の満足する答えを問うてみた

 

『何もしないで何もしないで何も望んでいないの

あなたからはもうこれ以上何もいらないのよ』

 

なるほど実に明快な答えだ

 

私は必要とされていない

 

彼女は苦しそうに涙を流している

 

私には泣かれるようなことをした憶えはないがきっと彼女が正しいのだろう

 

だから私はここを立ち去ることにしよう

 

どうやらこれ以上は迷惑のようだから

 

そろそろ夢も終わりのようだ

 

そうだな目覚めたら今日から憂鬱になろう

 

とりあえず陰鬱に時を過ごしてみよう

 

きっとそれが良いそれが良い

 

 

-己れの傲慢さを想って-