第2回電王戦~その6 英知の結晶 | タマネギの流氷漬け

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将棋を中心に、長男・次男の少年野球等、子供たちの日々の感じたことに対して書いていきます。

対策は定跡か定跡外のどちらの戦法を採るかに大きく分かれる。

定跡外戦法は第1回電王戦にあった「6二玉戦法」が記憶に新しい。米長が何回も何回も相手プログラムと対戦して対コンピュータプログラム専用の戦法として編み出したので今回の対戦にも十分応用は可能であろう。

しかし、これはボナンザ系統プログラムに対してのみ有効な作戦であり(ボナンザは必ず飛車を振る)、周知の事実になった以上、各プログラムは必ず対策を立ててくるはずで、その戦い方をそっくりそのまま拝借するのは無謀過ぎる。

よって定跡外しの戦い方は、米長戦法とはまた違った戦法を考案するか、米長戦法をアレンジして居飛車で来られてもしっかり対応できるように工夫する必要がある。

ただ引退した棋士ならいざ知らず、現役の棋士にはそんな時間は皆無であろう。

一方定跡の方は3つに枝分かれする。

1つは辿っていくと負けという結論に相手を落とし入れる作戦。これはプロの日常の延長線上の戦い方であり、卑怯でも何でもない。回避できない方が不勉強であり悪いのである。

もう1つはある程度定跡が整備されているがそれでも結論の出ていない局面に敢えて行く作戦。これは完全に力比べであり、現役を離れた棋士にはできまい。また将棋ファンにとってはこれが一番痺れ、垂涎ものであるのだ。

要はある程度研究した局面になっても、そこからはがっつり4つに組み合って完全な力勝負を両者が演じてほしいのが我々将棋ファンたちの本音である。

3つめはプロ間でもまだ定跡が整備されていないが、真新しく特に後手番で有力視されている戦法を採用する方法である。角道オープン振飛車がその代表格であろう。ただこれは採用数が少ないためまだ対策が進んでいないというだけでコンピュータ側に上手い返し技が出るリスクもある。現にゴキゲン中飛車は一時の流行が嘘のように、すっかり下火になってしまったのも採用され過ぎて、皆に抗体が出来てしまったからであり、今後どうなるか分からない。

以上プロ棋士側の対策は、①定跡外、②定跡嵌め、③定跡最前線、④定跡未開拓の4つになる。

私個人的にはコンピュータにしか通じない①は採用してほしくない。事前研究して穴をつつくというのはどうもフェアではない。もちろん米長の採った作戦を非難しているわけではない。6二玉戦法はすでにプロ棋士を引退した米長の出来うる立派な作戦だったと今でも思う。

しかし今度の戦いは前回の戦いとは訳が違う。そう、引退ではなく現役のプロ棋士が戦うのである。 だから先手番なら迷わず③で勝負してほしい。今までプロ棋士たちが脳みそに汗をかき、命を削って作り上げてきた英知の結晶、定跡で。それがプロの矜持というものだ。

その7に続く