薬屋探偵妖綺談
特 効 薬
「うぅ…寒い~っ」
2月上旬、とある日の朝。立春が過ぎ、暦の上ではもう春だというのに日々の寒さが和らぐことはなく、今朝も真っ白な雪が降っている。
リベザルは寒さに身を縮めながらダイニングに向かった。
「おはようございます」
ダイニングに入り、キッチンの方へ挨拶をする。いつもそこで朝食の準備をしている長身の青年。その彼と朝の挨拶を交わすのが、リベザルの一日の始まりだった…――――が。
「……兄貴?」
返事が返ってこない。調理をする手を止めて振り返り、穏やかに笑う青年の姿がない。
リベザルは首を傾げた。
「兄貴、どこですか?」
彼が兄貴と慕う青年――座木の後ろ姿。食欲をそそる美味しそうな香り。その全てが夢だったのではないかと思うほど、そこには何もなかった。あるのは、食器も調理道具も置かれていない忘れ去られた調理場のみ。
リベザルは突然大きな不安に襲われた。自分一人がこの世界に置き去りにされたような、そんな孤独感。
「…………」
暫しその場で立ち尽くし、呆然とする。しかし何とか現実に戻って冷静な判断を下した。
「そうだ!もしかしたら部屋かも―――」
言い終わらないうちに、座木の部屋へ向かう。そしてドアの前で深呼吸し、逸る気持ちを抑えると、小さくノックをした。
2月上旬、とある日の朝。立春が過ぎ、暦の上ではもう春だというのに日々の寒さが和らぐことはなく、今朝も真っ白な雪が降っている。
リベザルは寒さに身を縮めながらダイニングに向かった。
「おはようございます」
ダイニングに入り、キッチンの方へ挨拶をする。いつもそこで朝食の準備をしている長身の青年。その彼と朝の挨拶を交わすのが、リベザルの一日の始まりだった…――――が。
「……兄貴?」
返事が返ってこない。調理をする手を止めて振り返り、穏やかに笑う青年の姿がない。
リベザルは首を傾げた。
「兄貴、どこですか?」
彼が兄貴と慕う青年――座木の後ろ姿。食欲をそそる美味しそうな香り。その全てが夢だったのではないかと思うほど、そこには何もなかった。あるのは、食器も調理道具も置かれていない忘れ去られた調理場のみ。
リベザルは突然大きな不安に襲われた。自分一人がこの世界に置き去りにされたような、そんな孤独感。
「…………」
暫しその場で立ち尽くし、呆然とする。しかし何とか現実に戻って冷静な判断を下した。
「そうだ!もしかしたら部屋かも―――」
言い終わらないうちに、座木の部屋へ向かう。そしてドアの前で深呼吸し、逸る気持ちを抑えると、小さくノックをした。
コンコン…
………中から返事はない。もう一度同じリズムで繰り返してみる。
コンコン…
「……………はい」
「!」
小さいが確かに座木の声だ。リベザルはほっと安堵し、胸を撫で下ろした。
「兄貴?おはようございます」
静かにドアを開けて室内に入ると、目の前に敷かれている布団から荒々しい呼吸が聞こえてきた。重ねた毛布も上下に大きく動いている。
「……兄貴?」
「……は……はっ………リベザル、だね?……おはよう」
顔をこちらに向けて微笑んだ座木の顔は青白く、額には汗をかいている。尋常でない彼の様子に、リベザルは慌てて枕元に座り込んだ。
「兄貴、どうしたんですか?すっごく顔色悪いですっ」
「…うん……朝から何だか熱っぽくてね。どうやら風邪を引いてしまったみたいなんだ……。ゴメンね、朝食の準備まだできてなくて……」
申し訳なさそうに微笑む座木に、リベザルは左右に大きく首を振った。
「そんなのっ、風邪なら仕方ないです。心配しないで下さい」
「でも……」
「寝てて下さい。今、水枕持ってきます!……あ、師匠も起こさないとっ」
起き上がろうとする座木を寝かせると、リベザルは忙しなく部屋を出ていった。その足で真っ先に向かったのは、彼が師匠と慕う秋の部屋だった。
「師匠!師匠、起きて下さいっ!」
ノックもそこそこで室内に入り、秋を起こしに掛かる。彼の声に反応して、秋が僅かに身じろぎした。
「…んー……」
「師匠、起きて下さいってば~!」
「うるさい」
「うぅ…」
急かし立てるリベザルに容赦なく秋の鉄拳が入る。リベザルは泣きたくなったが、先程の苦しそうな座木の姿を思い出し、めげずに再び挑みにいく。
「兄貴、熱があるんです。早く水枕持ってかないといけないんですっ」
秋の肩を揺さ振りながら必死に訴えかける。すると、秋は半目のまま不可解な顔をした。
「………熱?誰が?」
「だから兄貴が」
「アルコールワードの後遺症でも出たのか?」
「そうじゃなくて!風邪で熱があるんですっ!」
欠伸混じりに悪態を付き、尚も毛布にくるまろうとする秋。そんな彼から毛布を奪い取り、リベザルは声を張り上げた。
普段は朝が来る度に秋の史上最悪な寝起きに泣きをみるリベザルだったが、今朝はそれどころではない。なかなか起きようとしない秋と、怖さを忘れて起こそうとするリベザルの奮闘は、この後もまだ15分ほど続いた。
「!」
小さいが確かに座木の声だ。リベザルはほっと安堵し、胸を撫で下ろした。
「兄貴?おはようございます」
静かにドアを開けて室内に入ると、目の前に敷かれている布団から荒々しい呼吸が聞こえてきた。重ねた毛布も上下に大きく動いている。
「……兄貴?」
「……は……はっ………リベザル、だね?……おはよう」
顔をこちらに向けて微笑んだ座木の顔は青白く、額には汗をかいている。尋常でない彼の様子に、リベザルは慌てて枕元に座り込んだ。
「兄貴、どうしたんですか?すっごく顔色悪いですっ」
「…うん……朝から何だか熱っぽくてね。どうやら風邪を引いてしまったみたいなんだ……。ゴメンね、朝食の準備まだできてなくて……」
申し訳なさそうに微笑む座木に、リベザルは左右に大きく首を振った。
「そんなのっ、風邪なら仕方ないです。心配しないで下さい」
「でも……」
「寝てて下さい。今、水枕持ってきます!……あ、師匠も起こさないとっ」
起き上がろうとする座木を寝かせると、リベザルは忙しなく部屋を出ていった。その足で真っ先に向かったのは、彼が師匠と慕う秋の部屋だった。
「師匠!師匠、起きて下さいっ!」
ノックもそこそこで室内に入り、秋を起こしに掛かる。彼の声に反応して、秋が僅かに身じろぎした。
「…んー……」
「師匠、起きて下さいってば~!」
「うるさい」
「うぅ…」
急かし立てるリベザルに容赦なく秋の鉄拳が入る。リベザルは泣きたくなったが、先程の苦しそうな座木の姿を思い出し、めげずに再び挑みにいく。
「兄貴、熱があるんです。早く水枕持ってかないといけないんですっ」
秋の肩を揺さ振りながら必死に訴えかける。すると、秋は半目のまま不可解な顔をした。
「………熱?誰が?」
「だから兄貴が」
「アルコールワードの後遺症でも出たのか?」
「そうじゃなくて!風邪で熱があるんですっ!」
欠伸混じりに悪態を付き、尚も毛布にくるまろうとする秋。そんな彼から毛布を奪い取り、リベザルは声を張り上げた。
普段は朝が来る度に秋の史上最悪な寝起きに泣きをみるリベザルだったが、今朝はそれどころではない。なかなか起きようとしない秋と、怖さを忘れて起こそうとするリベザルの奮闘は、この後もまだ15分ほど続いた。
*
――コンコン
「入るぞ」
「…秋」
ノックの返事を待たずに部屋に入ると、秋は座木の枕元に座った。持ってきた丸盆には、抹茶のような色をした液体の入ったコップが一つ載せられている。
「リベザルから聞いた。風邪だって?」
「………はい」
「この寒空の下、防寒具も無しに店の前の掃除なんかしてるからだ」
「ですが……雪が溶けて泥まみれだったので、滑るといけないと思いまして……」
「まぁね。店の前で滑って転んで頭打って自分が薬必要になるなんて、薬屋として笑い話にもならない。どこかの赤猿ならやりかねないが」
秋は縁起でもないことを言って肩を竦める。そして座木の額に手を当てた。
「………」
彼の冷たい手は、先程リベザルが持ってきてくれた水枕のように心地良い。睡魔が座木を襲い始める。
「大分熱が上がってるみたいだな。咳は?」
「ありません」
「んじゃこれで用が足りるな」
そう言って盆の上のコップに視線を落とす。座木も秋につられて目をやるが、そのどろどろとした抹茶色の液体に思わず顔を顰めた。
「………これを飲むんですか?」
「Of course.」
当然だとさらりと言ってのけた秋に、座木は困ったように眉を下げる。すると秋はニッと意地悪く笑った。
「僕の腕が信じられないのか?」
「……いえ。信じてます」
「なら問題ないだろ」
………とは言っても、やはりこの薬(?)を飲むのはいくらか躊躇われる。座木は眠いこともあり、秋が部屋を出ていってからゆっくりと飲むことにした。
しかし秋は出ていこうとしない。立ち上がって本棚から本を取り出すと、椅子に座って読み始めてしまった。
「………」
薬と睨み合っているうちに、座木の意識は現実から遠退いていった。遠い昔が思い出される。彼の背がまだ秋より低かった頃、やはり今回のように熱を出して寝込んでしまったことがあった。すると、秋は薬――薬とは到底思えないような外見だが――を作って持ってきてくれた。そしてそれを飲むと次の日にはまるで魔法のように回復するのだ。
――そう。自分は昔から秋に世話になり通しだったのだ。なのに、自分は何の役にも立っていないような気がする。いくらか成長して家事一般を受け持つようになってからは、自分にも微力ながら彼の役に立てることがあると喜んだものだった。料理を作るのは好きだし、それで秋にも美味しいものを食べてもらうことができるのなら……と。
しかし、今はそれすらできない状況下にいる。風邪を引いて熱まで出して、秋だけでなくリベザルにまで迷惑を掛けて。彼らの為にできることが、今はできないでいる。それがどれだけもどかしいことか。何もできない自分など、彼らには必要ない。自分の存在意義が失われていく………。
「…秋」
ノックの返事を待たずに部屋に入ると、秋は座木の枕元に座った。持ってきた丸盆には、抹茶のような色をした液体の入ったコップが一つ載せられている。
「リベザルから聞いた。風邪だって?」
「………はい」
「この寒空の下、防寒具も無しに店の前の掃除なんかしてるからだ」
「ですが……雪が溶けて泥まみれだったので、滑るといけないと思いまして……」
「まぁね。店の前で滑って転んで頭打って自分が薬必要になるなんて、薬屋として笑い話にもならない。どこかの赤猿ならやりかねないが」
秋は縁起でもないことを言って肩を竦める。そして座木の額に手を当てた。
「………」
彼の冷たい手は、先程リベザルが持ってきてくれた水枕のように心地良い。睡魔が座木を襲い始める。
「大分熱が上がってるみたいだな。咳は?」
「ありません」
「んじゃこれで用が足りるな」
そう言って盆の上のコップに視線を落とす。座木も秋につられて目をやるが、そのどろどろとした抹茶色の液体に思わず顔を顰めた。
「………これを飲むんですか?」
「Of course.」
当然だとさらりと言ってのけた秋に、座木は困ったように眉を下げる。すると秋はニッと意地悪く笑った。
「僕の腕が信じられないのか?」
「……いえ。信じてます」
「なら問題ないだろ」
………とは言っても、やはりこの薬(?)を飲むのはいくらか躊躇われる。座木は眠いこともあり、秋が部屋を出ていってからゆっくりと飲むことにした。
しかし秋は出ていこうとしない。立ち上がって本棚から本を取り出すと、椅子に座って読み始めてしまった。
「………」
薬と睨み合っているうちに、座木の意識は現実から遠退いていった。遠い昔が思い出される。彼の背がまだ秋より低かった頃、やはり今回のように熱を出して寝込んでしまったことがあった。すると、秋は薬――薬とは到底思えないような外見だが――を作って持ってきてくれた。そしてそれを飲むと次の日にはまるで魔法のように回復するのだ。
――そう。自分は昔から秋に世話になり通しだったのだ。なのに、自分は何の役にも立っていないような気がする。いくらか成長して家事一般を受け持つようになってからは、自分にも微力ながら彼の役に立てることがあると喜んだものだった。料理を作るのは好きだし、それで秋にも美味しいものを食べてもらうことができるのなら……と。
しかし、今はそれすらできない状況下にいる。風邪を引いて熱まで出して、秋だけでなくリベザルにまで迷惑を掛けて。彼らの為にできることが、今はできないでいる。それがどれだけもどかしいことか。何もできない自分など、彼らには必要ない。自分の存在意義が失われていく………。
ビシッ
「…っ!?」
突如額に激痛が走る。いきなり現実に引き戻され、座木は目を丸くした。そして、仏頂面をした秋と目が合う。
「……あ、秋?」
「ザギの分の家事当番は僕とリベザルがやる。つまらないこと考えてる暇があったら、それ飲んで大人しく寝てろ」
「!」
そう言うと、秋は読んでいた本を本棚に戻して部屋を出ていこうとする。
「………秋」
座木が呼び止めると、秋はドアを開けたまま無言で振り返った。長く伸びた前髪の下に隠れる深いダークブラウンの瞳。それがまるで何者の心をも見透かす水晶玉のように感じられた。
――どうして分かってしまうのだろう。彼に比べれば、自分は何て小さいのだろう。………何故こんなにも安心するのだろう。
「よろしく……お願いします」
「ん」
秋は小さく笑って、静かにドアを閉めた。
突如額に激痛が走る。いきなり現実に引き戻され、座木は目を丸くした。そして、仏頂面をした秋と目が合う。
「……あ、秋?」
「ザギの分の家事当番は僕とリベザルがやる。つまらないこと考えてる暇があったら、それ飲んで大人しく寝てろ」
「!」
そう言うと、秋は読んでいた本を本棚に戻して部屋を出ていこうとする。
「………秋」
座木が呼び止めると、秋はドアを開けたまま無言で振り返った。長く伸びた前髪の下に隠れる深いダークブラウンの瞳。それがまるで何者の心をも見透かす水晶玉のように感じられた。
――どうして分かってしまうのだろう。彼に比べれば、自分は何て小さいのだろう。………何故こんなにも安心するのだろう。
「よろしく……お願いします」
「ん」
秋は小さく笑って、静かにドアを閉めた。
*
翌朝。
深山木薬店のダイニングからは、パンの焼ける香ばしい香りが漂っていた。ガス台の鍋から立ち上る白い湯気と、ジュージューと音を立てるフライパン。その中でせっせと料理を作るエプロンをした長身の青年の姿。昨日は見られなかったが、これが普段の朝の風景なのだ。
「おはよ」
「おはようございます」
秋が眠そうな目を擦ってダイニングにやって来た。座木はガス台の前で振り返って挨拶を交わす。
昨日秋が持ってきた薬を飲むと、座木の熱はみるみるうちに下がっていった。今朝の目覚めは最高だったと言えるだろう。一日中寝ていたせいか、体が動かしたくて堪らない。
「どうぞ」
「ん、サンキュ」
ソファに座って大きく欠伸をする秋に、座木はハーブティーの入ったカップを手渡した。秋はそれを受け取ると、一口飲んで喉を潤す。
今朝の彼は目覚めが良いようだ。この時間に自分から起きてくるというのも珍しい。普段ならばリベザルの方が先に起きてくるというのに…――――そう。今朝はまだリベザルが起きてこないのだ。
「まだリベザルが起きてこないのですが……秋、起こしてきて下さいますか?」
「無理に起こす必要はないだろ」
「…?何故です?」
秋が僅かに苦虫を噛み潰したような顔になる。座木から目を逸らして少し間を置いた。
「……看病する側がされる側になってどうするんだか」
「!」
秋の言葉にハッとなる座木。それを見て、秋は耳の裏を掻いた。どうやら先程の間は、寝起きに意識が混濁していたとはいえ、失言をしてしまった自分に対する苛立ちだったようだ。
リベザルは昨日ずっと座木の看病をしていた。水枕をこまめに取り替えたり、以前座木が彼に教えた『風邪の時は水分も必要』という教えを守る為に飲み水をコップに入れて持ってきたりと、彼ができることは何でもやった。その為、座木の風邪が伝染ってしまったのだろう。
「――っ」
胸が締め付けられそうだ。座木は慌ててリベザルの部屋へ向かおうとした。…しかし、間髪入れずに後ろから澄んだ声が掛かる。
「毛布なら2枚多めに掛けてきた。ザギは後でミルク粥でも作って持っていってやればいい」
「………」
座木は答えない。リベザルの風邪は自分の責任だと気に病んでいるのだろう。
秋は小さく溜息を吐いて立ち上がると、持っていた新聞を丸めて座木の頭をポンと叩いた。
「!…秋?」
「馬鹿だって風邪を引く時は引く。誰の責任でもない。そんなことで思い悩むより、今お前がやるべきことは何だ?」
問いかける秋の瞳。逃げることを許さない強い眼差し。
――そう。昨日自分は思ったのだ。責任だとか迷惑だとかを考える前に、“今”自分ができることをやる。それが一番大切なのだということを。昨日は『早く風邪を治すこと』。そして今は―――――
「リベザルにミルク粥を作ってあげることですね」
「Right.」
穏やかに笑って答える座木に、秋も白い歯を見せて笑い返した。
「さてと」
新聞を座木に渡し、秋は仕事用の眼鏡を掛けた。その手にはいつの間にか風邪薬に使う薬草が握られている。
座木の白衣を羽織って実験室に向かう秋。その後ろ姿を見てくすっと笑みを零すと、座木は早速ミルク粥を作るのに取りかかったのだった。
座木は答えない。リベザルの風邪は自分の責任だと気に病んでいるのだろう。
秋は小さく溜息を吐いて立ち上がると、持っていた新聞を丸めて座木の頭をポンと叩いた。
「!…秋?」
「馬鹿だって風邪を引く時は引く。誰の責任でもない。そんなことで思い悩むより、今お前がやるべきことは何だ?」
問いかける秋の瞳。逃げることを許さない強い眼差し。
――そう。昨日自分は思ったのだ。責任だとか迷惑だとかを考える前に、“今”自分ができることをやる。それが一番大切なのだということを。昨日は『早く風邪を治すこと』。そして今は―――――
「リベザルにミルク粥を作ってあげることですね」
「Right.」
穏やかに笑って答える座木に、秋も白い歯を見せて笑い返した。
「さてと」
新聞を座木に渡し、秋は仕事用の眼鏡を掛けた。その手にはいつの間にか風邪薬に使う薬草が握られている。
座木の白衣を羽織って実験室に向かう秋。その後ろ姿を見てくすっと笑みを零すと、座木は早速ミルク粥を作るのに取りかかったのだった。
† END †