泣きじゃくる私に
ダンナさんは
「大丈夫、局部麻酔でちょっと切って取り出すよ」
まじですか?とまじまじ彼の顔を見ました。
獣医をしての体験では
銃で撃たれた動物から銃弾とりだすのって凄く難しいのです。
あの映画などで
ごっつい英雄がウイスキーをがぶ飲みし
ナイフで銃弾を取り出すって嘘です。
筋肉の中に入ったものを取り出すなんて
まず見つからない。
滅多切りにするか。。。
まさか。。。
泣き続く私の顔を見て
医者は
「針ですね」
レントゲンでは針の穴もはっきり映っていました。
「取り出せます。しかし特別な医療機器が必要なので手術は明後日になります。麻
酔は下半身麻酔」
「局部麻酔では駄目ですか?」とダンナさん
「出来ますか?僕は出来ませんね」とちゃめっけたっぷりのお医者さん。
「大丈夫、針が身体を駆け巡るって伝説です。ゆっくり休んで明後日取りましょう。」と。。。
お医者さん、けっこうハンサムと気づかないほど取り乱してはいませんでした(苦笑)。
悶え続けながら家で待つ2日間。
じっとリラックスすると痛みは軽くなるのですが
ちょっとでも動くと激痛。
トイレなんか死にたい感じ。。。
そしてやっと手術。
あのハンサムな先生。
背骨に麻酔を打たれ
「どうですか?」って近づく麻酔医。
マスクで顔を覆っているけど睫毛一杯の緑の目。
「へー。。。美男子ばっかり」なんて感心。。。。
麻酔医さんは
新しいレントゲンを見て
「針、同じ場所ですね。駆け巡らなくて良かったですね。」
「えっ?それは伝説ってお医者さんに言われましたけれど。。。」
チームは
「誰が言った。お前?わはは」なんて笑って。。。
看護婦さんが手を握って慰めてくれました。
現在はどの様なテクノロジーがあるのか知りませんが
あの頃の
「特別な医療機器」は
ビデオモニターで見れるレントゲン。
レントゲンって二次元画像なんですね
三次元的に奥行きが解らない。
モニターに針とピンセットが見える。
少し近づいて
「ハイ、撮りますよー」ってパチン。
それを繰り返しピンセットが凄く接近したら
撮るアングルを変えます。
接近したと見えても違うアングルではとてつもなく遠い。。。
何時間も掛けて
何十回のレントゲンを撮って
やっと接近したら
「これから続けて映写します。」
モニターを見ていると針に少しずつ近づくピンセット
そして掴もうとすると。。。
麻酔でリラックスした筋肉が踊りまくり
針がとんでもない場所へ。。。
それを続けるのを見て
マジで逃げ出したい。。。
逃げ出せないのは下半身麻酔のおかげ。。。
もし逃げ出せたら、絶対夢中で走っていたと思います。
発狂して。。。。
冷汗かいている私に
看護婦さんは
「落ち着いて、私の手を握って」と
モニターを食い入るように見つめる私の顔を
そっと避けました。
「見ないほうがいいです。私の目を見て」
看護婦さんの手が冷たく心地よくって
マスクの上の目が優しくて美しくって、
ほっと救われたのは覚えています。
結局無駄だと解って
「これからX線、出しっ放しにします」
と言われて
「糞ー。なんでもやれー」って感じで
結局、X線続けて20分間照射で取り出されました。
とんでもない放射線量です。
未だにあのことでガンになるんじゃないかもと思うほど。。。
取り出された針、すでに錆びていました。
なんか不思議なのは
このようなケース、非常に少ないそうです。
たぶん、針が落ちて服に刺さっていたのだろうと思います。
しかも先端が入り込みやすいアングルに。。。
それにしてもお腹では無かったのは幸いです。
しかも
私であったことも。。。
もし小さかった長女だったら。。。
考えただけで恐ろしいです。
あれから
家のモットーは
けっして糸なしの針を仕舞わないこと
使い終わった後、糸が無くなったら
あらためて糸を通して結び、仕舞います。
時々、糸を通してない針を見つけ
子供たちにヒステリーを起こす母親です。