風と共に去りぬ 第3話 | 二輪屋イサミ 局長のブログ
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      風と共に去りぬ 第3話
 
   それから、数日が過ぎ、戸惑っていた浜の仕事も、少しづつ
   板に付き始め、浜の元気な、おばちゃん達ともコミニケーションが
   取れ始めていた。
    「真治君!だいぶ慣れてきたね!手際が良くなったよ!
      何処へ行くか知らないけど、急ぐ旅じゃないんだろ?
      もう、ここへ住んじゃいなよ!」
    「え?はぁ~・・・・」
   おばちゃんの唐突な言葉に真治は困惑したが
   今まで、味わった事のない、暖かな安堵感に
    「それも良いかな・・・・」と真治自身も思うのであった。
   
   さっきから漁協の方が騒がしい
   気になって行ってみると、ゲンさんが落胆していて
   漁師仲間が腕組をして話している
    「ゲンちゃん・・・何か良い方法はないのかね・・・?」
    「う~ん・・・・・:」
   ゲンさんの顔が心配になり、真治は聞いてみた
    「何か・・・あったんですか?」
   すると、漁師仲間の一人が
    「実は、さっき、藍さんが・・・・」
    「藍さんが!どうかしたんですか?!」
    「隣町で事故に遭ってな・・・」
    「そ・・それで!!?」
    「何とか一命は、取り留めたものの、搬送先の
      病院が小さな病院で輸血用の血液がないらしいんじゃ・・・・」
    「で?藍さんは、どうなるんですか?!!」
    「まあ!落ち着け!!」
    「お前、以上にゲンちゃんの方が落胆してるのに最良の方法を
      考えているんじゃろうが・・・」
    「す・・すいません・・・それで、何か良い方法は、あるんですか?」
    「1つだけ・・・あるのは、あるんじゃが・・・・」
       「な!何ですか?!」
    「それは・・・・」
   その時、ゲンさんが駆け寄って来て
    「オレが話そう。血液は、都心の病院がもっている、その血液を
      受け取って、隣町の病院まで、持って行くんだ・・・・」
    「だが・・・時間に限りがある、普通の輸送では、到底、間に合わん
      かと言って、ヘリを降ろす場所もない・・・」
    「オレ・・・・バイクで走ります!!」
    「いや!いかん!」
    「どうして?ですか?!!」
    「お前が、いかにレーサーだろうが、ここは一般国道だ、
      サーキットとは違うんだよ!」
   
    「そんな事!やってみないと、分からね~だろ?!!」
    「オレは行く!!」
    「やめろ!やめてくれ!」
    「お前を、こんな事に突き合わす訳にはいかん!・・・そして
      もし、お前に何か、あったら藍に申し訳がたたねぇ・・・」
   すると、漁師仲間の一人が
    「真治、お前の気持ちは、すごく嬉しいんだよ・・・ゲンちゃんは・・・
      だけどな、藍ちゃんの彼氏を事故で亡くしているから
      心配なんじゃよ・・・」
    「分かった!!分かりました!!だけど・・・オレは行く!」
    「誰が何と言おうと藍さんは・・・・藍はオレが救う・・・!」
    「ゲンちゃん、オレも賛成だ、今は真治君に頼るしか他に方法は
  
      ないだろ?」
    「ゲンちゃん!!・・・・・」
    「真治・・・・行ってくれるか・・・?」
    「任せてください、オレは、心も体もボロボロだった・・・・けど
      ・・・ みんなのお陰で、救われた・・・・ここでやらなきゃ
      バチがあたります。」
    「いいか、血液を受け取って、隣町の病院までのタイムリミットは
      朝の6時だ。」
    「でなきゃ、藍の体力もギリギリだ・・・・」
    「はい、分かりました・・・オレのバイク、大丈夫すかね?」
    「実は、もう治っとるんだよ」
    「え?いつの間に・・・?」
    「部品が早めに着いたのでな、治しといた。そして・・・・
      少しばっかりいじくっておいたからよ・・・・
      かなり乗りやすくなっているはずだ。」
    「ありがとうございます!!それじゃ、行ってきます!」
    「ああ・・・頼むぞ・・・!」

   真治は、はやる気持ちを押さえつつ、ヘルメットを被り、
   グローブに指を通し、久しぶりに愛車に火を入れた。
   
   野太い排気音とともに聞き慣れたメカノイズが心地良い、音を
   奏でる。
    「藍・・・待ってろよ・・・!」
   カワサキに跨り、一気に加速する
   それは、ピットロードからコースインするかのようだった。
   真治は愛車に違和感を感じる
   見た限りでは、どこも変わっていないのに、アクセリングの感じ、
   エンジンの吹けそれにハンドリング、どれをとっても、
   ついこの間まで乗っていたレーサーに近かった。
   
   まるで、真治のクセを見ぬかれたようなセッティングであった。
    「なんじゃ!こりゃ~!!」
    オレのバイク、こんなに軽かったかぁ?それにコーナーを
    見ただけで 吸い込まれて行く!」
  
    「ま、まるで、自分の手、足になったみたいだ!」
    「あの・・・オッサンは何もんなんだ・・・・?」
   真治は、走る、陽の沈む、湾岸から、山間を通り、
   コンクリートジャングルの 摩天楼に向って走る。
   耐久レースのように走る。
   しかし、今回は、すべてにおいて温存する事はない、全開である。
    「藍・・・待ってろよ・・・」
   真治は、藍との、楽しい想い出を守ろうと必死で走った。
   摩天楼の光りの中を雑踏をすり抜けるように走る。
   住み慣れた街である、街の中心部に目指す病院はあった。
   玄関前にバイクを止め、建物の中に走って行く、受け付けに行くと
   ゲンさんが連絡をしておいてくれたらしく、輸血用血液は、すぐに
   受け取れた。
   大事な血液を落とさないように、バイクのリヤシートに固定すると
   真治はヘルメットをまた被り、深呼吸をした。
   さあ・・折返しである。
   ここまで、約300km、ここから藍の待つ、病院まで約300km、
   ここからが本当の正念場である。
   真治は藍の笑顔を思い出し、エンジンを掛ける。
   クラッチをつないで、また、コースインするように、国道筋に出る。
   昼間、蒸し返した熱がコンクリートジャングルの隙間風と共に
   真治を取り囲む、それを打ち砕くように、アクセルを空け
   車の光りをすり抜けるように、摩天楼を後にする。
   暗闇の中走る真治の頭にヒロの顔が浮かんだ。
    「あいつ・・・今頃、どうしているんだろう?」
    「オレは、どうして、あいつの時は、全力を尽くして
      やれなかったんだろう?」
   真治の疲れは、少しづつピークへと進んでいた。
   藍の顔、ヒロの顔が交互に浮かんでは消えしていた。
   真治は自分にいい聞かせる。
    「真治!弱きになるな!集中するんだ!何かあったら、藍が
      悲しむだろ!ゲンさんとの約束を忘れたのか?!」

   気を取り直し、また、走る。
   昔、レーサーになる前によくバトルした都市高速、
   今日は、あの時よりもハイスピードで走る。
   後に付いた車がパッシングをする。
   昔のクセで、負けじとアクセルを更に空ける。
   が、人を守ろうとする気持ちが安定した走りを生み出す。
   その走りに、たじろいだのか、車のヘッドランプは後方へ
   消えていった。
   後、150km・・・・空が白み始めた。
    「間に合うのか・・・・?」
    「いや・・・間に合う!間に合わせる!!」
   街のイルミネーションは消え、暗闇の山間に入って行く。
   その時だ・・・・
   無情にも、真治の愛車のエンジンは頼りなく、鼓動を
   止めてしまった・・・・
    「何でだ!!何でだよう!!頼む!息を吹き返してくれ・・・!」
   真治は、とりつかれたようにセルボタンを押すが、とうとう
   セルモーターも 廻らなくなってしまった。
  
    「もう・・・ここまでなのか・・・?」
   白みがかった空の微かに輝く星を仰ぎ、途方にくれた。
    「藍、ゲンさん・・ゴメン・・・あんなに良くしてもらったのに
      手助け、できなかった・・・・」
 
                        つづく