※まだ読んでいない方は必ずパチンコ小説第1話から読み進めて下さい。
「また今日もこれか」
とは言うものの打てる台があることに安堵した。
昨日と釘調整が何一つ変わっていないことを確認してタバコを上皿に投げ入れるといつもの缶コーヒーを買いに行く。
あとはひたすら閉店を待つだけだ。
車で1時間かかる隣街に来ることが多くなった。
この街は自分の住んでいる街よりも人口が少なく、パチプロの数も少ないので穴場的な存在だった。
あまり連日通い詰めるのは好きではないが、最近になって青帽子や見覚えのあるパチプロの姿をこの隣街でも何度でか目にするようになり、彼らに打ち込まれて釘がシマってしまうぐらいならと良い台は連日打ち込むこともあった。
*
まだ朝7時、隣街の大学近くにあるパチンコ店の前でひとり並んでいた。
ちょっと早く着き過ぎたかと思ったが、7時半になって大学生たちがゾロゾロと集団でやってきた。
ここ何日かはこの隣街に来ているのだが、この店の銭形5台はいつも彼らが朝から占拠していたのだ。
若さのせいか打ち方は粗いのだが、打てる調整であることは間違いない。
この隣街にもだんだんパチプロが増えてきたのだが、この店にだけは大学生軍団のせいでライバルとも言える青帽子やパチプロの姿はない。
そんな大学生軍団に対抗するには彼らよりも早く並んで台に座るしかないのだ。
もうすぐパチンコ生活も9ヵ月が経つ。
収入は400万円近くにもなっていたが、ここ最近の釘状況の悪さを考えると全然安心などできない。
今後も同じ額を稼げる保障などないどころか、下がる可能性しか考えられなかったからだ。
最近は打てる台が見つからず店をいくつも廻る日が多くなってきた。
随分と遠方まで足を運ぶ事もめずらしくない。
それでも何とか最低限の収入はキープし、妻には毎月20万を渡し、自分の食費や交通費などを差し引いた分は今後のためにと全くの手つかずだ。
買い物もしていなければ、飲みにも行っていない。
そもそも誰と飲みに行くというのだ。
パチンコ情報を交換し合っている西村さんには以前に私がパチンコ生活をしている事を話した事がある。
パチンコ生活の事を知っているのは彼ぐらいだが、離れて暮らしているし最近は連絡も取っていない。
それどころか今日はまだ一言も発していないではないか。
妻や息子がまだ寝ているうちに家を出て、大学生に囲まれながらパチンコを打っているだけで誰とも話をしていない。
メールすらもだ。
4人で並んでガヤガヤと打っている大学生に嫌気がさして、気分転換にとトイレに行った。
用を済ませて手を洗いながらふと目の前の鏡に立つ自分の姿を目にする。
自分はこんなにも色が白かっただろうか。
高校時代はサッカーに明け暮れ、色黒のスポーツマンでそこそこもてていた覚えがある。
が、今はどうだろう。
所々に剃り残したひげを生やし、色白でほおが少しこけてきたせいで顔には全く覇気がない。
肩こりもずいぶんとひどくなった。
整体をやっていたので背中がやや丸くなったことがわかる。
今更整体に4,000円払うのもバカバカしいが、丸くなった背中は何とかしたいものだ。
それにしても、
これが今の自分の姿なのか。
*
ピリリッ。
「分かりました。はい、空いています。では当日よろしくお願いします。」
いつぶりか忘れたが久々に携帯が鳴ったかと思えば、弁護士からの電話だった。
債権者集会の日時が決まったので、その日は必ず裁判所に来てほしいという内容だった。
債務者である経営者の私の参加は絶対らしく、その他に裁判官、管財人、弁護士が出席し、債権を有する各債権者にも全て日時を伝えてあるという事のようだ。
債権者はフランチャイズ本部をはじめ、銀行や公庫、各リース会社などだ。
それらの各債権者たちが一同に集まる会。
そしてやや緊張しながら当日を迎えた。
※次回最終話