有限性
合わせ鏡の像は「無限に続いている」と評されることがある。しかし実際には、有限個の像しか見ることはできない。その理由は、効果が大きい順に、以下のようなものがある。
1枚目の像が、2枚目以降の像を隠してしまう。これを避けるために鏡や像の位置関係をずらすと、有限回の反射で像は鏡からはみ出てしまう。
反射率100%の鏡は存在しない。通常の鍍金鏡の反射率は、アルミ蒸着鏡で約80%、銀引き鏡で約90%で、高反射率を謳った鏡で最高99%程度、レーザー発振など光工学で使う特殊な鏡で最高99.99%程度である。
像は光の行程の逆二乗に反比例して小さくなるため、有限回の反射で見える限界より小さくなる。
真空中以外では、光は吸収・散乱される。たとえば、澄んだ空気の消散係数はおおよそ 10-5 m-1 で、10 km 進むごとに63%が吸収・散乱される。
光速度は有限なので、無限の像を生むには無限の時間が必要である。
無限の像を生むには無限の光が必要だが、鏡の間の有限の空間に存在しうるエネルギーには上限がある。


追記

ゲシュタルト崩壊

ゲシュタルト崩壊(独: Gestaltzerfall)とは心理学における概念のひとつで、全体性を持ったまとまりのある構造(Gestalt: ドイツ語で形態)から全体性が失われ、個々の構成部分にバラバラに切り離して認識し直されてしまう現象をいう。
例えば生まれてから疑う事なく受け入れてきた周囲の環境や知識があり、ある時それらと全く違う世界を体験した場合、それまで持っていた自我、アイデンティティーの存在意義について自らが立っていた土台そのものが崩される思いをする現象である。
認知心理学にも「文字のゲシュタルト崩壊」という現象として見られる。これは同じ漢字を長時間注視しているとその漢字がバラバラに見えたり、連続で羅列された文字列を読み続けると途中からなんとも形容しがたい、いわゆる「こんがらがった」状態になる現象である。例えば平仮名の「あ」を連続で書き続けた場合、「あ」という文字はこんな字だったか?と思ってしまう現象がこれにあたる。ただしこの際、静止網膜像のように消失は起きないとされる。また個人差はあるものの、「仏」や「公」、また「化」などの字、文字列を凝視した時にこのような現象が起きやすいと言われている。近年では、二瀬・行場(1996他)によって研究されており意味飽和との関連も指摘されている。しかしゲシュタルト崩壊の発生要因については未解明な部分が多く、「比較的高次な認知情報処理過程によって発生する」(二瀬・行場 1996)ことがわかっている程度である。