にほんブログ村第一回【統一、中台統一】(注意していただきたい台湾関連の用語)
台湾の政治状況を分析する上でよく行われる意識調査と言われるものがあります。それはいろいろな部門が行って入るのですが選択肢として大まかに存在するものとして「統一」か「独立」か「現状維持」かという3つの選択肢に使われる単語であります。
ニュース記事においても「統一」「中台統一」という言葉がよく使われて その頻度は高く 馴染みの高い言葉でありますので 今回は「統一」「中台統一」というものを考察してみることにします。
大辞林
(名) スル
[1] 多くのものを一定の組織あるものにまとめあげること。また、そのまとまり。
・ 全体の意見を―する
・ 色調の―をはかる
・ ―を欠く
[2] 分立していたものを一つにまとめ支配すること。
・ 天下を―する
用例としては[2]の応用として使われるわけですが 国家の歴史用語ならば「国内統一」としてあり それぞれ分裂していた国を統一するという意味合いを持ちます。従って中国関連用語としての「統一」という言葉はそもそも 中国的視点において存在する言葉ということになるのです。
それでは台湾で使われる「統一」とは一体なんでしょう?
「台湾」と「中国」が分裂した事実があるのかといえば 中国の建国は100年であり 中国からの分裂の事実はないということになります。従ってここで言う統一とは
【◎戦後の台湾の帰属問題で 中華民国の領土に台湾がなった。清国の領土であった台湾の帰属は戦後処理において清国の後継国家である中華民国の帰属となった。】という前提
そのような前提において「統一」「中台統一」という言葉が存在しているのです。
台湾の世論の中には「戦後の台湾の帰属問題で 中華民国の領土に台湾がなった。清国の領土であった台湾の帰属は戦後処理において清国の後継国家である中華民国の帰属となった。」という前提を認めない人たちがかなりの割合で増えてきているという現状の中 そのような人たちには 「台湾の世論調査の選択肢」が用意されていないといえるでしょう。
この帰属問題を含めて認識の違う大きく分かれた政治信条の二つの集団が台湾に存在するのは紛れもない事実で 世論調査の選択肢を作るにしても非常に苦労がにじみ出ているようです。ちょうど良いものがあったので紹介すると「大陸委員会:2008年両岸関係世論調査の分析」というもので
大陸委員会:2008年両岸関係世論調査の分析
ぜひ見て欲しいのですが
① 統一か独立かに対する見方
選択肢を6分類したアンケートにおいて、国民は「現状維持の後、状況を見ながら独立か統一かを決める」が多数(34.4%~44.8%)を占めている。「永遠に現状維持」は11.1%~25.5%であり、「現状維持の後に独立へ向かう」または「現状維持の後に統一へ向かう」はいずれも2割を超えなかった(4.3%~17.5%)。全体から見て、広義の現状維持(現状維持の後、独立へ向かう。現状維持の後、統一へ向かう。現状維持の後、状況を見て独立か統一かを決める。永遠に現状維持)を主張する割合が圧倒的多数(64.9%~91.8%)を占めており、これまでの調査結果の分布とも類似するものである。「速やかに独立」(6%~16.3%)あるいは「速やかに統一」(1.5%~4.1%)はいずれも少数である。
選択肢を3分類とした場合は、圧倒的多数(58%~71%)の国民が「現状維持」を主張し、「台湾独立」(17.5%~24%)を主張する国民の割合は、「両岸統一」(4.7%~8%)より高かった。
「現状維持」の選択肢を提示せず、「独立」か「統一」かの二者択一とした場合、「台湾独立」に賛成が6割を超え(65%~68%)、「両岸統一」に賛成は1割強(14%~19%)に過ぎなかった。
② 国家の位置づけに対する見方
75.4%~81.6%の国民が、馬総統の「統一しない、独立しない、武力を用いない」の理念で、中華民国の枠組みの下で台湾海峡の現状を守ることを支持している。
見えにくいので整理すると
選択肢を6分類したアンケート
「現状維持の後、状況を見ながら独立か統一かを決める」
34.4%~44.8%
「永遠に現状維持」
11.1%~25.5%
「現状維持の後に独立へ向かう」または「現状維持の後に統一へ向かう」
4.3%~17.5%
「広義の現状維持(現状維持の後、独立へ向かう。現状維持の後、統一へ向かう。現状維持の後、状況を見て独立か統一かを決める。永遠に現状維持)」
64.9%~91.8%
「速やかに独立」
6%~16.3%
「速やかに統一」
1.5%~4.1%
選択肢を3分類とした場合
「現状維持」
58%~71%
「台湾独立」
17.5%~24%
「両岸統一」
4.7%~8%
「現状維持」の選択肢を提示せず、「独立」か「統一」かの二者択一とした場合
「台湾独立」
65%~68%、
「両岸統一」
14%~19%
なんとも「現状維持」という奇怪な国家形態を選択肢に入れたら 随分同じ人間にアンケートをとっても 変わってくるものです。次回以降「独立」「両岸」といった用語も取り上げるつもりですが今回はこれらについては触れませんが この「統一」という言葉を『戦後の台湾の帰属問題で 中華民国の領土に台湾がなった。清国の領土であった台湾の帰属は戦後処理において清国の後継国家である中華民国の帰属となった。』という概念を否定することを前提とすれば随分アンケート調査の結果も変わってくるでしょう。
ではこの前提を否定するならばどのような言葉になるかといえば
「併合」「統合」の 二つの言葉が出てくるわけです。
実際考えられる「統一」の形態は「中華民国」ではありえないので 中国の提示する「一国二制度」の限定期間付きということになるでしょう。そしてその実態は国家としての主な主権的機能は中国側に移動すると考えるのが妥当ですので「併合」ということになります。
そして最も緩やかな統一の形態を想定するなら 地域連合的経済的統合というものを主眼とした国家統合ということも考えられます。
統一という言葉を使うにせよ 統一後の国家形態がいかなるものになるのか「併合」か「統合」かを問わないアンケートでは 実際の民意は図れていないということになるでしょう。
本ブログとしては台湾の帰属問題は 中国は台湾の地位になんら歴史的にも国際法上無関係であり 台湾住民の民意にて決定するものとしておりますので「統一」「独立」という単語は 中華人民共和国及び「中華民国史観」のものとして基本的に使用しない方針です。
統一という言葉が存在するのならば「中華人民共和国」と「中華民国」の統一であって「中華人民共和国」と「台湾」の統一問題はこの世に存在しないのです。
しかし「中国の統一」ということであればその「統一」は存在し 中華民国が実効支配している「福建省 金門島・馬祖島」との統一問題ということになります。私としては基本的にこの「中国統一」に関しては住民の意思もほぼ固まっているので 賛成の立場となっておりますが、台湾の安全保障上 中国の軍事的恫喝が排除されない以上返還は保留して当然と思っております。
また亡命政権であった中国国民党が 台湾を離れ中国国内に残る国民党と統一することに関しても賛成の立場です。
正しく台湾とは無縁な「中国統一」に関しては速やかに解決し中華人民共和国の念願がかなうことを心から願う立場であると表明しておきます。
以上
2009/6/14(日) 投稿
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