勤務する病院は自然豊かな環境に囲まれ、マムシ咬傷の受診患者が比較的多く、近年経験した30例をまとめてみました。
マムシは一般的に夜行性であり、更に視界不良などの状況も重なり、患者さんは夜間や早朝に受傷し、初期対応の60%の患者さんが救急科を受診されていました(後に皮膚科対応)。
時に患者さんが「成敗」した犯人を持参されることがあります。
治療は原則入院で輸液・抗生剤投与の上、経過観察を行っており、
Grade Ⅲ以上や腫脹の進行が速い場合には、速やかにマムシ抗毒素の点滴静注を施行しています。
転院となった1例を除く29例は軽快、退院し、退院後の経過観察も
経過良好でした。(入院日数の中央値:5日間(IQR:2日間~15日間))
マムシ抗毒素の副作用について、血清病が11.7%、アナフィラキシーショックが3.2%とする報告があります。抗毒素の投与について否定的な意見もみられます。しかし、マムシ抗毒素は、マムシ咬傷に対する唯一の根本的治療薬であり、私どもの病院ではGradeⅢ以上や腫脹の進行が速い患者さんに対して、積極的に投与する方針としています。
マムシ咬傷は致死的な経過をたどることがあり、救急医療に携わる全科的な病態・治療の共有が大切です。また、市民への啓発を含めた取り組みにより、正しい予防法や対応の周知、そして咬傷時の早期受診、早期治療開始へ繋げる必要があります。
この内容の詳細は、第124回日本皮膚科学会総会で発表いたします。