編集後記 第16巻第2号(2) 日本美容皮膚科学会雑誌
美容皮膚科が肌の醜形に対する予防や療法である限り、美容皮膚科学は、我々の心の中に無意識に生じる「美形」「醜形」をめぐる区別や差別意識に無頓着であってはならない。その意味でハンセン病の過去・現在に学ぶべきことは多い。外観・醜形、特に顔面・手足が崩れることがあるため、時間的にも地理的にもそして精神的にも共生を許されなかった歴史は、まさに医学の光と影である。医学のみならず、旧くは、宗教(キリスト教、仏教等)で宿命の罪の因縁、前世の罪業のため病気になったとされていた。(小野友道、尾崎元昭、石井則久(責任編集)ハンセン病アトラス、金原出版、2006、宮坂道夫:ハンセン病重監房の記録集、英社2006など最近優れた書物が出版されている)
美容皮膚科に関わる全ての人々は、責任、自覚、独善に陥ることのない、倫理観を持つとともに歴史から多くのことを学ぶべきである。このような人間性の醸成には時間が必要であり、それを補うためにevidence based medicineが求められている。本学会や学会誌の果たす役割は大きい。
2006年6月 古川福実