彼と彼の梅雨明け・4 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

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会社全体で進めていたプロジェクトの締めが迫っていた

 

5月までは末端の俺が、6月に入ってからはリーダーの大野さんが忙しくなり、7月に入ってもそれは継続されていた

 

そんな中、ぽつんと取り残されたようにスケジュールが空いた七夕の夜

 

偶然イベントっぽい日だったけど、久し振りに二人でゆっくり過ごせて楽しかった

 

この日までの大野さんは、珍しく…というか、一般的には当たり前のことだけど、プロジェクトリーダーとしての責務が急激に増大して少しばかり余裕を無くしていたらしい

 

周りからは普段と変わらない様子に見えたけど、本当にうっかり、しかし完全に、6月17日を見落としてしまったらしい

 

この心理、すごくよく分かる

 

許容量を越えるか越えないかの忙しさになると、スケジュール上の日付はもはや記号となる

 

尋常ではない量の確認事項と採決、各所の締め切りを常に意識しながらそれら全ての責任を負い、さらには自分の仕事も捌いていく

 

俺レベルでは、そんな日々を想像しただけで倒れそうになる

 

抱えている仕事が多い人は無駄を省くことが上手いから、毎日変わる数字、つまり日付に対して、いちいち感情を乗せたりしない

 

 

「俺…おめでとうって…言ってない…」

 

「あれー、そうだったかな?」

 

「ごめん…」

 

「いえいえ、俺もすっかり忘れてましたから」

 

「ほんとにごめん」

 

「そんなに気にしなくて大丈夫です」

 

「大切な日なのに…」

 

「この歳になるとそれほど大切ってこともないですし」

 

「俺、帰ってきた?仕事…してた?」

 

「んんー、どうだったかなー?」

 

「どっちにしても最低だ…」

 

「いやいや、そんな、大野さんが最低なわけないです」

 

「最低過ぎる…」

 

 

俺が責めるとでも思ったのかな

 

今年は年末年始もゆっくり過ごせなかったし、各種イベントもオールスルーせざるを得なかった

 

だからこその何気なく一緒に季節を感じよう作戦だったわけで、お互いを責める要素なんて一つも無いのに

 

 

本人は全く気にしていないことを伝えながら

 

 

「大丈夫です」

 

「最低じゃないですよ」

 

 

声をかけ続けた

 

だけど、時間が経つにつれて、落ち込みは深くなっていったらしい

 

気の早い朝日がカーテンの隙間から射し込んでも顔色は悪いままだった

 

 

 

「眠れませんでしたね」

 

「…ごめん」

 

「ご飯は食べましょう、少しでも」

 

「……ごめん」

 

 

何度目の謝罪だろう

 

昨夜からうわ言のように謝り続けている

 

見るからに気力が削がれている時に体力まで失わせるわけにはいかない

 

 

「一口、どうですか?」

 

 

小さなおにぎりを二つ、ベッド横まで運ぶ

 

 

「大野さん、食べれますか?」

 

 

しかし、それを手に取る気力も湧かないらしい

 

少しでも食べて欲しいけど、無理に押し付けると余計なストレスが増えてしまう

 

仕方ない、今日の朝ごはんは諦めよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく